恋も食事も肉食の川口春奈にベジタリアンの林遣都が料理を振る舞う!?もどかしい関係の2人が気になる映画『にがくてあまい』

ドラマ「初恋の悪魔」の演技が高い評価を得た林遣都と、女優としてめきめき成長している川口春奈。そんな2人のダブル主演で話題となったのがスイート＆ビターでコミカルな映画『にがくてあまい』である。原作は小林ユミヲによるWEBコミック。

林はベジタリアンでゲイの高校美術教師・渚役を、川口は広告代理店に勤める野菜嫌いのキャリアウーマン・マキ役を演じている。野菜だけで魔法がかかったように美味しい料理を作ってしまう渚と部屋は散らかり放題、職場ではエネルギー飲料で食事を済ませているマキ。ひょんなことがキッカケで2人は出会い、渚の家で奇妙な同居生活を送ることになる。マキを住まわせる条件は渚の作った料理を必ず食べること。"こんな寝ぼけた顔もこんなに怒った顔も見せちゃうの"と驚くぐらいコミカルな川口の演技、クールな中に優しさや孤独が覗く細やかな林の演技も見どころだ。

■野菜嫌いのマキを変えたのは渚のマジカルな料理

渚が名門高校の教師だと知った途端、マキは手の平返しで色気を見せるが、渚はクールで素っ気ない。隠していることがあるなら言うように迫られ、観念した渚は女性に興味がないことを打ち明ける。恋人同士ではない2人が一緒に住むことになるというシチュエーションが視聴者に"この関係性、どうなる？"と思わせる。出会ったばかりの頃にマキのために渚が作ったのが"野菜のミレットスープ"。野菜にトラウマがあるマキはスープを敵のような形相で凝視し、口を尖らせるが、仕方なく口に運ぶと、「これホントに野菜？」と驚きの表情を浮かべ、渚も満足そうにマキを見つめる。渚の家に住むようになってからは手作りのお弁当を持たされ、玄米と野菜の地味なヴィジュアルにうんざりするが、同僚に羨ましがられ、イヤイヤ食べてみたら再び目からウロコ。家に帰るとひき肉の代わりに高きびを使ったキーマカレーが夕食で、ひと口食べて目を見開くマキを見た渚にも笑みがこぼれる。ゴーヤのCM企画を任されて働きづめのマキにCMを作るならゴーヤのことを知らないとダメだと作り方を教えた"ゴーヤの冷やし茶碗蒸し"はマキが仕事を頑張るエネルギーとなった。

■積極的な川口となかなか心を開かない林の演技にキュンとする？

胃袋を掴まれて、渚との距離を縮めたいと思うようになるマキは男装してみたりするが、あっけなく撃沈。2人の関係は恋人同士でもなく、友人でもない。

ある時、仕事に疲れたマキは泥酔、「なんで、そんなに冷たいの？」と渚を半ば、押し倒して迫り、泣きじゃくるマキを困り果てながら精一杯の優しい言葉で励ます。離れて欲しいと思いながらもよしよしする渚。2人は時に親子のようにも見える。渚の元カレでインド帰りのアラタ(淵上泰史)が家に遊びに来たりと、もろもろの人生のスパイスもありつつ、いつしか2人の間には恋愛とは違う愛情が芽生えていく。親との関係がギクシャクしていて、ずっと実家(有機野菜農園を経営)に帰っていないマキと同じように家族との過去から逃げてきた渚。マキの世話を焼きながらも、自分はなかなか煮え切らない渚に想いを爆発させる川口の振り切れた演技と、その大胆な行動に度肝を抜かれる林の演技の対比も初共演とは思えないほどのコンビネーションで、笑えて心が温まってお腹も空く作品だ。

文＝山本弘子