鈴木亮平が「とっつぁん」こと銭形警部に！？日テレ×ＷＯＷＯＷ×Hulu共同製作ドラマ　 銭形警部

1967年にモンキー・パンチ原作のコミック「ルパン三世」が誕生してから50周年という節目の年を迎えた2017年。人気キャラクター「銭形幸一」を主人公としたドラマ「銭形警部」が製作された。主人公の銭形警部を演じるのは、憑依型の役作りが高く評価される鈴木亮平。

「HK　変態仮面」「俺物語！！」など、数々のコミックスの実写化作品で、原作ファンをもうならせるほどに、見事な役作りを行ってきた彼だが、そんな彼をもってしても、多くの人に愛される銭形警部役はプレッシャーだったという。そんな彼が役作りへのアプローチの足がかりとしたのは「声」だった。「銭形の特徴は声」と語る鈴木は、銭形警部のトレードマークとなる、ベージュのトレンチコートにソフト帽、がに股歩きといった外見的特徴はもちろんのこと、アニメ版で知られる、あの特徴的なダミ声も完全再現することを決意。多くの観客の脳裏に焼き付いている、納谷悟朗、山寺宏一ら銭形役を務めた歴代のアニメ版声優たちの声を徹底的に研究し、その演技に落とし込んだ。荒唐無稽な活劇でありながらも、"現実社会に銭形警部がいたら"という命題を見事に体現した役作りを行っている。

今回のドラマは、日本テレビ、ＷＯＷＯＷ、Huluの3社共同制作作品。地上波放送・衛星放送・動画配信サービスの3者が、その垣根を越えてタッグを組むのは初のこととなる。ルパン逮捕のために世界中を駆けずりまわっている銭形警部が、その合間で日本に戻り、そこで起こったさまざまな事件に直面、解決に向けて奮闘する姿を描き出す。この基本フォーマットはどのエピソードでも一緒であるが、それぞれの媒体に合わせて、物語や音楽などのテイストを少しずつ変えてきている。まずは日本テレビで、エンターテイメント性あふれるファミリー向けの2時間ドラマ「銭形警部」を放送したのちに、Huluではコミカルさを押し出した若者向け内容の「銭形警部 真紅の捜査ファイル」を4話連続で、そしてＷＯＷＯＷではハードボイルドで骨太な内容の「銭形警部 漆黒の犯罪ファイル」を4話連続でそれぞれ放送・配信が行われた。そこの違いを見比べてみても面白い。

冒頭は、大野雄二作曲の音楽「銭形マーチ」に合わせて、ルパン三世役の栗田貫一の「このとっつぁんがルパンを追いかけてない時、何をしているかは知らないだろ。どうやらいろんな事件をズバッと解決しているらしいぜ。そんじゃお見せしましょうか。これはルパン三世、永遠のライバル、愛すべき銭形警部の物語だ」というナレーションから始まる。また、爆弾犯役としてアニメ版声優の山寺宏一がキャスティングされるなど、アニメ版へのオマージュも存分に織り込まれており、それらを見つけるのも楽しい。

物語もバラエティーに富んでいて見応えがある。銭形の大学時代に育まれた先輩との友情、ルパン逮捕に執念を燃やすことへの代償として別れることとなったかつての恋人との再会など、これまであまり深く掘り下げられることのなかった銭形警部の、知られざる一面が垣間見えるのが興味深い。頑固一徹、空気を読まずに突き進む銭形のような男は上司からは煙たがれる存在だが、悪を決して許さず、人々のしあわせを第一に考える。銭形のような男が現実世界にいてくれたら、と思わせてくれるような魅力がここにはある。

銭形警部といえば、神出鬼没の大泥棒ルパン三世の逮捕に執念を燃やす猪突猛進の性格でありながらも、いつもギリギリのところでドジを踏んでばかりで、ルパンに逃げられてしまうというイメージが強い。本ドラマでも、捜査一課係長の設楽(袴田吉彦)からの「聞くところによると、毎回、ドジを踏んではルパンに逃げられているそうじゃないか」という嫌味に対して、「いやぁ、否定はいたしません。ルパンはそれだけ手強い相手ですから」と豪快に笑いとばしてみせるシーンがあったほどだ。だがこのドラマを観ると、観察眼、推理能力が非常に高く、数々の難事件を解決していく銭形という人物は、実は優秀な熱血刑事なのである、ということを再確認させられることとなるはずだ。

文＝壬生智裕