本田望結の不安と恐怖にさいなまれる演技が秀逸!続編にも期待高まるホラー映画「きさらぎ駅」

インターネットの巨大掲示板「2ちゃんねる」の投稿を発端として、今なお多くの人々を引き付ける都市伝説「きさらぎ駅」。"はすみ"と名乗る投稿者が乗った電車の様子がおかしくなり、現実にはない無人駅「きさらぎ駅」を始めとした異世界のような場所をさまようというもの。想像力をかき立てる内容も相まって、小説や漫画、ドラマなどで題材として取り上げられることもしばしばだ。

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
そして2022年、その都市伝説は「きさらぎ駅」というタイトルで、実写ホラー映画化された。主演は恒松祐里で、大学で民俗学を学ぶ堤春奈役を演じる。春奈は現代の"神隠し"とされる都市伝説を卒業論文の題材にしようと、投稿者の"はすみ"とされる女性・佐藤江梨子が演じる葉山純子を訪ね、その時の体験談を取材することに。
純子の体験談には、酔っ払いのサラリーマンや3人組の若者などが登場するが、特に注目したいのが女子高生・宮崎明日香だ。明日香を演じたのは、幼い頃から俳優やモデルとして活躍してきた本田望結。本作の製作当時、本田は18歳ということもあり、女子高生役がぴったりハマっている。これがホラー映画初挑戦となった本田は、今年6月に公開される続編「きさらぎ駅 Re:」では、同じ明日香役で主演を務めている。
続編を楽しむためにも、ここでは「きさらぎ駅」での本田の演技にスポットを当てていきたい。
■状況に合わせた演技で観る者の感情を揺さぶる本田望結

(C)2022「きさらぎ駅」製作委員会
本田が演じる明日香が最初に登場するのは、純子の体験談の中だ。
乗っている電車が普段通らないはずのトンネルを抜け、異変を感じた純子。がらんとした車内を見渡すと、サラリーマンや3人組の若者、そして明日香が眠っていた。
純子はまず、明日香を揺すり起こす。目を覚まし、電車が見慣れない場所を走っていることに気付いた明日香は、驚きと不安が入り混じった表情であたりを見回す。かすかに震える声で「どこ、ここ...」とつぶやき、すがるように慌てて携帯を開くなど、異様な状況に取り乱している様子が表情から伝わってくる。
そして到着した無人駅「きさらぎ駅」で2人は会話を交わし、純子が明日香の通う高校で教師をしていることから、その後行動を共にするようになる。体験談は純子の一人称視点の映像で進行するため、純子自身の姿や表情は見えない。そのため、明日香は次々に起こる異変や怪異に対する感情を伝える重要な役割を担っている。
木造の駅舎の壁に"何か"が現れたことに驚き怯えたり、若者たちとぶつかって倒れた純子を心配そうに覗き込んだり。そんな明日香を観ているうちに、いつしか観ている側の心にも、恐怖や不安が忍び込んでくる。状況に合わせた感情表現で観る者を揺さぶり、引き込んでいく本田の演技力は秀逸と言えるだろう。
■明日香の人としての強さも体現した本田、ラストの美しさは必見!
さまざまな怪異から逃れ、トンネルに辿り着いてからは、明日香はそれまでと違った一面も見せる。
トンネル内で奇怪な出来事が立て続けに起こり、怪我を負った純子が「逃げて」と言った時には、迷いと焦りの入り混じった表情で純子を見つめ返す。そしてトンネルを抜け、「自分に恥じる行為はするなって、いつも母が...」と語る時には、震える声で、しかしまっすぐな瞳で純子を見つめる。そこには、あどけなさがありながらも、宮崎明日香という人物の強さも垣間見える。
現実のように見えて現実ではない、「きさらぎ駅」を起点として広がるこの異世界にあって、純子と明日香は互いに相手を思いやりながら、元の世界に戻る方法を模索する。そしてその方法が見つかった時、2人の思いやりが次なる恐ろしい展開へとつながっていくことを、純子も明日香もまだ知らない...。
異世界に捕らわれ、恐怖や不安にさいなまれながらも、一方で人としての強さも持つ明日香をしっかりと体現した本田。そして、ラスト前に純子と再会した時の、風に髪を揺らす本田の姿は、若い生命力に満ち溢れていて実に美しい。そういった意味では、本作は本田の演技と魅力を堪能できる作品と言えるだろう。
本田主演の続編を見る前に、ぜひ本作でも本田の魅力を味わってほしい。
文=堀慎二郎
放送情報【スカパー!】
きさらぎ駅
放送日時2025年6月13日(金)22:05~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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