パク・ヘジンの物憂げな瞳に引き寄せられる...1人4役で挑んだ異色作「ジェネシス - クローン人間」

2006年のデビュー以来、美しい顔に抜群のスタイルで多彩な魅力を発揮してきたパク・ヘジン。「星から来たあなた」(2013年)で韓流トップスターの仲間入りを果たし、「恋はチーズ・イン・ザ・トラップ」(2016年)では、優しい笑顔の裏に謎めいた素顔を隠す大学生 ユ・ジョンを好演。その人気は"ユ・ジョン先輩シンドローム"を巻き起こすほどで、日本でもそうした彼のミステリアスな魅力にどハマりする視聴者が続出した。

近年では、「2020 MBC演技大賞」で大賞を受賞したオフィスドラマ「インターンは元上司！？」(2020年)や、幽霊使いのマジシャン役を演じた「今からショータイム」(2022年)などでコミカルな魅力を放ち、多彩な役どころに挑んでいる印象だ。

そんな彼が1人4役を演じ大いに話題を呼んだドラマが、AFTERSCHOOLのナナと共にW主演した「ジェネシス - クローン人間」だ。

11月17日(木)よりKNTVにて日本初放送される本作は、"クローン人間"という生命倫理のタブーに斬り込んだ異色のミステリードラマ。母親の事故死の真相を探る男・イルフン(パク・ヘジン)が、次々と自分と同じ顔をした人間と出会い、大きな陰謀に巻き込まれていく...という壮大なストーリーが展開する。

運命の歯車が大きく動き出すのは、3年前に母親をひき逃げ事故で失ったイルフンの前に、韓国トップの製薬会社のカン会長が父親だと名乗り出たことから。イルフンはカン家に迎え入れられるが、その裏には会長の独善的な思惑が隠されていた。

一方、捜査中に怪しい男を発見した刑事のヨリン(ナナ/AFTERSCHOOL)は、偶然遭遇したイルフンの車を乗っ取り、追跡する。追い詰めた男は、チェンと呼ばれる殺し屋だったが、その様子を車から見ていたイルフンは、自分と瓜二つのチェンの顔を見て驚愕する。

またある日、ドンジンと名乗る謎めいた研究者がイルフンのもとを訪ねてくる。ドンジンは、長年ある研究を続けている天才で、その男もまたイルフンと全く同じ顔をしていた...。そして、彼の口から"ジェネシス プロジェクト"という言葉を聞き、自分と同じ顔の人間が存在することが母親の事故と繋がっている...と直感したイルフンは、密かに事件を調べ始める。

ヘジンは主人公のイルフンをはじめ、無表情な殺し屋・チェン、天才研究者・ドンジン、繊細で寡黙な修道士・ミカエルと、異なる4人の人物を巧みに演じ分けている。それぞれキャラクターの違う4者は同じ顔といえども全くの別人のようで、見ているうちに不思議な感覚に陥る。まるで憑依したかのような彼の高い演技力が成せる技だ。

今年4月に韓国で放送されたバラエティ「助けて！ホームズ」(KNTVにて11月7日(月)深夜に放送)に出演した際には、照明やインテリアへのこだわりを熱く語るなど、気さくな素顔を覗かせていたヘジン。ビジュアル同様、そのスマートな物腰に目を惹きつけられるが、本作では一転、これが同一人物かと思うほど、心を閉ざした冷たい眼差しを見せる。

複雑な心の機微も繊細に演じ、自分の存在意義に思い悩むイルフンの物憂げな瞳からは大人の色気を漂わせる。一方で、ヒロインである熱血刑事・ヨリンを熱演したナナ(AFTERSCHOOL)とは、息の合った掛け合いも披露。また、2人が繰り広げる華麗かつスリリングなアクションシーンも見どころの1つだ。

演出を務めるのは、アン・ヒョソプ＆キム・ユジョンのロマンスが注目を集めた時代劇「ホン・チョンギ」(2021年)を手がけたチャン・テユ。

ヘジンとは、「星から来たあなた」でもタッグを組んでおり、クローン人間という異色のテーマに踏み込んだ本作では、今までに見たことのないヘジンの表情がクローズアップされている。多彩なヘジンの魅力はもちろん、スリリングな物語からは目が離せないだろう。

文＝中川菜都美