2024/11/24
大沢たかおと綾瀬はるかの演技力で、医療ドラマの新たな切り口となった作品「JIN-仁-」
TVドラマはクール毎に入れ替わるが、毎クールにほぼ必ずといってよいほどあるジャンルと言われたら皆さんは何を思い浮かべるだろうか。恐らく多くの方があげるのが医療ドラマである。今回はそんな医療ドラマというジャンルから少し昔に一世を風靡した作品「JIN-仁-」を紹介する。
「JIN-仁-」は村上ともかの漫画を原作とした作品で第1期が2009年、完結編(第2期)が2011年に制作された。医療ドラマではあるが、SF要素が大きく絡む珍しいドラマでありその新鮮さとキャストたちの巧みな芝居により人気を博した。
■難しい役どころを堂々と演じた大沢たかお、その覚悟
主人公・南方仁を演じるのは大沢たかお。南方は現代の脳外科医であったが恋人の未来の手術をきっかけにメスを握ることを躊躇するようになっていた。そんな南方はある日、急患の患者から胎児の形をした奇形腫瘍を摘出する。しかもその腫瘍との接触により江戸時代にタイムスリップすることになってしまった。器具も薬もない江戸で己の腕一本で患者を救い出さねばならなくなった南方は自身の医者として人間としての在り方を見つめ直していく。
物語には坂本龍馬をはじめとする、江戸時代の終わりに大きく関わる人物たちが多数登場する。南方はそんな人々との接触に自身が歴史を改変してしまうという苦悩を抱えながら接することになる。
このドラマの大沢は圧巻の芝居といっていい。現代では迷える医者として頼りない表情をしていたが、話数を進めるにつれ全てが足りていない江戸で試行錯誤しながら医者としての熱意に満ちた顔になっていく。現代では救命率が圧倒的に高い手術によって簡単に命が無くなってしまうという緊迫感に溢れる現場の数々を、逃げていたはずの執刀医として向き合う姿は大沢の覚悟を感じ、それはまるで大沢自身が本当に医者として働いていたのではないかと錯覚するほどだ。そんな大沢と共に更にドラマを盛り上げるのが橘咲を演じる綾瀬はるかだ。
■綾瀬はるか、ドラマに華を添える巧みな表情
橘はタイムスリップしてきた南方の結果的な世話役として密接に関わっていくのだが、その綾瀬の芝居が素晴らしい。例えば物語の中で南方にしかわからないことが沢山ある。しかし、それらは現代の視聴者からしては当たり前の単語で綾瀬も知っているに違いない単語だ。その簡単な単語を橘として南方に聞き返す綾瀬の表情は「本当に知らないのだな、江戸時代の人だもの」と納得させられる説得力を持っている。まるで子供が知らない単語を親に尋ねるような無垢な表情でもあり、応援したくもなるのだ。この綾瀬の自然な表現がなければ、南方がタイムスリップをしてきたのだという事実が噓くさくなっていたかもしれない。
この作品は10年以上経った今でも輝きを持つドラマだ。大沢と綾瀬の演技に注目しながら、是非鑑賞してみてほしい。
文=田中諒