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2024/02/27

西島秀俊と中村倫也の演技が作品の世界観まで創り出す!「仮面ライダーBLACK SUN」

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1971年に第1作が放送された後も時代に合わせて進化を続け、今なお多くのファンに愛されている「仮面ライダー」シリーズ。2021年にはシリーズ生誕50周年を迎え、記念イベントが開催されたり、リブート作品が制作された。

2022年秋に配信されたリブート作品「仮面ライダーBLACK SUN」は、豪華キャストの大人向け作品であることが話題となった。メガホンを取ったのは「孤狼の血」や「死刑にいたる病」などを手掛けた白石和彌監督。ハードな描写の中で、時には強烈に、時には染み込むように人物を描き出すその手腕によって、原作「仮面ライダーBLACK」(1987~1988年放送)の特徴である"親友同士が戦う悲哀"というモチーフをより深く表現している。

「仮面ライダーBLACK SUN」に出演する西島秀俊
「仮面ライダーBLACK SUN」に出演する西島秀俊

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

そんな"戦う親友同士"を演じたのは、日本を代表する2人の俳優・西島秀俊と中村倫也。西島が演じたのは「仮面ライダーBLACK SUN」に変身する南光太郎。中村は「仮面ライダーSHADOWMOON」に変身する秋月信彦を演じる。2人は子供の頃に"キングストーン"を体内に埋め込まれ、仮面ライダーに変身する力を持つようになった。

本作の舞台となるのは、人間と怪人が共存している2022年の架空の日本。しかし、そこで怪人は差別的な扱いを受け、肩身の狭い思いをしながら暮らしている。
最初に登場するのは光太郎で、怪人差別に反対するデモと差別団体が衝突する中を、自分には関係ないとでも言いたげな表情で通り過ぎてゆく。借金の取り立てや暗殺といった汚れ仕事をしていて、根城としている荒野に置かれたバスでは疲れたような目で薬を打つなど、まるで世捨て人のようだ。本作のヒロイン・和泉葵(平澤宏々路)の「ずっと泣いているような目をしてた」とのセリフがまさにピッタリな人物だ。

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

一方の信彦は、牢獄らしき場所に幽閉され、髪も髭も伸びるがまま。実はこの時、怪人を生み出す源となる"創世王"の命が尽きようとしていて、怪人たちの政党"ゴルゴム党"は新たな創世王を誕生させるために必要なキングストーンを探していた。ゴルゴム党のメンバーにキングストーンのありかを聞かれても、あざ笑うように拒否する信彦の声はよく響き、何か強い意志さえ感じるほどだ。

鬱屈とした光太郎と、囚われながらも意志を持ち続ける信彦。冒頭の2人の不遇な状況や心情を目や声で伝えてくる西島と中村の演技はさすがと言えるだろう。

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

そして、キングストーンの捜索が本格化したことをきっかけに、2人もまた動き出す。光太郎はキングストーンを持つ葵を守るために戦い、信彦も怪人たちを守るために戦うようになる。

光太郎は葵と過ごす時間の中で笑顔を見せるようになり、葵を優しい声で包んだりもする。話が進むごとに表情が戻り、同時に光太郎の意志が固まっていく様子も伝わってくる。第5話で葵が罠に落ちた時の怒りの表情には、その力強さに圧倒されるほどだ。

信彦の方は揺るぎない強い意志を持ち続け、怪人たちを集めて武力闘争まで決行するようになる。常にクールで、よく通る朗々とした声には狂気さえ感じられ、同じく第5話で仲間たちに指示するシーンは相当な迫力だ。

お互い何かを守りながらも、考え方の相違から、やがて光太郎と信彦は対立する。戦いの中で2人が見せる絶叫、涙、怒り。そこに光太郎と信彦の悲しい人生が感じられ、本作の世界観さえそこにあるように思えるのは、やはり西島と中村の演技の力だろう。

「仮面ライダー」シリーズきっての名作は、著名な監督と2人の名優によって蘇り、より多くの人の心に響く作品となって帰ってきた。そう言い切っても何の問題もない1作だ。

文=堀慎二郎

放送情報

仮面ライダーBLACK SUN
放送日時:2024年3月3日(日)22:00~
チャンネル:東映チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

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