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柄本佑×安藤サクラが魅せる禁断の愛――中村梅雀主演、藤沢周平原作「橋ものがたり『殺すな』」

2026/03/19

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映画化もされた『たそがれ清兵衛』や『蟬しぐれ』など、多くの時代小説を残した作家・藤沢周平。江戸に暮らす人々が行き交う「橋」をテーマに、人々の悲喜こもごもを描いた連作短篇集『橋ものがたり』は、収録作の多くが映像化されたことでも知られている。中でも、時代劇映画の名匠・井上昭監督が映像化を熱望していたという「殺すな」は、中村梅雀が主演を務めるほか、柄本佑と安藤サクラという芸能界きっての仲良し夫婦が、駆け落ちしてきた男女を熱演したことでも話題を呼んだ。

江戸の裏長屋で、筆づくりの内職をして糊口をしのぐ浪人・小谷善左エ門(中村梅雀)は、同じ長屋に住む船頭の吉蔵(柄本)から、一緒に暮らすお峯(安藤)の様子を見張るように頼まれていた。元は船宿の女将と抱え船頭という関係だった2人だが、密通のうえ駆け落ち。お峯の夫・利兵衛(本田博太郎)の命を受けた追っ手から隠れるように、つつましやかな暮らしを始めるも、華やかな生活を送ってきたお峯は、退屈な日々に虚しさを感じ始める...。

■中村梅雀、柄本佑、安藤サクラ――三者三様の名演が光る人間ドラマ

中村梅雀、柄本佑、安藤サクラの名演で織りなされる人間ドラマ
中村梅雀、柄本佑、安藤サクラの名演で織りなされる人間ドラマ

訳ありの男女と、彼らを見守る浪人の交流を描いた本作。柄本が演じているのが、愛する女性との生活を守るために必死に働きながらも、いつか自分の元から去っていくのではないかという不安をいつも抱えている青年・吉蔵だ。橋のたもとにある地蔵に手を合わせる度に、川向こうにあるにぎやかな町へと懐かしそうな視線を送るお峯に対し、「橋を渡っちゃいけねえ。川向こうなんぞ、行っちゃいけねぇ」と釘をさす。その時に柄本が浮かべる切羽詰まった余裕のない表情からは、吉蔵がどれほどお峯を愛し、彼女を手放したくないと思っているかが、ひしひしと伝わってくる。

そして、年の離れた夫を捨て、吉蔵と暮らすことを選んだお峯を演じるのが安藤。普段は清楚な雰囲気の美女だが、その本性は奔放な魔性の女という役柄を熱演している。中でも、お峯の回想シーンに登場する吉蔵と彼女の逢瀬は、大人の色香を放っている。吉蔵の商売道具でもある小舟に彼を横たわらせ、その上から覆い被さるようにして愛しい人を貪るお峯。さらに、駆け落ちを持ちかけても「バレて捕まったら、えらいことになるぜ」と尻込みする吉蔵に対し、「それじゃあ、会うのをやめるかい?」と、吉蔵も自分もそんなことはできないとわかっていながら口に出す。「それはできない」とでも言うように自分を抱き寄せ、熱いまなざしを送ってくる吉蔵に、「あたし達はもう離れられっこないんだから」と甘く囁くシーンは、誰もが見惚れることだろう。

善左エ門という相談相手を得て、ようやく手に入れた大切な愛を宝物のようにしまい込みながら日々を過ごす吉蔵とお峯。しかしある日、吉蔵がお峯の夫・利兵衛と偶然出会ったことから、彼らの関係は少しずつ綻びを見せていく。

吉蔵は利兵衛に杖で打ち据えられてけがをしただけでなく、船頭の職まで失う。お峯の元には利兵衛が営む船宿の手下たちが押し寄せ、彼女を強引に連れ帰ろうとして騒ぎを起こす。そろそろ潮時だと感じていたお峯は、ついに橋を渡ることを決意するのだった。

クライマックスでは、背中や足元だけでお峯の感情を表現する安藤の静の演技と、愛する女性を失いたくない一心でその名を叫ぶ柄本の情熱的な芝居、そして吉蔵の心に必死に寄り添う梅雀の慈愛に満ちた演技と、日本演劇界に名を刻む実力者たちの演技合戦を堪能できる。彼らの名演に注目しながら、タイトルに込められた思いが明かされるエンディングシーンを見届けてほしい。

文=中村実香

放送情報【スカパー!】

橋ものがたり「殺すな」
放送日時:2026年3月22日(日)4:35~
チャンネル:WOWOWシネマ(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

詳しくは
こちら

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