「神の演技」と称賛の集まるシャオ・ジャン、X NINE時代の貴重なラブ史劇での名シーン

7月より中国で配信開始したファンタジー時代劇「玉骨遥」が反響を呼んでいるシャオ・ジャン。今や新作オファーが引きも切らないトップスターだが、国宝級の美しいビジュアルのみならず、"神の演技"とまで言われる若手トップの実力がその人気を支えている。

アジア中が熱狂したブロマンス時代劇「陳情令」(2019年)以前、シャオ・ジャンが中国の9人組アイドルグループ"X玖少年團"ことX NINEとして活躍していたことは広く知られているが、当時のメンバーが総出演し話題となった時代劇「華麗なる皇帝陛下(エンペラー)」(2018年)でも、カリスマ性あふれる抜群の存在感を発揮している。

8月14日(月)より衛星劇場にて日本初放送される「華麗なる皇帝陛下(エンペラー)」は、中国で再生回数18億回を超えるビッグヒットを記録したタイムスリップ・ラブ史劇。シャオ・ジャンをはじめとする9名のX NINEメンバーに加え、当時デビュー2年目だった人気女優チャオ・ルースーが見せる初々しい表情など、完成してから5年が経った今も色褪せない"お宝"作品だ。

外科の研修医として働いていた洛菲菲(ルオ・フェイフェイ／チャオ・ルース―)は、流星群が降りそそぐ夜、ある事故をきっかけに古の世界"黄道国(こうどうこく)"へとタイムスリップしてしまう。

若き皇帝・北堂奕(ほくどう・えき／グー・ジアチェン)が治める乱世真っ只中の黄道国には、予知や分身など、不思議な力を身につけた12星座の"星主"たちが暮らしていた。煌びやかな宮廷で目を覚ました洛菲菲は、現代社会とはかけ離れた世界に戸惑うが、やがて星主たちとの複雑な恋愛模様に巻き込まれていく。

12星座をモチーフにしたイケメンキャラクターが活躍する古の世界――そんな独特のファンタジーワールドの中で、快活でチャーミングな現代女性・洛菲菲が星主たちの日常を掻き乱していく様子が何とも楽しい本作。中でも、ヒロインを巡って火花を散らし合うのが、X NINEのビジュアル2トップ、ジアチェン演じる皇帝の北堂奕と、シャオ・ジャン演じる宸王・北堂墨染(ほくどう・ぼくせん)だ。

皇帝の奕はめったに笑顔も見せない堅物だが、実は恋に不慣れな純朴青年。洛菲菲に抱きつかれるというアクシデントを思い出しただけで鼻血を出してしまうほどピュアな心の持ち主だ。

現代で大ファンだった推しのアイドル"佳成(ジアチョン)"とそっくりだったことから洛菲菲に迫られ、内心はドキドキしながらも必死にポーカーフェイスを保とうとする、皇帝の"うぶ"な言動が可愛らしい。

対して、シャオ・ジャン扮する北堂墨染は、予知の能力を持つ宸王にして、皇帝・奕の叔父。いつも墨色や藍色のシックな衣をまとい、常に一歩引いた落ち着いた佇まいを見せる青年だ。皇帝の補佐役を務めているものの、兵権などを巡って奕とは対立が絶えない。そのうえ洛菲菲が現れてからは、菲菲を巡る恋の争奪戦も勃発する。

例えば、街中で言い争いになり、洛菲菲に腕を叩かれてカチンときた奕が「この女を捕らえよ」と命ずるシーン。そこに颯爽と姿を現した墨染が「私の女には指一本ふれさせない」と菲菲を庇い、「私が必ずそなたを守ってみせる」と手をギュッと握って強引に連れていく。いつもは冷静で落ち着いているのに、菲菲のことになると大人げなく熱くなる...そんな墨染の心のひだが垣間見える、若きシャオ・ジャンの魅力が爆発する名シーンが随所に登場する。

シャオ・ジャンとグー・ジアチェンの実年齢は1歳差。だが、落ち着き払って余裕を感じさせる墨染と、洛菲菲の言動に振り回される奕、それぞれにキャラクターの背景がしっかりと描かれているからこそ本当に"叔父と甥"の関係性に見えてくるのだ。アイドルならではの華やかなオーラと、中国のラブ史劇のキラキラとした世界観が絶妙にマッチした「華麗なる皇帝陛下(エンペラー)」、今見ても贅沢な瞬間が散りばめられた隠れた名作と言えそうだ。

文＝酒寄美智子