小泉今日子×満島ひかりの息ぴったりな名演で"冤罪と復讐"をコミカルに描く!宮藤官九郎脚本「監獄のお姫さま」
「池袋ウエストゲートパーク」や「木更津キャッツアイ」、「ごめんね青春!」、近年では「不適切にもほどがある!」など、これまでに数え切れないほどの傑作を生みだしてきたヒットメーカー・宮藤官九郎。独自の世界観の中で繰り広げられる緻密に構成されたストーリーと、随所に散りばめられたテンポの良いコミカルな掛け合い。彼の脚本は、多くの人の心を鷲掴みにしてきた。
そんな宮藤が2017年に手掛けたのがドラマ「監獄のお姫さま」だ。主演の小泉今日子を始め、満島ひかりや伊勢谷友介、塚本高史など過去にも宮藤脚本作品に出演経験のある俳優陣や、コミカルな演技でも真価を発揮する菅野美穂、夏帆、坂井真紀、森下愛子の面々に、当時デビューからまだ2年ほどだった頃の神尾楓珠など、今振り返っても楽しいキャスト陣が顔を揃えた。
「EDOミルク」のイケメン社長としてメディアにも出演し、人気を集める板橋吾郎(伊勢谷)は、クリスマスイブの日も生放送のテレビ番組にゲスト出演するため、テレビ局に向かった。しかし収録中、ADが出したカンペに「息子さんを誘拐しました」と書かれているのを目にして驚愕。すぐさま妻の晴海(乙葉)に電話をかけると、息子・勇介(前田虎徹)と一緒にいると言われ、"何事もなかった"と安心したのも束の間、その後すぐに秘書を通して勇介がやはり誘拐されたと連絡が入る。犯人の要求は"今すぐ警察に通報すること"と"吾郎が自らの罪をすべて白状すること"。しかし吾郎は受け入れず、金で解決しようと金策に走る。
ほどなくして、吾郎は犯人グループの罠にかかり、拉致されてしまうのだった。そこで犯人として姿を現したのは、その日の番組でも共演していたカリスマ経済アナリスト・勝田千夏(菅野)やADとして現場にいた馬場カヨ(小泉)、知り合いの資産家・足立明美(森下)、会員制バーのバーテンダー・大門洋子(坂井)ら元受刑者の4人。そしてなんと吾郎の秘書"古井わかば"こと、元刑務官の若井ふたば(満島)の姿まで。困惑する吾郎を前に彼女たちは、かつて刑務所でともに生活し、今も服役中だという"姫"という女性の話を始める。彼女たちが姫と呼んでいるのは、吾郎のかつての婚約者・江戸川しのぶ(夏帆)だった...。
■受刑者と刑務官に絆が生まれた時、復讐劇が動き出す...息ぴったりな芝居で魅せた小泉今日子、満島ひかり

カヨたちの刑務所での共同生活を振り返りながら、彼女たちが誘拐計画を企てた理由や、それぞれが出所して再会し、実行に移すまでを描く同作。誘拐という大それたことをしながらも、開始早々ハプニングが起こったり、どこか詰めが甘かったりと、彼女たちはドタバタ騒ぎ。軽妙な掛け合いに一瞬で引き込まれるのが、さすが宮藤脚本と言える。
主演の小泉が演じているのは、夫をナイフで刺し、殺人未遂罪で服役することになったカヨ。しかし彼女はそんな恐ろしい事件を起こしたとは思えないほど、 "普通のおばちゃん"なのだ。どこかポンコツで不器用で、刑務所に来たばかりの時から必死にルールについていこうとするもトラブル続き。ふたばからは"問題行動ばかり"と叱られる始末だ。有名人ゆえに刑務所内でも少し次元の違う存在である千夏に気やすく話しかけて目をつけられたり、空気が読めないゆえに同部屋の"姉御"こと明美たちと揉めたりすることも...。
そんなカヨを小泉が人間臭さ全開で好演している。本来の小泉と言えば、トップアイドルとして、そして俳優としてずっとスター性を背負ってきただけあって、眩い存在感を放つ。しかしカヨを演じる時にはそれらを一切封印して、生活感さえにじみ出ているのだから、すごい。見栄を張ったり、感情的になったり、息子を思うがゆえに干渉して少しうっとおしがられたりと、等身大で、どこか抜けていて、だけどいつもまっすぐだから憎めない。
一方でカヨのお節介さは時に周囲の心を掴み、時に誰かを救う。だからこそ千夏、明美、洋子も、しのぶを助けたいというカヨに賛同していくわけだ。

刑務官のふたばもそのうちの1人。受刑者たちを厳しく指導するふたばは、物語序盤では"鬼刑務官"という言葉がぴったりな印象の人物。しかし、そんな彼女がいかにして、出所した後のカヨたちの計画に手を貸すことになるのか。その過程を満島が細やかに映し出している。
当初は受刑者たちの些細な行動にも「調査するよ」「懲罰されたいのか」と言い放っていたふたばも、カヨの良い意味で空気を読まずに誰とでも同じ温度感で話すところや、不器用なくせにお節介であたふたしている姿に心を開いていく。ドスの効いた声と鋭いまなざしから一変、柔らかい空気を纏い、雑談なんてしながらクシャっとした笑顔を見せる瞬間には、思わず心が緩む。ふたばの厳かさと時折顔を出すコミカルさ、可愛らしさ、そしてしのぶを助けたいという気持ちが芽生えてからの葛藤まで、一言では語りきれないふたばの多面性と複雑な心情の変化を繊細に表現した満島の芝居にも注目してほしい。

刑務所という閉鎖的な空間を舞台にしながらも、物語が終始明るくクスっと笑えるのは、宮藤脚本の妙でもあり、キャスト陣の演技が成せる技でもある。コメディでありながら、根底にあるのは"冤罪と復讐"という重いテーマ。それを重すぎず、しかし軽んじすぎずに絶妙なバランスで痛快に描き出している。刑務所にたどり着くことになった不器用な人間たちの悲喜こもごもを明るく、そして深く届ける傑作群像劇だ。
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
監獄のお姫さま
放送日時:2026年5月16日(土)14:00~ [全話一挙放送]
チャンネル:TBSチャンネル2 名作ドラマ・スポーツ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
出演:小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介、夏帆、塚本高史、猫背椿、乙葉、神尾楓珠、池田成志、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂 ほか
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