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2023/05/13

柴田恭兵&石田純一の存在感が抜群のドラマ「大人のキス」

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1993年に発売された、Original Loveの代表曲「接吻-kiss-」は、現在でもカラオケでも大人気を誇り、長年歌い継がれているJポップのスタンダードナンバーである。この名曲を主題歌とするテレビドラマが日本テレビ系で同年に放送された「大人のキス」だ。

2人の女性に挟まれ困惑する柴田恭兵
2人の女性に挟まれ困惑する柴田恭兵

©NTV

同作は、横浜の街を舞台に離婚を経験した2組の夫婦を軸に展開する、コメディタッチの都会派ラブストーリー。軽妙なタッチの中にもほろ苦さを感じさせ、時にはしっとりと恋模様が展開するという、大人のドラマだった。

コンピュータ関連の研究室に勤務する丹羽修一(柴田恭兵)は、ある日手が塞がった状態で同僚の桜井玲子(深津絵里)に遊び半分でキスされる。ところがその様子を妻の祥子(風吹ジュン)が目撃してしまい、離婚の憂き目に。長男と暮らす修一のもとに、高校時代の知人である阿部直人(石田純一)が転がり込む。彼もまた歯科医の妻・千春(黒田福美)と「キス」が原因で離婚したバツイチ男だった。ひとつ屋根の下でバツイチ男たちが共同生活を送る中、彼らは別れた妻たちと奇妙な形で再会を果たすのだが...。

微妙な男女4人の友情と恋愛関係が絡み合いながら、ひとつ屋根の下でさまざまなトラブルが巻き起こる本作。オシャレな大人のラブストーリーを紡いだのは、脚本家の鎌田敏夫だ。鎌田と言えば、70年代に「飛び出せ!青春」や「俺たちの旅」(共に日本テレビ系)のメインライターとして一世を風靡。80年代には「金曜日の妻たちへ」や「男女7人シリーズ」を手掛けて社会現象を巻き起こしたヒットメーカーである。

©NTV

本作も鎌田作品ならではの絶妙なストーリー展開で、2人のバツイチ男を通して、結婚と離婚の理想と現実を鮮やかに描き出す。毎回心地よいテンポで話が進み、視聴者は前のめりで物語にくぎ付けになってしまう。本作のキモは、主演のバツイチ2人の友情関係にあると言ってもいい。男女関係が軸になってはいるが、男盛りの2人の魅力的な俳優を主役に配したことで、物語に大きな彩を添えてくれている。特に柴田恭兵は、当時43歳でまさに俳優としても男性としても脂がのり切っており、独特の色気を放っている。40代の男性に特有の成熟した大人の魅力と、少年のような純粋さのバランスが絶妙で、まさに「いい男」だ。一方の石田はプレイボーイが様になっていて、ハマリ役といった印象。当時の石田は39歳で、トレンディドラマの常連俳優として不動の人気を誇っていた。当時のトレンディドラマを象徴する女優は、W浅野こと、浅野温子&浅野ゆう子だと言われたが、男性俳優では、石田が筆頭格だった。本作は、石田の人気絶頂期の作品でもあり、画面でもさすがという輝きを感じさせる。

石田演じる直人は、中古外車のセールスマン。高校時代に陸上競技のライバルだったというだけで強引に修一の家に転がり込んでくるのだが、そんな現実離れした調子良すぎる男も彼が演じるとリアリティがあるのだ。そんな異なる個性ゆえに、お互いを認め、特に反発もする男の友情を、まさに鎌田の見事な手腕で鮮やかに描いている。また、そんな2人と対比するかのように、彼らの元妻である祥子と千春も偶然の出会いから、女の友情が芽生えていく。4人の男女が複雑に絡みあるのだが、そのあたりの絶妙な展開については、ぜひドラマ本編で確かめてほしい。

そんな魅力十分なドラマ「大人のキス」が、日テレプラスで放送される。近年で着実に伸び続けているという離婚率。愛し合い、それなりに交際期間を経て結ばれたはずの2人なのに、別れてしまうのはなぜなのか...。長年連れ添った末の熟年離婚も珍しくない。一方で、若い層の「結婚願望」がしぼんでいるというわけでもない。このドラマは、「離婚」を通して、「結婚」の意義を見つめ直し、我々に問いかけている作品であることもわかる。「夫婦とは?」「恋愛とは」という男女にとっての素朴な永遠の疑問を解き明かすような哲学をはらんだドラマと言えるのかもしれない。むしろ今だからこそ、改めて見る価値のある作品である。ドラマの雰囲気にも絶妙にマッチして魅力抜群な主題歌と共に、ぜひ堪能していただきたい。

文=渡辺敏樹

放送情報

大人のキス

放送日時:5月15日(月)21:00~
放送チャンネル:日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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