速水もこみちが沢村一樹から3代目を襲名した浅見光彦シリーズ...「蜃気楼」では控え目ながら責任感の強い速水版・光彦を確立
ベストセラー作家・内田康夫の原作をドラマ化した旅情ミステリー「浅見光彦シリーズ」。TBS、フジテレビ、日本テレビ、テレビ東京でそれぞれ放送されているが、TBS系では初代の辰巳琢朗(※「琢」は正しくは「豕」に点が付く)に続き、第14作から第31作まで長く光彦役を務めた沢村一樹の印象が強い。3代目光彦役としてその後を引き継いだのが、速水もこみちだ。2002年に俳優デビューした速水は、2005年の日本テレビ系ドラマ「ごくせん」でブレイク。2006年公開の映画「ラフ ROUGH」では日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。同年のテレビ朝日系ドラマ「レガッタ〜君といた永遠〜」ではドラマ初主演するなど、順調にキャリアを重ねていった。2011年からは情報番組「ZIP!」での「MOCO'Sキッチン」も話題を呼んだ。
そんな速水が浅見光彦役に起用されたのは2013年。186cmの長身を生かし、アスリート役などが多かった彼だが、聡明で繊細なイメージが強い光彦役に抜擢された。そして、主演第2弾となった「蜃気楼」は「速水版光彦」の評価を高めた一作だ。
本作は北陸や京都を舞台に、光彦が「富山の薬売り」にまつわる連続殺人事件の謎に迫るストーリーで、浅見家に「富山売薬」の梶川尋助(山本圭)が訪れる場面から始まる。光彦は、雑誌「旅と歴史」から「富山の売薬さん」の特集記事を依頼されて梶川への同行取材を依頼する。富山に出向いた光彦は、漢方薬の専門知識を学ぶため、富山薬科大学の准教授・高津雅志(葛山信吾)を訪ねることに。高津は東京の薬科大学の学長の娘婿になるという。梶川と合流して漁師町を巡った光彦は、梶川が売薬さんとして非常に歓迎されていることに驚く。
だが、金沢で偶然会った旧知の和泉冴子(三浦理恵子)は梶川に不自然でそっけない態度を取る。梶川に人違いだと突き放した冴子は、恋人だと思われる男性・幹瀬由起仁(黄川田将也)と一緒だった。次に訪れた舞鶴の宿に宿泊した際、梶川は人に会うと告げて旅館を出たまま帰らなかった。翌朝、近くの神社で梶川の死体が発見される。
ショックを受けた光彦は、警察に駆け付けた梶川の孫娘・優子(渋谷飛鳥)と出会い、殺人事件の謎を追うことに。幹瀬は加賀友禅の大家・幹瀬丈一郎(綿引勝彦)の息子で、弟子入りしていた冴子に引かれて求婚していたことが分かって来る。ところが、冴子の過去を調べた丈一郎は2人の結婚を認めなかった。梶川とのつながりから冴子の秘密を探ろうと幹瀬家に接近した光彦だったが、そこで第2の殺人事件が起こってしまう。
旧知の人物で、みんなから慕われていた梶川の死に瀕し、懸命に動く光彦の真摯な姿。自分が動いたことで第2の犠牲者が生まれてしまった責任を痛感し、苦悩する様子など、速水が演じる光彦は、控え目で責任感が強く好感が持てる。歴代の光彦役は、スマートで理知的なカッコよさを感じさせたが、速水が演じる光彦はむしろ自信なさげで、腰が低い印象だ。速水が演じるなら、もっとスマートな人物像にもなりそうだが、そんな意外性が非常にいい。
冴子の過去が明らかになる後半では、意外な人物が浮かび上がって物語は一気に動き出す。前半の緩やかな展開から一転し、後半のテンポアップが心地良く、浅見光彦シリーズらしい切ない人間ドラマがラストに待ち受ける。
事件を解決しても光彦の心は晴れないが、そんな心情を速水が丁寧に演じている。事件の核となる女性・冴子役の三浦理恵子も好演。元気で明るい女性を演じさせればピカイチだが、このような健気な役柄も似合っていた。故人となってしまった山本圭、綿引勝彦の元気な姿が見られるのもうれしい。出番は多くないが、コメディリリーフ的に登場する京都府警捜査一課の大山警部を演じる、東貴博の絵に描いたような軽薄さも笑える。不可解な事件と共にやりきれない悲劇のてん末を描く、浅見光彦シリーズ「蜃気楼」。速水版の本シリーズは全4作だが、もう少し続編を見てみたかったと思わせる力作だ。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
浅見光彦シリーズ「蜃気楼」(速水もこみち主演)
放送日時: 9月2日(月)12:00~
チャンネル: TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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