オク・ジヌク＆カン・ヒが演じる幼なじみの絶妙な距離感！爽やかで幸福感に溢れた青春BL「冬すぎて桜」の世界観

ひとつ屋根の下に暮らす高校生2人が"本当の愛"を見つける過程を描いた韓国BLドラマ「冬すぎて桜」。今年5月に衛星劇場で日本初放送されるや主人公カップルのロマンスが評判を呼び、7月には主演のオク・ジヌクとカン・ヒが来日してのOSTイベントも開催されるほどの人気を獲得。「SOTUS」や「2gether」をきっかけに爆発的なムーブメントを生み出したタイドラマ同様、韓国でも爽やかな青春BLに人気が集まっている。

もともとタイでは、日本の"やおい"文化から頭文字をとった"Y"シリーズと呼ばれるBLジャンルが人気を確立しており、「SOTUS／ソータス」(2016年)の爆発的なヒットが追い風となって現在のムーブメントに繋がったとされている。

一方、韓国ドラマ初のBL作品と言われているのが、オーディション番組「PRODUCE X 101」で注目を集めたハン・ギチャンの俳優デビュー作「君の視線が止まる先に」(2000年)だ。世界200ヶ国で同時公開されたほか、その人気ぶりから映画版が制作、日本でも劇場公開されるなど大きな反響を巻き起こした。

今回、衛星劇場にて11月13日(日)深夜に一挙放送される「冬すぎて春」は、「君の視線が止まる先に」を皮切りに、「Mr.ハート」「You make me Dance～紅縁＜ホンヨン＞」といった話題の韓国BLドラマを手掛けてきたW-STORYが制作。そして、作家・Bamwooによって2017年から2021年にかけて連載され、日本語や英語、中国語、タイ語などにも翻訳された人気WEB漫画が原作となっている。

幼い頃に両親を事故で亡くし、幼なじみのテソン(カン・ヒ)の家に引き取られたへボム(オク・ジヌク)が主人公となる「冬すぎて桜」。同じ年ながら家でもほとんど会話を交わすことがなかった2人が、高校3年生で初めて同じクラスになったことをきっかけに本当の気持ちを解放し、友情を越えた関係で結ばれていく様子が丁寧に綴られていく。

へボムは心優しく笑顔を絶やさない一方で、居候の身という状況に引け目を感じ、常に周囲に負担をかけまいと遠慮がちな日々を送ってきた。学校でも友達はなく、同級生のパシリにされる有り様だった。それでも「卒業するまでの我慢だ」と笑顔で耐えるへボムがいじらしい。

もう1人の主人公・テソンは、成績優秀でスポーツ万能、高身長でルックスも最強...という、学校でも女子たちの熱い視線を一身に集める存在だが、本人はクールで無口。そんなテソンに嫌われていると思い込んでいるへボムは、家でも彼を避けながら過ごしてきた。

だが、同じクラスになってへボムが同級生にいじめられていることを知ったテソンは、激昂。それまで抑えてきたへボムへの特別な感情を抑えきれなくなる。

"ゲイカップル誕生"と周囲にからかわれるのも構わず、独りぼっちのへボムの隣に座ってご飯を食べたり、彼をいじめる同級生を怒りにまかせて殴り倒したり...と徐々に感情を露わにしていくテソン。そうかと思えば、へボムにはぶっきらぼうにクリームパンを渡すことしかできなかったり...。

そうした不器用な愛情表現を経て、やがてへボムの前だけではクールな優等生の仮面を取って笑顔を見せるようになり、髪をなで、「友達よりお前といるほうがいい」と素直な思いを語り出す。テソンがへボムを月がきれいに見える場所まで連れ出して「一緒に見たかったんだ」と囁くシーンは、もはや愛の告白だ。

テソンを演じるカン・ヒのマンチッナム(漫画から飛び出してきたイケメン)ぶりと、秘めた思いに目覚めていく過程。そして、笑顔が可愛いオク・ジヌクの愛嬌たっぷりのチャーミングなキャラクターが、ストーリー展開に説得力を持たせている。

長身のカン・ヒと小柄なジヌクが並んで歩くだけでも、2人の身長差にロマンスの雰囲気が漂い、パンの両端からかぶりつく"クリームパンキス"をはじめ、2人の距離がふいに近づく瞬間もキラキラと散りばめられている。ピュアな2人が恥じらいながら距離を近づけていくBL作品ならではの甘さこそ、「冬すぎて春」ならではの魅力だ。

控えめに、でも内心には情熱を秘めて愛を育んでいくへボムとテソンの関係が心地よく、癒やしに満ちた同作。爽やかで幸福感溢れる2人の世界にどっぷり浸れる、青春BL作品の良作だ。

文＝酒寄美智子