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2024/06/03

韓国の人気俳優・ヒョンビンの魅力を寺脇研が分析「表情で芝居を表現できる役者」

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妻ソン・イェジンとの初共演作「ザ・ネゴシエーション」
妻ソン・イェジンとの初共演作「ザ・ネゴシエーション」

爽やかな笑顔と男らしさで多くのファンをとりこにしてきた韓国の人気俳優・ヒョンビンは、ドラマ「愛の不時着」をはじめとする数多くの出演作品が大ヒットを記録し、国内外問わず絶大な人気を誇っている。そんなヒョンビンの主演映画4作品が6月24日(月)から27日(木)までの4日間にわたって、洋画専門チャンネル ザ・シネマで放送される。

今回放送される作品は、ヒョンビンが兵役後に出演した「王の涙 イ・サンの決断」「コンフィデンシャル/共助」「スウィンダラーズ」「ザ・ネゴシエーション」の4作品。ドラマのラブストーリーで魅せた甘いマスクのイメージとは程遠い、硬派なキャラクターを演じている。

これまで世の女性たちを夢中にさせるブームとなった作品は、ドラマ「私の名前はキム・サムスン」や「シークレット・ガーデン」などラブストーリーが中心。ヒョンビンといえばドラマを思い浮かべる人も少なくない中、映画では多彩な役柄を演じているヒョンビンの俳優としての魅力を、映画評論家の寺脇研さんに語ってもらった。

「王の涙 イ・サンの決断」 (C) 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
「王の涙 イ・サンの決断」 (C) 2014 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

■ヒョンビンの魅力はズバリ"潔さ"

これまで多くの韓国映画を観賞してきたという寺脇さんは、多くの韓流スターと比べてヒョンビンは「潔い感じが出ているんですよね」と話す。

「彼は自分よりキャリアのあるキム・ソナとか有名な女優さんと共演することが多かった。普通だったら人気女優と共演するとき、駆け出しの若手役者は『演技素人ですから』みたいな雰囲気が出るんですけど、ヒョンビンはそれが全くなくて、何をやっても吹っ切れているんですよ」

韓国映画が世界で評価されてからデビューしたことも大きいという。

「最初から物おじせずに伸び伸びとやる世代なんですよね。90年代のスターと違って『自分たちが切り開いたぞ』っていうプライドがないぶん、肩肘を張ったり飾ることがない。それがカジュアルにアピールする魅力にもつながっているし演技にも表れていて、考え抜いた演技というより自分がその映画の中で何を期待されているかに応えていく演技をしているんですよ。だからいろんなキャラクターを演じ分けることができるんだと思います」

ヒョンビンが北朝鮮側の刑事を演じた
ヒョンビンが北朝鮮側の刑事を演じた

「コンフィデンシャル/共助」 (C) 2017 CJE&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

■アクション映画の魅力は前後のドラマ部分

ドラマ「シークレット・ガーデン」に出演後、ヒョンビンは兵役で約2年間、海兵隊に在籍している。ヒョンビンにとってこの経験は人生の大きな節目になったと話す寺脇さんは「実はチョ・インソンさんと親しくさせてもらっているんですけど、彼も兵役に行った時に、ものすごく人間的に成長していました。兵役っていうのは韓国の男性にとって、誰もが通らなければならない道なんですよね。そこで得た経験が彼の人間的なスケールを大きくしてくれて、その後の出演作に大きな影響を与えたなと思っています」

実際、除隊後の銀幕復帰作となった映画「王の涙 イ・サンの決断」は、これまでの彼の興行成績を大きく上回るヒット作となった。人間性のスケールが大きくなったヒョンビンが、暗殺の危機におびえていた若き王が偉大なる王へと成長していく姿を演じることで、相乗効果を生んだ。そんな同作の見どころは、アクション以外のところにあるという。

「権力抗争があって王になれるかどうか分からない。いろんな対抗勢力がある中で自分が王にふさわしいかどうかためらいながら突き進んでいく姿が表現されているんですよね。アクション部分だけが目立ってしまうけれども、それよりもアクションの前後にあるドラマ部分に魅力がある作品なんですよ」

北朝鮮と韓国の刑事が国境の壁を越えてタッグを結成する、アクション映画として人気を博した「コンフィデンシャル/共助」も、寺脇さんはアクション以外のところに魅力があると話す。

「彼の役どころは北朝鮮の刑事。北朝鮮って日本人から見てもちょっと怖い国のイメージがありますけど、彼が演じると人間なんだなって思わせてくれる。ソウルに来て韓国の自由な生活を見ることで感じる戸惑いとか、自分は北朝鮮のエリートなんだっていうプライドとか。そういうアクションシーンの前後にある心の機微が表現されているから面白いんですよね。ただそれはヒョンビンも海兵隊にいたことで、北の側も自分と同じ普通の人たちが軍人になっているんだなっていうことを知っていて、互いに国のために頑張っているんだっていう実感を得たから、演技に深みが出ているんだと思います」

ヒョンビンは天才詐欺師役を好演
ヒョンビンは天才詐欺師役を好演

「スウィンダラーズ」 (C) 2017 showbox and DOODOONG PICTURES ALL RIGHTS RESERVED.

■高いポテンシャルは表情の豊かさが秘訣

巨額の詐欺事件をモチーフに制作された「スウィンダラーズ」では、天才詐欺師という役柄に挑戦しているヒョンビン。切れ者でありながらも、少しニヒルで抜けている絶妙なキャラクターを演じている。「これまでとは違う詐欺師という役に、彼のやりがいを感じる作品」と評する寺脇さんは「社会問題と全く関係ない作品に見えますが、背景には政治の腐敗が絡んでいるんです。韓国の政治腐敗は問題になっていて、大統領だった人が捕まったり、刑務所に入った政治家がたくさんいる。それをストレートに描く社会派映画もたくさんあるんですけど、この映画は娯楽として詐欺師というキャラクターを使いながら、でもこれを見ていると、もっと悪いやつらがいるなって観客に感じさせる映画になっているのが面白い部分だと思います」

初の悪役への挑戦となった「ザ・ネゴシエーション」では、「愛の不時着」で後に再共演したソン・イェジンと初共演を果たしている。

「共演しているんですけど、本人同士は画面内で一緒にはいないんですよ。直接対話でなく遠隔画面を通して話している。目の前にいる相手と話す演技が基本なのに、目の前にいない相手と話す演技をするシチュエーションは誰にでもできることじゃないんです。ソン・イェジンからすれば自分と互角にこの難しいシチュエーションで芝居するんですから、彼のことは強く印象に残ったんじゃないでしょうか。ヒョンビンはただ顔がいい、ただアクションができるだけの俳優じゃないんだっていうことを示してくれたのが、この映画だと思います」

最後に、寺脇さんにヒョンビンの出演作品を見る上で、より彼の魅力を感じられるポイントを聞いた。

「アクションみたいな激しい場面はすごく目立つから目が行きがちなんですけど、彼の魅力はアクションをする前後の表情が豊かなこと。アクションは誰でもできるけど、セリフじゃなく表情で芝居を表現できる役者はそんなに多くありません。そこを見落とさないように見てみてください」


取材・文=永田正雄



放送情報

王の涙 イ・サンの決断 [PG12]
放送日時: 6月24日(月)23:15~
スウィンダラーズ
放送日時: 6月25日(火)23:30~
ザ・ネゴシエーション
放送日時: 6月26日(水)23:30~
コンフィデンシャル/共助
放送日時: 6月27日(木)23:15~
放送チャンネル: ザ・シネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります



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