「アジアのプリンス」チャン・グンソクの新境地！無精ひげの荒々しい刑事役に挑んだ、除隊後復帰作「餌＜ミッキ＞」での変貌ぶり

兵役を経て2021年3月よりアーティスト活動を再開し、新曲リリースやバラエティへの出演など、精力的な活動を行ってきたチャン・グンソク。今年に入り、ファンが待ちに待っていた待望のドラマ復帰も実現した。実に5年ぶりとなるドラマ主演作「餌＜ミッキ＞(原題)」では、陰のある刑事を熱演し、新境地を拓いている。

"アジアのプリンス"と呼ばれた彼は、ドラマ「美男＜イケメン＞ですね」(2009年)や、日本の同名ベストセラー漫画を韓国で初映画化した「きみはペット」(2011年)などのラブコメ作品で爆発的な人気を獲得。2011年4月には、シングル「Let me cry」で日本デビューを飾り、海外歌手のデビューシングルとして史上初となるオリコン週間シングルランキング初登場首位という記録を打ち立てるなど、日本で"グンちゃん旋風"を巻き起こしてきた。

そんな彼が、入隊前最後の主演ドラマ「スイッチ～君と世界を変える～」以来、兵役期間を含む約5年の空白期間を経て俳優復帰した作品が「餌＜ミッキ＞(原題)」。韓国で今年4月に完結したばかりのクライムスリラーだ。

2010年より発生し被害者が数万人にのぼるといわれた巨額詐欺事件から、10数年の月日が経った2023年。当時死亡したとされる容疑者"ノ・サンチョン"と関連した連続殺人事件が発生する。グンソクは、この詐欺事件の真相に迫る刑事で、企業訴訟専門の敏腕弁護士という異色の経歴を併せ持つ主人公ク・ドハンというキャラクターを演じている。

詐欺の首謀者、ノ・サンチョンが逃亡先の中国で事故死し、お蔵入りとなっていた過去の詐欺事件。やがて当時の記憶も薄らいできた2023年、ある殺人事件の捜査を担当することになった刑事ドハンは、事件の関係者がかつての詐欺事件の被害者であることを知る。「既に死亡したはずのノ・サンチョルがまだ生きている？」...ドハンは10数年の時を超えて、結びついた2つの事件の謎に迫っていく。

グンソク演じるドハンは、合理的な判断で冷静に捜査を進める刑事。ときには妥協もするリアリストな顔も持つ一方で、殺人事件に対しては執念深く、静かな闘志をみなぎらせる。拳銃をかまえて敵を見据える目つきは怒りに燃え、真実を見極めようと眉間を寄せる姿に百戦錬磨の鋭さが宿る。

この作品でグンソクは、かつてラブコメ作品でファンを沸かせた明るい笑顔を封印し、無精ひげを生やして男くさく陰のある刑事役を熱演。かつてのキラキラとした"アジアのプリンス"のイメージを払拭し、抑揚の効いた演技でストーリーに深みを与えている。

さらに、バイクでの追跡シーンなどハードなアクションにも挑戦。182㎝の長身から繰り出すアクションはダイナミックで見ごたえも十分、冷静さと情熱を併せ持つドハンのキャラクターを際立たせている。

一方、弁護士時代の回想シーンでは、身だしなみを整えて細身のスーツに身を固め、ギャップのある清潔感溢れる姿も見せている。弁護士として成功を収めた彼が刑事に転じた背景にも何やら事情がある様子で、ストーリーが進むにつれ明らかになっていくドハンの過去にも興味をそそられる。

30代半ばとなった今だからこそ体現できる深みのある刑事役で、見たことのない表情を覗かせているチャン・グンソク。約5年に及ぶ充電期間を経て、キャリアの充実期を迎えた彼の"新たな魅力"を堪能したい。

文＝酒寄美智子