映画「無名」への期待が高まるワン・イーボー(王一博)、「陳情令」のブレイク後に中国のトップスターと共演した「風起洛陽～神都に翔ける蒼き炎～」

5月3日(金)より日本で劇場公開されるスパイ・ノワール「無名」が期待を集めているワン・イーボー(王一博)。中国映画界最高の賞とされる金鶏賞3冠に輝いた本作で、香港を代表する映画俳優トニー・レオンと肩を並べてW主演を務めており、スタントなしで挑んだ迫真のアクションが早くも話題に。フィルム・ノワールならではの緊迫感と美しいビジュアルも注目の的となっている。

遂に映画初主演の座を掴んだイーボーだが、飛躍のきっかけは「陳情令」(2019年)での世界的ブレイク。シャオ・ジャン(肖戦)と繰り広げた熱き"ブロマンス"は未だにファンの心を捉え続けている。そんな「陳情令」ブームを追い風に、イーボーの次なる時代劇として話題を呼んだ時代劇が「風起洛陽～神都に翔ける蒼き炎～」(2021年)だ。

唐の武則天が建立した王朝・武周の時代が舞台となる「風起洛陽～神都に翔ける蒼き炎～」は、身分も性格も相反する2人の男がバディを組み、神都・洛陽で起きた事件を探るべく奔走するサスペンス。復讐を胸に抱き、貧民街でひっそりと暮らす高秉燭(こうへいしょく)が、自身が容疑者にされた事件をきっかけに朝廷高官の次男坊・百里弘毅(ひゃくりこうき)と出会い、共に巨大な陰謀に立ち向かう様子を圧倒的な映像美と共に紡ぎ出していく。

4万平方メートルの撮影スタジオに100を超えるセットを組み、エキストラは2.5万人、小道具は1.5万点...と、破格のスケールで1300年前の古都・洛陽の世界観を忠実に再現したことでも注目を浴びた本作。それに負けず劣らず、多くの関心を集めた要因が、百里弘毅を演じたワン・イーボーと高秉燭を演じた名優ホアン・シュエンによる個性的なバディの魅力だ。

ホアン・シュエンといえば、"中国版「ゲーム・オブ・スローンズ」"とも称された「海上牧雲記～3つの予言と王朝の謎」(2017年)やチェン・カイコー監督作「空海－KU-KAI－美しき王妃の謎」(2017年)といった大作で主演を務めてきたスター。そんなシュエンにも引けをとらない存在感と持ち前の美しさで、百里弘毅というクセのあるキャラクターをイーボーが好演している。

2人のキャラクターはことごとく正反対。百里弘毅は、"工部尚書"という朝廷高官を父に持つお坊ちゃん。洛陽きっての食通で、彼のお墨付きが出れば店が繁盛すると街中の店が品評の順番待ちをするほど。生まれつき情に欠けるところがある反面、博識で観察眼もあり、風評に惑わされることなく物事を正しく判断する能力に長けている。そんな人物像にイーボーが持ち前の美しい容貌と抜群の表現力で愛嬌をプラスし、魅力的なキャラクターに昇華させている。

一方の高秉燭は、"不良井"と呼ばれる貧民街で暮らすワイルドなキャラクター。度胸も人一倍ある切れ者だが、5年前に襲撃事件に巻き込まれて一緒にいた仲間を殺されて以来、その犯人とされる秘密組織・春秋道への復讐だけを糧に生きてきた熱い人物だ。その春秋道に近づくため、洛陽で起きた連続殺人の犯人として名乗り出る。武官たちに追われるシーンで建物の屋根伝いにダイナミックな逃走劇を繰り広げるなど、華やかなアクションはさすが中国映画界のスターならではだ。

高秉燭が真犯人ではないと見抜いた百里弘毅と、百里弘毅が信用に足る人物だと見極めた高秉燭がタッグを組んで真犯人を探し始めることから、物語は大きく動き始める。クールな御曹司とワイルドな荒くれ者、2人に共通するのは物事の本質を見極められる頭の良さ。そこに皇帝から直々に連続殺人事件の調査を命じられた女性武官・武思月(ぶしげつ)も加わり、真犯人を追いつめていく。三者三様のダイナミックなアクションも見どころだ。

一見、苦労知らずのお坊ちゃんと見せて、死地にも飛び込み、真相究明に体を張っていく怒涛の展開は、高秉燭との熱いブロマンスも見え隠れし、ぐいぐいと引き込まれること必至。クールながらも熱い志を抱くという意味では、「陳情令」の"藍忘機(ラン・ワンジー)"と相通ずる側面を持つキャラクターだけに、百里弘毅の一挙一動に魅せられてしまうことだろう。

文＝酒寄美智子