敵国の姫を愛した葛藤を体現したチェン・シンシューのハマり役！スターダムへと押し上げた「東宮～永遠の記憶に眠る愛～」の凛々しい皇子役

「長行歌」(2021年)の制作チームが再集結したファンタジー時代劇「星花双姫～天に咲き、地に輝く恋～」(2023年)で注目を浴びたチェン・シンシュー。1500年もの修行の末に完璧な神君となったものの、型破りなヒロインに振り回される有琴役は好感度も満点。眉目秀麗な皇子ぶりに改めて魅了されたファンも多かったことだろう。

そんなシンシューが"復讐に身を捧げる皇子"を演じ高評価を得た初主演ドラマが、3月2日(土)深夜より衛星劇場にて放送される「東宮(とうぐう)～永遠(とわ)の記憶に眠る愛～」(2019年)だ。

今年3月に28歳を迎えるシンシューは、幼少期から数々のCMやドラマに出演してきた名子役。名匠チャン・イーモウ監督の映画「サンザシの樹の下で」(2010年)や、楊康役を演じた「射鵰英雄伝 レジェンド・オブ・ヒーロー」(2017年)などで実績を重ね、この「東宮(とうぐう)～永遠(とわ)の記憶に眠る愛～」で一躍大ブレイクを果たした。

本作のストーリーは、少々複雑だ。4つの国が勢力争いを繰り広げる中、そのうちの1国で西域を治める西州の姫・曲小楓(ポン・シャオラン)に、敵国・豊朝の皇子との縁談が持ち上がる。一方、豊朝ではちょうどその頃、和睦の使節として西州に向かっていた第一皇子・李承稷が何者かに襲撃され、殺害されてしまう。旅に同行していた第五皇子・李承鄞(チェン・シンシュー)は辛くも逃げ延びると、兄の復讐を決意。茶葉商人の顧小五と正体を偽って小楓の前に現れる...。

4つの国の人々の政治的な思惑が絡み合うストーリー、それをグッと引き締めているのがシンシュー演じる第五皇子・李承鄞の凛々しい存在感だ。もとは長兄である皇太子を慕い、子犬のようにじゃれつく天真爛漫な若者だった承鄞が、その死によって復讐の鬼と化し、冷酷な"もう一つの顔"を持つように...。芸歴24年のシンシューが鮮やかに演じ分けるその二面性に、視聴者はグイグイ引き込まれていく。

颯爽と白馬にまたがる乗馬シーンも吹替なし。序盤の大きな見どころである襲撃シーンでは、馬を走らせて駆けつけ、馬上で敵と戦う場面や馬を降りての飛び蹴り、剣さばきなど、アクションもダイナミックで視線を惹きつける。

そんな承鄞と運命で結ばれるのが、今作でブレイクを果たしたポン・シャオラン演じる美しき姫・曲小楓。男勝りな性格で、意に染まぬ縁談を突っぱねて逃げ出そうとする快活なお姫様だ。そんな小楓が李承鄞と出会い、惹かれ合う。水中で交わす激しいキスや蛍舞う夜のロマンチックなキスなど、その恋愛模様は狂おしいほどに情熱的。生傷が絶えないほど体当たりの撮影が続いたというリアルな戦闘シーンとのコントラストがまた、2人の激しい恋をより引き立てる。

さらに、小楓をすぐそばで守り続ける剣術の師匠・顧剣(ウェイ・チェンシャン)も交えた切ない三角関係も見逃せない。もともとは豊朝出身であり、第五皇子・李承鄞の従兄にあたる彼もまた一族の復讐という哀しい宿命を背負う身。愛しい小楓を奪い去りたい気持ちを必死に抑え、「天下一の男を探してきた」と言って李承鄞と引き合わせるのだ。

これまでに23作品がドラマ・映画化され、そのほとんどがヒットしたという"TVドラマの女王・匪我思存(フェイウォスツゥン)"の同名小説を原作に、かつてシルクロードの分岐点として栄えた都市・敦煌でも撮影を敢行したという本作。その甲斐あって、敵対する国同士の皇子と姫の激しい恋が壮大なスケールで描かれ、心の奥底のエモーショナルな気持ちを呼び起こす。チェン・シンシューの初主演にして"代表作"と称される美しき皇子役を存分に堪能してほしい。

文＝酒寄美智子