浅野忠信が「刑事ゆがみ」で演じた"適当刑事"の面白さ 神木隆之介とのバディに光る人間味
2025年、ドラマ「SHOGUN 将軍」で第82回ゴールデングローブ賞の助演男優賞に輝いた浅野忠信。国内外の映画でキャリアを重ね、近年は海外のドラマでも活躍する浅野だが、2017年には「刑事ゆがみ」で民放連続ドラマ初主演を果たしている。同作で扮(ふん)したのは、名前からして一風変わった刑事・弓神適当。事件には誰よりもしつこく食い下がる一方、日常ではいい加減な態度ばかり取る男だ。
井浦秀夫の漫画を原作とする「刑事ゆがみ」は、うきよ署強行犯係の弓神と、彼の相棒に任命された若手刑事・羽生虎夫(神木隆之介)が事件の真相を追う物語。羽生は正義感が強く、仕事にも熱心だが、早く出世したいという野心も隠していない。規則を守ろうとする羽生にとって、勝手な行動を繰り返す弓神は悩みの種。2人の捜査はしばしば衝突から始まり、それぞれのやり方で事件の関係者に接近していく。
©井浦秀夫/小学館©フジテレビジョン
弓神は遅刻の常習犯で、好きな競走馬の引退を知って落ち込むほどの競馬好き。後輩の羽生をからかってはその反応を楽しみ、上司の菅能理香(稲森いずみ)からも手を焼かれている。浅野は、気の抜けた口調やいたずらっぽい表情で、そんな弓神の大人げなさを軽やかに演じている。映画「私の男」などで見せてきた緊張感のある役柄とは違い、気さくで悪ふざけの好きな中年男性としての顔が強く出ている。
一方、事件となると弓神はわずかな違和感も見逃さない。第1話では、歩道橋の下で発見された女子大生の死に疑問を抱き、羽生を巻き込んで独自に捜査を開始する。ハッカーのヒズミ(山本美月)から情報を得ながら、被害者の友人や事件の関係者を訪ね、真相を探っていく。普段の気の抜けた振る舞いは捜査中も変わらないが、人の話を聞く表情には時折、鋭さがのぞく。浅野は、ひょうひょうとした態度と真剣な眼差しを自然に行き来し、弓神の刑事としての優秀さを表現している。
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もっとも、弓神の捜査は決して模範的なものではない。疑問があれば上司の指示を待たずに動き、時には違法な手段に踏み込むことさえある。ただ、その行動は単なる身勝手さから来るものではない。周囲の見立てに流されず、事件に関わった人々がどのような事情を抱えているのかを確かめようとする。規則には無頓着でも、相手の肩書や表面的な印象だけで判断することはない。こうした振る舞いから、弓神なりの刑事としての信念が見えてくる。
そんな弓神に振り回される羽生を演じるのが神木隆之介。真面目で出世欲の強い羽生は、弓神の勝手な行動に苛立ち、遠慮なく言い返す。第2話では、事件現場の検証で実験台にされた羽生が、仕返しに弓神を蹴る場面も。浅野のひょうひょうとした態度に神木がむきになって応じる様子は、2人の遠慮のない関係をよく表している。ただ、こうしたやり取りを重ねるうちに、羽生の弓神に対する見方も少しずつ変わっていく。第3話では、羽生が尊敬する元警察官・真下誠(寺脇康文)が何者かに襲われ、2人で事件を捜査。弓神の仕事ぶりを間近で見る中で、羽生は厄介な先輩の刑事としての能力を認めていく。
©井浦秀夫/小学館©フジテレビジョン
さらに、第6話では、新田真剣佑(現・前田真剣佑)が演じる青年実業家・貝取勝平への傷害事件を捜査する。貝取の過去の行動によって傷ついた家族の事情が明らかになる中、弓神も普段は抑えている感情をあらわにしていく。普段のひょうひょうとした姿との落差も大きく、浅野の演技の振れ幅がよくわかるエピソードだ。
上司の菅能に叱られ、羽生に言い返されても、どこ吹く風。それでいて、誰も気づかなかった点から事件を動かしてしまう。浅野の弓神には、頼りなさと頼もしさが同時にある。放送では、神木隆之介とのやり取りはもちろん、ふと真顔になる瞬間や、事件の関係者に向ける眼差しまで確かめてみてほしい。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
刑事ゆがみ ※一挙放送
放送日時:2026年11月12日(木)25:20~ほか
チャンネル:ファミリー劇場(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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