ナム・ジュヒョクが見せる葛藤...等身大の姿で高い評価を受けた歴史大作

モデル出身で抜群のスタイルと端整なルックスを持つナム・ジュヒョク。主演を務めた「ハベクの新婦」(2017年)をはじめ、ロマンスドラマを中心にキャリアを重ねており、"次世代スター"の呼び声も高い。

韓国で10月から公開されたばかりの最新映画「リメンバー」では、家族を皆殺しにされ、復讐の炎を燃やしつづけてきた主人公に巻き込まれる年の離れた親友役で出演。主演のイ・ソンミンとの世代を超えたケミストリーに注目が集まっている。そんな映画にも着実に活躍の場を広げているジュヒョクにとってスクリーンデビューとなった1作が、2018年の「安市城 グレート・バトル」だ。

この歴史大作は、西暦645年に唐の大軍を相手に孤軍奮闘した高句麗の城主の死闘を描く。「新感染 ファイナル・エクスプレス」の製作陣が手掛けており、荒野での20万人vs15万人のバトルなど、迫力満点のハイクオリティな仕上がりで、韓国で観客動員500万人を超える大ヒットを記録した。

ジュヒョクが演じたのは若き兵士のサムル。20万人もの大軍を率いて高句麗に進軍してくる唐に対し、15万人の兵力で迎え撃つも惨敗を喫した戦で、サムルは命からがら生き延びた。この戦に参加しなかった安市城のヤン・マンチュンを裏切り者として始末しようとする高句麗の宰相ヨン・ゲソムンから暗殺の命を受け、マンチュンに近づいていくスパイという役どころだ。

マンチュンに近づくことに成功するが、何よりも民を守ることを優先し、民や側近たちから絶大な信頼を置かれるマンチュンの人柄を知るサムル。マンチュンが戦に参加しなかった理由を知り、暗殺命令が正しくないと気づいたサムルは、苦悩しながら成長していく。激動の時代を描いた本作において、現代にもいるような等身大な若者で、観る者の気持ちを代弁する重要なキャラクターといえる。

そんな若者の戸惑いや苦悩、そして自分の心に従う覚悟といった心の揺れ動きをジュヒョクは巧みに表現。スパイゆえの死んだような目の奥に徐々に光が宿っていく変化など、微細だが丁寧な演技で、悲劇の戦場で一度失った感情が蘇る様子を浮かび上がらせている。

さらに、戦場を生き延びとようとする本能が溢れ出た必死の表情や、友人の死に流す涙、「安市城は負けない」と腹を括った顔つきなど、映画を通して様々な表情をのぞかせ、サムルを感情移入しやすいキャラクターとして描き出している。

この作品を通してマンチュン役のチョ・インソンと交流を深めると、のちにインソンが出演したバラエティにゲストとして駆けつけるなど、彼のことを慕っているようだ。そんな本物のエモーションが劇中の彼の姿からも感じ取れる。

12月から兵役を務めることが決まっており、しばらく姿を見る機会が少なくなってしまいそうだが、その実力を知らしめた本作で、彼の演技を堪能したいところだ。

文＝HOMINIS編集部