「わたしの完璧な秘書」に並ぶイ・ジュニョクのハマり役！40代ならではの渋みと軽薄さがたまらない愛されキャラ「私たちのドンジェ」とは？

約9年ぶりのラブコメ主演作「わたしの完璧な秘書」でのスマートな秘書役が評判を呼び、3月に41歳を迎えた今まさに人気を再燃させているイ・ジュニョク。同年代の相手役ハン・ジミンとの"大人ロマンス"にドはまりする女性ファンも急増中で、バンコクを皮切りに、6月14日(土)開催の東京公演を含むアジア5都市での初のファンミーティングツアーも控えるなど、その人気は未だ盛り上がりを見せている。

■「わたしの完璧な秘書」とは一変！愛すべき"小物感"がクセになる"私たちのドンジェ"ことソ・ドンジェの魅力とは？

「わたしの完璧な秘書」では、ビジュアルはもちろん、仕事も家事も育児も女性のエスコートまで完璧な、知的で洗練されたウノを演じたジュニョク。だが、これまでのキャリアでは、主人公の恋のライバルを演じた「彼らが生きる世界」(2008年)や、誤った選択で悪人に変わっていく中尉を演じた映画「神と共に」シリーズ、20㎏増量して汚職刑事に扮した「犯罪都市 NO WAY OUT」(2023年)など、陰のあるキャラや敵役も多い。中でも"当たり役"と言われるのが、サスペンス・スリラー「秘密の森～深い闇の向こうに～」(2017年)の悪徳検事ソ・ドンジェだ。

「百想(ペクサン)芸術大賞」のドラマ大賞を受賞するなど高い評価を受け、2020年には続編も作られた「秘密の森」で演じたのは、地方大学出身の学歴に劣等感を抱く叩き上げの検事・ドンジェ。見た目はスーツの似合うイケメンだが、中身は状況に応じて立ち回る"機会主義者"というギャップが彼の魅力で、ついにはドンジェを主人公にした公式スピンオフ作品まで作られた。そのスピンオフ作品「良いが悪い、ドンジェ」(2024年)が5月30日(金)より衛星劇場にて日本初放送される。

人一倍強い出世欲を持ちながらも昇進に失敗したドンジェは、地方検察庁で冴えない日々を送っていた。ある日、一件の交通事故調査を担当することになったドンジェは小さな違和感から、事故の裏に隠された詐欺事件、さらには殺人事件まで掘り当ててしまう。そんな彼の前に現れるのが、金のためなら殺人をも厭わない冷酷な敵ナム・ワンソン(パク・ソンウン)。ドンジェは過去のしがらみと向き合いながら、一見単純な事件の背後に隠された巨大な悪と対峙していく。

「秘密の森」では悪徳検事でありながらも、その愛すべき軽薄さから"私たちのドンジェ"と呼ばれ人気を集めたイ・ジュニョクのハマり役。スピンオフの今作でも、思わずニヤリとさせられるセルフオマージュ描写が満載だ。

家族に昇進を約束したのに果たせなくて帰るに帰れずコンビニでカップ麺をすすったり、自分が活躍した記事をエゴサーチしたりと、端々に漂う小者感が哀愁を誘う。上司と見れば条件反射のようにゴマをすり、鎌を振りかざす殺人犯から逃げ惑うシーンで端正なビジュアルをこれでもかと崩しながら必死に応戦する姿もドンジェならではの魅力だ。

■外見は完璧な二枚目...でも内面は？そのギャップを実力派イ・ジュニョクが好演

一方で、なんの変哲もない事件の些細な違和感から驚きの新事実を掘り当てる、その頭のキレはさすが。頭の中は"正義か保身か"という小者感漂う2択でいっぱいなのに、外から見ればクールな二枚目というギャップがさらにドンジェのキャラクターをコミカルに見せている。

「秘密の森」から続く"機会主義者"ぶりはそのままに、今回はドンジェの"ギャップ"がさらにパワーアップ。ストーリーが後半に進むにつれ、ナム・ワンソンと対立する中で時折覗かせる正義感、年齢を重ねたジュニョクならではの深みのある表情など、正統派とはまた違う魅力を持った斬新な主人公像で、事件を痛快に解決へと導いていく。

ストーリーが単体として完結していて「秘密の森」を見ていなくても楽しめるのも嬉しいが、何より抜群のビジュアルを持ちながらもそれ以上に演技で見せる、実力派イ・ジュニョクならではの魅力が堪能できる快作だ。

文＝酒寄美智子