メインコンテンツに移動

2022/08/05

人気絶頂期のジュリーこと沢田研二、映画『太陽を盗んだ男』で見せた俳優としての多才ぶりとは

この記事を共有する

圧倒的な歌唱力と端正なビジュアル、そして常に最先端のエンターテイメントを追求しようとする貪欲な姿勢で、1970~80年代の日本芸能界に君臨した沢田研二。スーパースターの称号に相応しい歌手である一方で、テレビドラマや映画、舞台に精力的に出演するなど、俳優としても活躍。2020年3月に死去した志村けんの代役で出演した「キネマの神様」に続き、2022年11月公開予定の映画『土を喰らう十二ヵ月』でも主人公・ツトム役を演じるなど、その唯一無二の存在感は衰え知らず。そんな彼の代表作のひとつとして必ず挙げられるのが1979年公開の映画『太陽を盗んだ男』だ。

沢田が演じるのは、冴えない中学理科教師・城戸誠。日頃は、生徒と共に遅刻したり授業中にガムを噛んだりと無気力ぶりを発揮していたが、ある日、学校行事で出かけた際に生徒と共にバスジャック事件に巻き込まれてしまう。丸の内警察署捜査一課の山下警部(菅原文太)の献身的な仕事ぶりによって生徒ともども無事救出された城戸は、その事件を機に変貌。茨城県東海村の原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、独力で原爆の製造をしてしまう。思いつきで警察に脅迫電話をかけ、プロ野球のテレビ中継を延長させることに成功した城戸は、「ザ・ローリング・ストーンズの来日公演を実現しろ」「5億円をよこせ」と、次第に要求をエスカレートさせていく。そんな中で、山下警部は城戸とは知らずに、犯人を追い続ける......。

『太陽を盗んだ男』に出演する沢田研二
『太陽を盗んだ男』に出演する沢田研二

(C)1979 東宝/フィルムリンク・インターナショナル

1977年リリースの「勝手にしやがれ」で第19回日本レコード大賞・大賞に輝き、その後も「サムライ」「ダーリング」「カサブランカ・ダンディ」と息つく間もなくヒット曲を飛ばし続けていた沢田。日本中にその歌声が響き渡る時代に、独力で製造した原子力爆弾を盾に社会を意のままに動かす喜びを見出していく教師を演じ、大きな話題を読んだ本作。死んだ魚のような目で日々を消化していた城戸が、バスジャック犯や山下警部が放つエネルギーに触発され、原子力爆弾製造という目的を見出し、その瞳に輝きを宿す過程を、沢田は繊細かつ自然な演技で表現。中でも、山下警部と城戸が対峙するクライマックスシーンでみせる、目まぐるしい表情の変化は圧巻のひとこと。また、30代に突入したばかりの肉体美を惜しみなく披露したシャワーシーンや、国会議事堂内に潜入するための女装姿で見せた妖艶な美貌なども必見だ。

城戸を追い続ける山下警部役の菅原文太は熱演と呼ぶにふさわしい迫力で、人々を守る熱血刑事を体現。城戸と心を通わせるラジオDJ・ゼロこと沢井零子を演じる池上季実子のまばゆいばかりの美しさや、風間杜夫、西田敏行、水谷豊らによる、端役ながら印象的な演技も見逃せない。

1976年のデビュー作「青春の殺人者」がいきなりキネマ旬報ベスト・テン第1位に選出された長谷川和彦監督による、壮大な娯楽活劇。日本映画ファンの間で、その痛快さや圧倒的な熱量が語り継がれている伝説的作品に刻まれた、沢田研二の多才ぶりを堪能して欲しい。

文=中村実香

放送情報

太陽を盗んだ男
放送日時:2022年8月17日(水)13:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます

関連人物から番組を探す

関連ワード

映画の記事・インタビュー

more