広瀬すずが繊細に映し出す"心が溶けていく過程"が胸を打つ――當真あみの瑞々しい演技も光る「水は海に向かって流れる」
2025年も主演のドラマや映画が立て続けに放送・公開され、目覚ましい活躍を見せた俳優・広瀬すず。7月期に當真あみの主演で放送されたドラマ「ちはやふる-めぐり-」では、瑞沢高校かるた部のOBとして綾瀬千早役で出演。2016年の「ちはやふる」は広瀬にとって映画単独初主演作だったこともあり、続編である「ちはやふる-めぐり-」への出演は大きな話題となった。
そんな広瀬と當真が2023年に共演したのが映画「水は海に向かって流れる」だ。本作は広瀬が主演を務め、當真にとっては長編実写映画初出演作となった。原作は田島列島による同名漫画で、「そして、バトンは渡された」の前田哲が監督を務めた。
(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社
高校生の熊沢直達(大西利空)は、自宅から高校までの通学時間が長いため、叔父の歌川茂道(高良健吾)の家に居候することに。しかし引っ越しの日にどしゃぶりの雨の中、直達を駅まで迎えに来たのは茂道ではなく、大人の女性だった。彼女は26歳のOL・榊千紗(広瀬)。そして案内されたのは、叔父だけが住む家ではなく、茂道と千紗、女装の占い師・泉谷颯(戸塚純貴)、海外を放浪する大学教授・成瀬賢三(生瀬勝久)と、個性豊かな顔ぶれの揃うシェアハウス。戸惑いながらもシェアハウスで暮らし始め、猫のミスタームーンライトが家族に加わったり、高校の同級生で颯の妹でもある楓(當真あみ)との交流も深くなったりと、賑やかな日々にも慣れてきた直達。そんな中、千紗と直達には過去に"ある因縁"があり、千紗はそのことをきっかけに「恋愛はしない」と心を閉ざしていることを知る...。
■少しずつ溶けて動き出す心...千紗の変化を丁寧に描き出す広瀬すず
(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社
広瀬は冒頭から、クールな表情で千紗を演じている。笑顔をほとんど見せず、感情の起伏もあまりない姿からは、千紗が過去の出来事に縛られて心を閉ざしていることがうかがえる。そんな千紗の心の傷や諦めを、広瀬は抑制の効いた演技で表現。そして、直達との関わりの中で硬く閉ざされた心が少しずつほどけ、前に進んでいく千紗の内面の揺れ動きもナチュラルに描き出している。
千紗と直達は年の差10歳。千紗が心を閉ざし、もうすでに諦めのついている"とある出来事"についても、直達からすれば青天の霹靂(へきれき)のような事実。千紗に「直達くんはもう気にしないで。直達くんがいい子にしていれば余計な波風は立たない」と言われても「いい子じゃなくていいから、半分持ちたいです」と、真っ向からその出来事を受け止めようとする。そんな直達の青さゆえの真っすぐさが、傷を受けて16歳のまま止まっていた千紗の心を、少しずつ溶かし、動かしていくのだ。
思えば千紗は、冒頭から不愛想ではあるが、決して冷たい人間ではない。どしゃぶりの雨の中、駅まで直達を迎えに行き、初対面の直達に手料理の"ポトラッチ丼"を作ってあげる。自分と直達との因縁について、シェアハウスの住人・賢三に打ち明けた時には、賢三から「変ないじわるして追い出せば?」と助言されるが、もちろんそんなことはしない。「あの子はいい子だよ、大体、子供には関係ないじゃない」と、直達を責めたり否定したりすることはない。そんな千紗のクールさの中にある優しさを広瀬は絶妙な塩梅(あんばい)で表現しており、不愛想なだけではない魅力的な女性として描かれている。
■淡い恋心を抱く女子高生・楓をフレッシュに演じた當真あみ
(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社
直達の同級生・楓を演じた當真は、本作で長編実写映画に初出演を果たした。だからこそのフレッシュな演技が作品の中で生きており、等身大の女子高生を瑞々しく演じている。直達への淡い恋心をセリフだけではなく目の表情で表し、千紗をライバル視して動揺する楓の心情を丁寧に演じた當真の好演もさまざまなシーンで光る。特に千紗に気持ちをぶつけるシーンでの、真っすぐな演技には注目だ。
年の差10歳の2人が、シェアハウスでの出会いをきっかけに交流し、傷ついた心を少しずつ、少しずつ溶かしていく温かな物語。千紗と直達、楓、そして賑やかなシェアハウスの住人たちを見守るような気持ちで楽しんでいただきたい一作だ。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
水は海に向かって流れる
放送日時:2026年2月17日(火)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
出演:広瀬すず/大西利空 高良健吾 戸塚純貴 當真あみ/勝村政信 北村有起哉 坂井真紀 生瀬勝久
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