ペ・スジのギャップのある役柄が印象的！「イ・ドゥナ！」とは立場が逆の儚いラブストーリー

清らかなルックスを武器に多くの恋愛ものでヒロインを演じ、"国民の初恋"という愛称で親しまれてきた女優のペ・スジ。そのきっかけとなった2012年の初出演映画「建築学概論」から現在に至るまで、"初恋"の名にふさわしい、みずみずしくナチュラルで時に小悪魔的な佇まいは、キャリアを重ねた今も変わりない。

アイドルグループmiss A出身であることも有名で、最近でも人気絶頂で突如引退したアイドルという自身と重なる部分がある役どころでのツンデレ演技で視聴者をドギマギさせた「イ・ドゥナ！」(2023年)が話題に。そんなスターの恋を描いたという点は共通するが、スターに恋をするという真逆の立場に演じているのが「むやみに切なく」(2016年)だ。

脚本は、「ごめん、愛してる」(2004年)、「優しい男」(2012年)など切ない恋模様を書かせたら右に出るものはいないイ・ギョンヒが担当。学生時代に惹かれ合いながらも複雑な事情によって離れ離れになった男女が、数年後トップスターと番組プロデューサーとして再会を果たし、恋に身を投じていく悲運のラブストーリーだ。

わがまま放題で自由だが、行動の裏には余命わずかという事情を抱えているトップスター・ジュニョンをキム・ウビンが演じている。一方で、スジが演じるのは業界の評判が最悪なドキュメンタリープロデューサー・ウル。高校時代は正義感が強く、貧しいながらも心は豊かだったが、父の死により若くして巨額の借金を背負ったことで卑屈になってしまった苦労人だ。

大企業の違法排水の現場をおさえたにも関わらず、事態を揉み消そうとする相手の賄賂を受け取ってしまうなど、お金を前にするとプライドを捨ててしまうウル。その裏金がバレるとなんとかクビを免れようと上司にヘラヘラとこびへつらったりと、ピュアなイメージが強いスジだけに俗物的な姿がなんとも新鮮に映る。

それでも結局仕事を失い、居酒屋でクダを巻いていたところ、ジュニョンに関する話を耳にし、仕事のチャンスとばかりに持ち前の図太さでジュニョンに近づくウル。過去の一件から引け目を感じているジュニョンは冷たくあしらうが、次第にウルのことが気になり...と、2人の関係は時を超えて再び動き出していく。

物語が進むに連れて現在と並行して過去パートも描かれる本作では、これぞ"国民の初恋"と言うべきおてんばな少女のかわいらしさ、父の事故を目の当たりにし嗚咽する娘の悲しみ、そして厳しい現実にお金と正義で揺れる繊細な胸中など、ウルの様々な姿が描かれており、振り幅の大きい感情をスジは完璧に表現。その達者な演技と存在感には思わず目を奪われる。

また、ジュニョンの病など様々な障壁に立ち塞がれながらも距離を詰めていくうちに、次第に心に豊かさを取り戻していくウルの心境の変化をじっくりと丁寧に体現し、ドラマに暖かさと真心をもたらした。本作で初共演ながら抜群の相性を発揮したキム・ウビンとペ・スジは、今年放送予定の「全てが叶うだろう(原題)」で約7年ぶりに共演することも話題になっているだけに、彼らが紡いだ切ない恋模様をいまこそ見直しておきたい。

文＝HOMINIS編集部