大泉洋＆柴咲コウが演じる「夫婦」と、有村架純＆目黒蓮が演じる「恋人」の物語...「月の満ち欠け」で紡がれる2組の愛のカタチ

2017年に第157回直木賞を受賞し、累計発行部数56万部を超えるベストセラーとなった純愛小説「月の満ち欠け」。作家・佐藤正午の最高傑作と名高い本作が実写映画化され、12月2日(金)より劇場公開される。

主演を務める大泉洋をはじめ、有村架純、目黒蓮(Snow Man)、柴咲コウ、田中圭、伊藤沙莉...といった人気キャストが集結し、美しい映像と共に紡ぎ出すリアルな人間描写に定評のある廣木隆一監督のもと、奇跡に満ちた壮大な愛の物語が描かれる。公開に先立ちオンエアされる「映画『月の満ち欠け』公開記念特番」では、撮影裏のメイキング映像や主要キャストのインタビューを交えて、本作の魅力に迫っていく。

物語の主人公となるのは、順風満帆な人生を送りながらも、不慮の事故で愛する妻子を失ってしまう小山内堅。深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男が訪ねてくる。

事故に遭った日、小山内の娘・瑠璃は「面識のないはずの自分に会いに来ようとしていた」と切り出し、「かつて自分が愛した"瑠璃"という女性の生まれ変わりだったのではないか」と告げる三角の言葉に動揺し、拒絶する小山内。だが、このことをきっかけに彼は数奇な運命に巻き込まれていく。

愛し合っていた1組の夫婦と、許されざる恋に落ちた恋人たち――全く関係がないように思われた2組の物語が、数十年の時を経て繋がっていく。それは「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い願いが起こした、あまりにも切なすぎる愛の奇跡だった...。

主人公・小山内堅は、国民的俳優・大泉洋が演じた。今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で源頼朝に扮し、心の底に孤独を抱き続けた将軍を好演したことも記憶に新しい。

本作では、数奇な運命に翻弄される中年男の悲哀を巧みに表現。美しい妻と可愛い娘を愛おしげに見つめる"幸せな家族"だった時代から一転、やつれ果てた風貌からは絶望感が伝わってくる。やりどころのない怒りと悲しみを湛えた"家族を失った男"を全身で表現している。普段の気さくでコミカルな姿やぼやきは封印し、実力派俳優としての本領を発揮した。

小山内の最愛の妻・梢を演じるのは柴咲コウ。2014年の映画「青天の霹靂」でも共演した大泉と、"愛し合っている夫婦"として息の合った演技を見せた。長年寄り添って生きてきたことを感じさせる、2人の自然な空気感が温かい。妻として母として真っ直ぐに大きな愛で家族を包み込む...。そんな梢というキャラクターが自然と醸し出す、内面から滲み出るような強さや愛情の深さを柴咲は繊細に表現した。

小山内の娘と同じ名を持ち、物語の鍵を握る謎めいた女性・正木瑠璃は有村架純が演じる。昨年は「花束みたいな恋をした」(2021年)で第45回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞ほか多数の映画賞を受賞した有村。一目で恋に落ちてしまいそうな愛らしい笑顔と、どこか儚げな雰囲気。着実にキャリアを積んできた彼女が、本作でもその魅力を存分に見せてくれる。

正木瑠璃と許されざる恋に落ちた大学生・三角には、単独ではこれが映画初出演となる目黒蓮。現在放送中のドラマ「silent」では、音のない世界で生きることになった佐倉想役を熱演し、その自然体な演技力が大反響を呼んでいる。本作でも"かつて恋人を失った男"である三角の、過去から現在を巧みに演じ分ける。2人による"許されざる恋に落ちた恋人たち"が、切なく美しい。

そして、愛ゆえに時に暴走する正木瑠璃の夫を演じる田中圭や、小山内の娘の親友を演じる伊藤沙莉も作品を彩る。有村と目黒による恋人たちの物語と、大泉と柴咲による夫婦の物語が時を超えて交差し、「もう一度逢いたい」という強い想いが巻き起こす数奇で壮大なラブストーリー。実力派キャストたちの情感たっぷりな力演の末に辿り着く"愛の結末"に注目したい。

文＝中川菜都美