「晩媚と影」「流転の地球」のチュー・チューシャオが体現する青春時代の煌めき...深い余韻をもたらす秀逸なタイムリープ作品

切ないと評判のラブ史劇「晩媚と影～紅きロマンス～」(2018年)以降、注目を集める中国の俳優チュー・チューシャオ。近年も、SF小説「三体」で知られる作家・劉慈欣の原作小説「さまよえる地球」を実写映画化した「流転の地球」(2019年)や、瑞々しい恋愛映画「あなたがここにいてほしい」(2021年)など、出演した映画が軒並み中国で大ヒットしている。

そんな彼が2022年に出演し、2023年末にはスピンオフ映画も公開されるなど好評だった連続ドラマが、6月13日(木)よりアジアドラマチックTVにて日本初放送される「きみの星が、きらめく世界で」だ。

チューシャオといえば、中国宮廷ロマンの最高傑作と称される2018年の大ヒットドラマ「如懿伝～紫禁城に散る宿命の王妃～」で第五皇子・永琪役を演じ、同年の「晩媚と影～紅きロマンス～」ではヒロインを"影"として支える護衛・長安役で切ないロマンスを繰り広げた若手実力派。古装の似合う長身に、一重まぶたが印象的な硬派なルックス、落ち着いた低音ボイス...と、時代劇との相性も抜群で、特に「晩媚と影～」での献身ぶりは多くの支持を集めた。

だが「きみの星が、きらめく世界で」で演じているのは、その真逆と言っていい現代のナイーブな高校生。今年30歳を迎えるチューシャオが、撮影当時20代後半とは思えない爽やかな制服姿を披露。硬派な武将のイメージからはガラリと印象を変え、成績優秀でピュアな高校生・張万森を繊細に演じている。

仕事もうまくいかず、婚約者にはフラれ...と不幸続きのアラサー女性・林北星(ジャン・ジアニン)が、あることをきっかけに高校時代にタイムリープ。そこで昔は存在さえ気づかなかった地味な男子生徒・張万森と知り合い、青春をやり直していく。繰り返されるタイムリープの謎と同級生の死の真相を探るミステリー要素も含んだ、ファンタジックな青春ストーリーだ。

自己主張が強く、恋をした相手には全身全霊でぶつかっていくアクティブな林北星に対し、張万森は学年1位の秀才だが口数も少なくいつも控えめで、目立たないキャラクター。そんな真逆ともいえる2人が、雨の日に張万森が林北星に傘を貸してあげたことをきっかけに言葉を交わし、少しずつ仲良くなっていく。

雨の日の相合傘に始まり、帰りのバスでは一つのイヤホンを2人で分け合って音楽を聴き、図書館で一緒に勉強したり、教室で2人きり居残ってスポーツ行事の応援幕を作ったり...。2人が過ごす穏やかな放課後は、甘酸っぱい青春そのものだ。

決して強引に想いを伝えようとはせず、林北星をそっと見守る張万森の穏やかで包み込むような眼差しには、隠しきれない"好き"の気持ちがこぼれ出ていて、古装劇では硬派な印象だった彼の太い眉と穏やかな目元が、内気でピュアな男子高校生のそれに見えてくる。

そんな張万森が、ここぞというときに見せる男気が堪らない。学校イチのイケメンでナルシストの展宇(ウー・シーザー)から「俺のほうが先に林北星と出会った」と牽制されるシーンでは、にわかに表情を変え、「先に出会った証拠は？」と一歩も退かず、堂々と受けて立つ姿勢を見せるのだ。その直後に自転車で転んでしまうオチもチャーミングで、母性本能をくすぐるキャラクターを好演している。

林北星と張万森の甘酸っぱい高校生活に、後半はタイムリープの謎も絡んできてストーリーからも目が離せない「きみの星が、きらめく世界で」。演じる役柄によってガラリと印象を変えるチューシャオだけに、中国の評価サイト「MyDramaList」で高評価を獲得したのも納得の、彼の繊細な演技にぜひ注目してみてほしい。

文＝酒寄美智子