代表作「東宮」の皇子役とは一変！チェン・シンシューの好感度の高いラブコメ演技

眉目秀麗なイケメンスターが次々と誕生する一大ジャンル、中国ロマンス史劇。中でも、初主演にして"美しい皇子"を演じきり、186cmの高身長＆抜群のビジュアルでブレイクを果たした逸材と言えば、「東宮～永遠(とわ)の記憶に眠る愛～」のチェン・シンシューではないだろうか。

3歳から名子役として活躍してきたシンシューは、名匠チャン・イーモウ監督の映画「サンザシの樹の下で」(2010年)などヒット作にも出演し、キャリアを重ねてきた若手演技派。美しき皇子・李承鄞(りしょうぎん)を演じ、大きな転機となった「東宮」では、ヒロインを深く愛する反面、復讐のためには手段を選ばない二面性のある役どころで魅了した。

そんな彼の最新主演作であり、中国でも今年2月に放送が開始されたばかりの注目作「星花双姫～天に咲き、地に輝く恋～」(2023年)が、10月23日(月)より衛星劇場にて日本初放送される(第1話が9月30日(土)に先行無料放送)。

「星花双姫～天に咲き、地に輝く恋～」は、ヤン・ズー＆ダン・ルンが主演した2018年のヒット作「霜花の姫～香蜜が咲かせし愛～」を第1弾とする「蜜糖三部曲」シリーズのラストを飾る作品。「霜花の姫」をはじめ、大ヒット時代劇「長行歌」(2021年)でメガホンを取ったヒットメーカー、朱锐斌(チュー・ユイパン)監督の制作チームが再び集結したことも話題を集めたフュージョン時代劇だ。

今作でシンシューが演じるのは"天界の王子"。自身の出世作「東宮」に続き、高貴な顔立ちが活きる役どころという共通点はあるものの、シリアスな印象が強かった「東宮」とは一転、今回の王子役はラブコメ色の強い仕上がりに。それがまた、美しいビジュアルとのギャップの魅力を発揮している。

「星花双姫～天に咲き、地に輝く恋～」で描かれるのは、天界、人間界、沈淵界、獣界が交錯する壮大な世界観。ある時、人間界の王のもとに双子の姉妹が誕生したことから、物語は始まる。

ヒロインとなる2人の王女は、穏やかで心優しい姉・青葵(ホー・シュエンリン)と、活発で頭も良いが縁起の悪いことが続いたことから"不吉な子"とされ、18歳になるまで宮廷に幽閉されてきた妹・夜曇(リー・ランディー)。やがて美しく成長した彼女たちは、共に各界の王子と婚約することに。姉の青葵は天界の王子・少典有琴(チェン・シンシュー)と、そして妹の夜曇は沈淵界の第三王子・嘲風(チェン・ムーチー)と、同じ日に結婚することに決まるが、結婚式当日、姉妹はある出来事から途中で入れ替わってしまい、逆の相手と新婚生活を送ることになる。

周囲からの賛美と敬意を一身に集める心優しい姉・青葵に対し、"災いをもたらす王女"と見なされながらも、元気でおてんばな性格に育った妹の夜曇を演じるのは、チェン・シンシュー同様、子役から活躍してきたリー・ランディー。明るくて天界の人々ともすぐ打ち解ける一方、奔放な気質からか面倒を度々起こす小悪魔チックなお騒がせキャラを愛嬌たっぷりに演じている。結婚の直前まで1500年もの修行に入っていた寡黙な少典有琴に対しても、お構いなしに振り回す新婚生活がコミカルに綴られていく。

そして、そんな新妻に初っ端から押され気味の夫・少典有琴の様子が何ともチャーミング。宮廷の王女らしからぬ奔放な言動を見せる夜曇は、泣いたり笑ったり叫んだりと、喜怒哀楽をストレートに表現するタイプで、自身とは正反対の夜曇に面食らう有琴の戸惑いが妙に微笑ましい。ストーリーが進むにつれ、そんな夜曇に愛おしさを募らせていく姿もまた尊い。

さらにシンシューは、有琴が切り捨てた欲念である"神識"と呼ばれる別人格も演じ、1人4役にチャレンジしている。高貴な王子とは一変して、お金の亡者である殺し屋や、女好きの絵描きといった人格を声や表情、仕草などで演じ分ける実力は見事というほかない。

「東宮～永遠(とわ)の記憶に眠る愛～」でシンシューの存在を知ったファンには、コミカルな振る舞いを見せる今作の少典有琴役は、きっと新鮮に映るはず。4役の多彩なキャラクターの変貌ぶりも楽しく、硬軟を織り交ぜた表現者としての魅力を存分に味わえる配役と言えるだろう。

中国の古典「山海経」を参考に壮大なスケールで紡がれる今作ならではのファンタジックな世界観にどっぷりと浸りながら、中国ロマンス史劇の新たなプリンス、チェン・シンシューの魅力を堪能してみては？

文＝酒寄美智子