5年ぶりの俳優復帰が話題を呼ぶチャン・グンソク、演者としての振り幅を見せつけた「詐欺師とエリート検事」での1人2役

除隊後初の復帰作であり、実に5年ぶりとなる待望の主演ドラマ「餌＜ミッキ＞(原題)」(6月17日(土)よりKNTVにて日本初放送)が注目を集めているチャン・グンソク。

2020年の除隊後は3作連続のシングルリリースなど精力的なアーティスト活動を展開してきたグンソクだが、彼のキャリアのスタートは、今も多くの人を魅了してやまない俳優活動。韓流に明るくない人も、一度は彼の出演作のタイトルを目にしたことがあるのではないだろうか。

子役として芸能活動をスタートさせたチャン・グンソクは、時代劇「ファン・ジニ」(2006年)で注目を集めると、アジア中に空前の大ブームを巻き起こしたドラマ「美男＜イケメン＞ですね」(2009年)で一躍スターダムへ。ドSでツンデレのアーティスト役がハマり、年代問わず多くの女性が"グンちゃん"の沼に落ちた。

以降も、"国民の妹"と称された人気女優ムン・グニョンと甘酸っぱい恋愛を繰り広げた「メリは外泊中」（2010年）、少女時代のユナと共演した「ラブレイン」(2012年)などが話題に。自身のキャラクターを突き詰めて演じる器量と才能、何より全身から滲み出るスター性が抜群で、多くのファンを魅了し続けてきた。

入隊前最後の主演作となった「スイッチ～君と世界を変える～」(2018年)は、グンソクが天才詐欺師とエリートの堅物検事の1人2役を演じ分けた意欲作。対照的な役柄で、彼のまた新たな魅力が開花した異色のエンターテイメントだ。

物語は、検事・ジュンスが交通事故で意識不明の重体となり、彼にそっくりの天才詐欺師・ドチャンがジュンスのふりをして事件を捜査することに。劇中でグンソクは2役を華麗に"スイッチ"しながら演じ、演者として圧倒的な振り幅を見せつけている。キャラクターについて何度も研究を重ね、監督や脚本家とも相談しながら作り上げたという"両極端の顔"が痛快だ。

180度異なるキャラクターを演じ分けるため、グンソクが意識したとみられるのは表情と口元。どこか憎めないドチャンのチャラさが全開となったシーンでは、グンソクのトレードマークでもあるキュッと上がった口角がポイント。豪快な性格が飄々とした態度やセリフからよく伝わり、時にはカリスマ性溢れる眼差しに心を掴まれる。

一方、エリート検事のジュンスを演じる際は、真面目さが伝わる堅苦しい口調や仕草が全面に。いつも仏頂面で、あまり表情を変えることなく話す姿は冷静沈着そのもの。その分、怒りに震える場面では、少し潤んだ瞳や言葉に凄みが宿る瞬間に目が離せなくなる。

2役を完璧に演じ分け、俳優として新境地を切り開いた「スイッチ～君と世界を変える」。抜群の表現力はもちろん、ドチャンVSジュンスという自分自身との演技対決も鳥肌モノだ。

迫真の演技を見せ、高い評価を得た除隊後復帰作「餌＜ミッキ＞(原題)」に期待しつつ、兵役に就く前、チャン・グンソクが並々ならぬ覚悟で臨んだ今作での演技とぜひ見比べてみてはいかがだろうか。

文＝川倉由紀子