寺尾聰と岡田将生が描く年齢と立場を超えた友情に胸が温かくなる！有村架純、松坂桃李も共演の「ドラマW　チキンレース」

俳優、そしてシンガーとして、昭和から令和の現在まで唯一無二のカリスマ性を放ち続けている寺尾聰。一方、クールで野心家の官僚から笑顔が爽やかな天才詐欺師まで、幅広い役柄を自然体で演じることに定評のある俳優・岡田将生。そんな彼らが共演した、笑いあり涙ありのヒューマンドラマが「ドラマW　チキンレース」だ。

東京の大病院に勤める父・司(鹿賀丈史)を筆頭とする医師の家系に育ち、自身も医師を志したものの医大に落ち続けた27歳の青年・神谷猛(岡田)。海辺の病院で看護師として働き始めた神谷だが、医師への未練を抱く神谷を「やる気がない」と感じる先輩・櫻井久美(有村架純)から厳しい指導を受ける。そんな中、19歳で事故に遭ってから45年間眠り続けている身寄りのない患者・飛田譲(寺尾)を担当することに。昏睡状態の飛田に、悩みや愚痴を語りかけながら看護を重ねる神谷だったが、ある日、飛田が奇跡的に意識を取り戻す。不良だった19歳の心のまま目覚めた64歳の飛田から「おっさん」と呼ばれながらも献身的なリハビリを続ける中で、神谷と飛田の間には確かな友情が芽生えていく...。

■寺尾聰と岡田将生の好演で心温まる友情を描き出す

本作で寺尾が演じるのは、19歳の時に愛する女性を巡って行った度胸試しの"チキンレース"が原因で、長年昏睡状態が続いていた男性・飛田。45年ぶりに突然目覚めたため、心は少年のままの64歳の男という特殊な設定の飛田を、寺尾は無垢な表情とキラキラと輝く瞳で演じる。普段の演技よりも高い声と軽やかなセリフ回しで、飛田の心と体のギャップを表現した。

そんな飛田を受け止め、寄り添う看護師・神谷役の岡田は、実に表情豊か。彼に冷たく当たる先輩・櫻井への不満を解消するために昏睡状態の飛田にいたずらするシーンでの無邪気な笑顔や、「飛田にだけ本心を明かせる」と告白する場面での愛情がこもったまなざしなどは、観る者の心を温かくしてくれるはずだ。

■有村架純と松坂桃李の共演で物語はより味わい深く

触れ合いの多い神谷の看護が功を奏したのか、飛田が奇跡的に意識を取り戻し、2人は年齢も立場も超えた信頼と友情で結ばれていく。彼らを結びつけていく要因でもある櫻井を演じる有村は、いつもの癒やし系オーラを完全封印。自分の仕事に誇りを持つがゆえに、医師になれなかったから看護師として働く道を選んだ神谷に対し、とげとげしい態度を取る先輩を好演している。

また、飛田と神谷が外出許可を得て、チキンレースの相手・コージと、彼と奪い合った女性・真理の消息を探す中で、2人が出会うのが、古き良き時代の不良に憧れている地元のキャバクラ店店長・井口弘樹だ。井口を演じる松坂桃李は、オールバックのヘアスタイルにサングラス、白のスーツという姿で登場。愛車のボンネットを無遠慮に叩く神谷のことを巻き舌で脅すという初登場のシーンでは、松坂だとは気づかない人も多いはず。飛田が憧れていた伝説の不良だったことを知った際の笑顔と、神谷に絡む際の威嚇の表情のギャップも魅力的だ。

驚異的な回復を遂げるなかで、身寄りのない自分の医療費をコージと真理が支払ってくれていたことを知った飛田。ドラマ後半では、そのお礼を直接伝えるために神谷は飛田を病院から連れ出し、飛田の失われた青春を取り戻す旅に出るというロードムービー的な物語が展開していく。

中身が19歳の64歳男性患者と2７歳の青年看護師。1日の大半を病院で過ごすという以外はほとんど共通点のない2人が友情を育み、いつしかかけがえのない親友として認め合う過程を笑いと涙でつづった感動ドラマ。寺尾と岡田の小気味よい掛け合いを楽しみながら、彼らがたどる未来の行く末を見守ってほしい。

文＝中村実香