向井理の主演ドラマ「婚活探偵」に詰め込まれた、役者としての引き出しの多さ

端正なルックスでありながら、二枚目から三枚目、普通の役からアクの強い役、シリアスからコメディまでどんな役でもこなし、ドラマ、映画、舞台と活躍の場を選ばない俳優・向井理。そんな彼の役者としての魅力が全て堪能できる作品がドラマ「婚活探偵」だ。
同ドラマは、強面の探偵が婚活をしながら事件を追うラブコメミステリーで、向井は強面で愛煙家、ハードボイルドな探偵・黒崎竜司を演じる。類まれなる推理力でさまざまな事件を解決してきた黒崎は、41年間ほぼ女性と縁がないという悩みを抱えていた。ある日、黒崎は一念発起し、周囲には一切秘密にしたまま、生涯の伴侶を求めて結婚相談所に登録する。親身なアドバイザー・城戸まどか(成海璃子)のサポートの下、黒崎は婚活に奮闘する、というストーリー。

(C)「婚活探偵」製作委員会2022
向井といえば端正な顔立ちで、「強面」というキャラクターに違和感を覚えるかもしれないが、ティアドロップのサングラス、オールバックの髪型、ひげ、黒の革ジャケットといった外見に加え、所作や低い声、落ち着いた口調などで、見事にハードボイルドな探偵に「成り切って」いる。「成り切って」と表現したのは、「41年間女性とは距離をとって生きてきました。それがカッコいいと信じていたからです」と独白する場面もあるなど、黒崎自身がどこかハードボイルドな探偵に自分を寄せている節があり、ちょっとだけトゥーマッチさが漂っているからだ。向井は100%ではなくあえて110%のハードボイルドな探偵を演じることで、ハードボイルドの滑稽さや現実離れした部分にフォーカスを当てて、コミカルさを引き出している。

(C)「婚活探偵」製作委員会2022
ここが物語の面白さのポイントになっていて、ハードボイルドで無頼派なキャラクターだが実は寂しさを抱えており、その寂しさから脱却するために結婚を目指す。「ハードボイルドに生きてきた男が、これまで追求してきたものとは全く違ったものを求められている婚活市場で右往左往する」というのが見どころの一つ。黒崎はまどかのアドバイスで女性とのデートでは喫煙するのを我慢したり、サングラスを外した爽やかな服装で臨んだりするも、緊張や生真面目さ、女性に対する不器用さから思うように進めることができない。「もしもハードボイルドな男が婚活したら」というコントのような展開の中で、一生懸命に奮闘する黒崎の姿にクスリと笑わせられるし、微笑ましく応援したくなる。そんな黒崎を、向井は真っ直ぐに演じることで、人の良さや誠実さ、可愛らしさという面までも表現している。

(C)「婚活探偵」製作委員会2022
また、周囲には一切秘密にしたまま婚活を始めたため、探偵事務所のメンバーの前ではハードボイルドを維持しなければならない中で、ハードボイルドさを削ぎ落とさなくてはならない婚活に奮闘する様子も面白い。仕事中にかかってきたまどかからの電話対応や、女性とのデート中に探偵事務所の部下である八神(前田旺志郎)と遭遇した時などに見られる、ハードボイルドな男が焦って見せるコミカルさは秀逸。一方で、女性を思いやり、心に刺さる言葉を口にする瞬間や、探偵業での調査で見せる渋いかっこよさも存分に見せてくれ、かっこよければかっこいいほどに、コミカルなシーンとのギャップが生まれて、面白さの相乗効果を生んでいる。

(C)「婚活探偵」製作委員会2022
渋いかっこよさからコミカルさまで、振り幅のある黒崎という役を演じながら、「不器用さ」「誠実さ」「虚無感」「一生懸命さ」「焦燥」「落胆」など、向井はさまざまな役者としての魅力を見せてくれている。彼の役者として持ち得る引き出し全てというと少し言い過ぎかもしれないが、ほぼ全ての引き出しに収められている魅力を堪能できる数少ない作品であることは間違いないし、この作品を通して向井がどれだけ多くの引き出しを持つ役者であるかを感じて欲しい。
文=原田健
放送情報【スカパー!】
婚活探偵
放送日時:2022年12月24日(土)20:15~
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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