松たか子の魅力が凝縮！坂元裕二脚本の「いびつさ」が愛おしい「大豆田とわ子」のクセになる魅力

1990年代を代表するドラマ「東京ラブストーリー」(1991年)を筆頭に、数々のドラマをヒットに導いてきた脚本家・坂元裕二。オリジナル脚本による映画『花束みたいな恋をした』(2021年)に代表されるように、独特のセリフ回しによって紡がれる会話劇が魅力の坂元作品だが、作品の世界観にマッチした主題歌やテーマ曲が話題に上がることもしばしば。

現在放送中の最新脚本ドラマ「初恋の悪魔」でも、ジャズバンドのSOIL＆"PIMP"SESSIONSによる書き下ろしのテーマ曲が大いに話題を集めているが、様々な仕掛けを取り入れた主題歌「Presence」が注目を集めた「大豆田とわ子と三人の元夫」も、いつまでも記憶に残る名ドラマだ。

9月5日(月)よりフジテレビTWOにて放送される「大豆田とわ子と三人の元夫」は、松たか子が演じるバツ3の女性社長を主人公に、彼女と3人の元夫たちとの割り切れない関係性や人生の機微を、どこか切なくもコミカルに紡ぎ出したロマンティックコメディ。

松をはじめ、元夫たちを演じた松田龍平、角田晃広(東京03)、岡田将生の個性を存分に引き出した脚本・演出はもちろん、音楽に至るまですべてが作用しあったハイレベルな作品は、SNS等での反響も大きく、最近でも「第59回ギャラクシー賞(テレビ部門)」優秀賞の受賞が注目を集めたばかりだ。

主人公・大豆田とわ子を演じているのが、同じ坂元脚本である「カルテット」(2017年)以来4年ぶりの連続ドラマ主演となる松たか子。3回結婚して3回離婚しているというバツ3の女性で、最初の夫・田中八作(松田龍平)との間に生まれた中学3年生の娘・唄と2人暮らし中。建設会社「しろくまハウジング」の社長に就任したばかりで、忙しい日々を送るキャリアウーマンだが、しっかりしているようでどこか抜けているお茶目なキャラクターだ。

充実したキャリアを築きながらも、子どもが独立した後1人で生きることに寂しさを覚えることもあるとわ子。そうした彼女の複雑な胸中を、松はハイテンションな振る舞いや、せかせかとした独特の早口、時に物憂げな表情など、多彩なバリエーションで表現した。

元夫たちが持ち込むトラブルにイライラを募らせるも、切り捨てることもできず、なんやかんやと腐れ縁を続けてしまう。とわ子はある意味、面倒くさい"こじらせ系"ではあるが、松のチャーミングな演技によって親近感は倍増し、抜群に魅力的なキャラクターだった。

松は、主題歌「Presence」でもメインボーカルとして存在感を発揮。作編曲・楽曲プロデュースを担当した、トラックメーカー・MPCプレイヤーであるSTUTSによるメロウな楽曲との相性は絶妙で、コーラスとして参加した"3exes(3人の元夫)"と名乗る角田晃広、岡田将生、松田龍平とのコラボも、ドラマファンを歓喜させる楽しいサプライズだった。

また、KID FRESINO、BIM、NENE、DaichiYamamoto、T-Pablowをフィーチャリングに迎え、I～Vまでバージョン違いが制作されたことでも注目を集めた「Presence」。その週のストーリーに沿って、エンディングに流れるバージョンが変わる仕掛けは画期的で、大いに話題となった。

そして、クセになると話題をさらったのが、伊藤沙莉が担当したナレーションだ。伊藤の特徴的なハスキーボイスで語られる、独特のワードセンスとリズミカルなナレーションは、本職のナレーターとはまた異なる趣があり、個性的な作品の世界観を形成する1つの要素として欠かせないものだった。

定石に当てはまらないようないびつさもある「大豆田とわ子と三人の元夫」。主人公のとわ子と同様に、一筋縄ではいかない人間味のあるドラマだからこそ、放送から1年以上が経った今も見直したくなるような魅力を感じるのかもしれない。

文＝HOMINIS編集部