吉岡秀隆、野田洋次郎演じる逃亡犯を追う刑事を「夜の道標」で体現「自分が出ていないシーンも台本を読んで犯人に思いを巡らせていた」

第76回日本推理作家協会賞・長編部門を受賞した芦沢央の本格社会派ミステリー「夜の道標」が、吉岡秀隆主演で「連続ドラマW 夜の道標 -ある容疑者を巡る記録-」(WOWOWプライム)として連続ドラマ化され、2025年9月14日(日)よりスタートする。
1996年に起こった殺人事件の担当刑事・平良正太郎(吉岡秀隆)が、2年間逃亡する容疑者・阿久津弦(野田洋次郎)の足取り、殺人の理由を地道に捜査しながら事件の真実に迫る本格社会派ミステリー。各登場人物のバラバラに思えた点と点が容疑者を巡ってつながった時、思いもよらぬ「社会の闇」が浮き彫りとなっていく。
刑事課で窓際に追いやられ、家庭でも問題を抱える中、平良は捜査に行き詰った殺人事件を部下の若手刑事・大矢啓吾(高杉真宙)とバディを組んで迫っていく。今回、吉岡に作品に触れて感じたこと、平良をどのようにして演じ切ったのかなど、撮影の裏側や作品への思いを伺った。
――本格社会派ミステリーですが、台本を読んだときの感想を教えてください
「知ってしまった...という感じです。それはこのドラマを最後まで見ていただけたら分かる感覚だと思いますが、当時の社会情勢なども描かれた本格社会派ミステリードラマで。ただその先にきちんと刺さるものがないといけないと思いながら演じていました」
――真実をシビアに追い求める刑事ながら、奥底にあたたかみを持って事件に寄り添い続ける平良ですが、どのような人物だと感じましたか?
「彼の持つ痛みみたいなものは分からないでもなくて。年齢と共に情熱とか正義感みたいなものは摩擦によってすり減っていくものだと思いますが、それは彼にもあって、どこか疲れていると感じました。そして、一連の事件を通し、平良は家庭や社会を改めて知っていきます。特に家庭に関しては、この件を機にもう一度向き合っていこうとする平良の成長が描かれるのでそこは大事にしたいと思いました。物語を通して『平良、オマエも大変だな』という印象が強いです(笑)」

――そんな平良をどのように演じていったのでしょうか?
「演じようというより『体現させてもらう』に近い気がしました。監督をはじめスタッフやキャストの方たちと一緒に作っていくというか。演じるという意識をなくし、現場で起こる『生感』を大事にしました。特に前半は聞き込みのシーンが多いのですが、聞き込みをするシーンをやればやるほど、自分と平良が重なって現場で生まれるライブ感のようなものを感じた気がします」

――中でも印象的だったシーンを教えてください
「この物語に大きく関わっている阿久津の母親を演じた(キムラ)緑子さんとの聞き込みシーンです。最初は『お久しぶりです』なんて言ってお互いに笑っていたのですが、そこから距離を取られて...。カメラが回っていないリハーサルが始まったら、最終的に大矢刑事を演じていた(高杉)真宙くんはその迫力に負けて尻もちをついていました。それぐらい迫力があって本当に怖くて。緑子さんと対峙して、より僕らは本当に平良と大矢になれた気がしました」

――作品を撮っていく上で身も心も平良になられたんですね。そんな平良がずっと追いかけていく人物・阿久津への思いは、撮影が始まった当初といろんな聞き込みのシーンを終えた後では変わっていましたか?
「僕はこの撮影期間中、ずっと阿久津のことだけを考えていたような気がします。あまりにもその気持ちが強く、途中で阿久津演じる野田さんの曲をちょっと聴いてみたりしようとし『あぁダメだ』と思ったりして(笑)。台本を広げて僕は出ていない阿久津のシーンを読んではどのように演じているのだろうと、常に阿久津に思いを巡らせ、気持ちは共にありました。最終的に、僕と大矢は車の中から阿久津を見つけるのですが、あのときはやっと見つけたぞという気持ちになりましたね。ただ撮影の合間に真宙くんとよく話していたのですが、『誰も悪くない』んですよ。それは阿久津も同じで。だからとてもつらくなりましたね」


――大矢を演じた高杉さんとのバディを組んだ感想は?
「平良は大矢とバディを組んだことで救われたと思います。大矢は自然にコミュニケーションを取ってくれて、そして平良のことをいつも信じてくれる存在です。それもすごく大事で。情熱を持って事件を追いかける大矢と一緒に行動することで、平良も仕事への情熱を取り戻せたと思います。現場では真宙くんとはなんとなくいつもそばにいました。他愛のない話をしたり、僕がぼそっとセリフをつぶやくとその後に真宙くんもセリフをつぶやいて。リハーサルじゃないですが、会話の延長でそのようなことができていたのも大事な時間でした。初対面でしたが本当にいい方だなと思いました」

――殺人犯を追っていくことで社会問題が浮き彫りになっていく物語ですが、吉岡さんが改めて感じたことを教えてください
「最初に感じた『知ってしまった』という気持ちを持ちつつ撮影に臨む中で、見てくださる方には『その先を考えて欲しい』という気持ちを持ちました。だからこそ、今回は作為的に役を演じるというより、平良という役を体現しながら物語を紡いでいったのだと思います。平良や阿久津が感じていた孤独みたいなものは、きっと多くの人が感じていることと同じ。そこに共鳴して、その先にある部分をみんなで考えることができたらいいなと思います」

撮影=山田大輔 取材・文=玉置晴子
スタイリスト=椎名倉平(ONWA) ヘアメーク=井手奈津子 衣装協力=LION HEART
放送情報【スカパー!】
連続ドラマW 夜の道標-ある容疑者を巡る記録-
放送日時: 2025年9月14日(日)22:00~
チャンネル: WOWOWプライム
※全5話 ※毎週(日)22:00放送 ※第1話無料放送
出演=吉岡秀隆、野田洋次郎、瀧内公美、高杉真宙/小谷興会、小林優仁、吉岡睦雄/映美くらら、朝倉あき、坂元愛登、宇野祥平/和田正人、キムラ緑子
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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