大河ドラマ「べらぼう」にも出演中の里見浩太朗の黄門様が円熟期を迎えた「水戸黄門・第33部」は見どころ満載!

国民的な時代劇シリーズ「水戸黄門」は、おもに映画で好評だった月形龍之介をはじめ、多くの俳優が演じていた。だが、やはり東野英治郎が主演した「ナショナル劇場」(TBS系)が最も本作を有名にしたと言える。1969年の第一部から1983年の第13部まで続き、以降同枠の黄門役は西村晃、佐野浅夫、石坂浩二へと引き継がれていった。そして2002年の第31部から5代目黄門役を務めたのが、里見浩太朗である。

里見は、かつて第3部から第17部まで16年半にわたって助さん(佐々木助三郎)役としてレギュラー出演し、水戸黄門の顔でもあった。それでも、長年二枚目役者を通してきただけに、「自身のキャラクターに合わないのではないか」と、オファーを受けた際は葛藤があったと後に証言している。しかし石坂の病気降板という緊急事態でもあったことから、「テレビ時代劇の象徴でもある黄門の看板を守るのが自分の役目」と、出演を決意したという。結果、第31部から2011年の第43部の最終回スペシャルまで、里見は9年にわたって黄門役を務めており、さらに、2015年のスペシャルドラマ「水戸黄門スペシャル」でも主演を務めた。
そんな中から、里見の黄門役がすっかり板についてきた「水戸黄門・第33部」にスポットを当てたい。2004年4月に放送開始された第33部は、助さん役の原田龍二、格さん役の合田雅吏、疾風のお娟役の由美かおる、風の鬼若役の照英といったおなじみのレギュラー陣に、よろず屋の千太役として三波豊和が加入した。失敗も多いが愛嬌があり、どこか憎めない千太の存在は、大きなアクセントを与えてくれた。いわゆるコメディリリーフ的な役どころだが、かつてのうっかり八兵衛(高橋元太郎)のポジションとして、重要な役目を果たしたといえる。
第1話は、水戸で晴耕雨読の毎日を送っている黄門様(里見浩太朗)のもとへ、江戸から山野辺兵庫(丹波哲郎)が急ぎの手紙を持ってやってくる。手紙には駿府の久能山東照宮に徳川家康公の幽霊が出ると記されていた。時の将軍・綱吉(堤大二郎)が自ら駿府に赴くと知り、黄門様は同行しようと江戸へ出発。一行は八重(岩崎加根子)の寮に滞在し、江戸の様子を探る。そのころ江戸では、身分の高い侍が何者かに狙撃されて殺される事件が起きていた。お娟(由美かおる)の調べにより、その侍は幕府を巻き込むお家騒動を起こした、黒川藩の筆頭家老だったことが分かる。そしてお家騒動の関係者は最近、同じ手口で次々と殺されていたのだ。やがて幕府転覆を狙い、将軍の暗殺を企てる恐るべき陰謀が明らかになる...。

初回から重厚で緊迫感のあるストーリーで、将軍・綱吉役の堤大二郎や丹波哲郎演じる山野辺兵庫も登場して彩を添える。以降も林与一(第2話)、三船美佳(第5話)、伊吹剛(第7話)、山田邦子(第11話)、阿藤快(第17話)、布施明(第20話)といった多彩なゲストが出演するのも見逃せない。
今回の旅では、水戸から駿府、伊勢路へと向かい、さらに四国から山陰を経て北陸路へ。佐渡にも渡って最終回の2時間スペシャルでは江戸が舞台となる。最終回第22話では、諸国漫遊の旅を終えて江戸へと戻る黄門様一行が、女剣士・棗(なつめ・華原朋美)に出会う。棗は北町奉行・北条右京之介(平岳大)の密命を受けていた。その頃、江戸では馬渕監物(隆大介)を師範とする馬渕道場の門弟たちが乱暴狼藉の限りをつくし、人々を震え上がらせていた。
馬渕は幕府の実力者・横溝備後守(西田健)に取り入り、柳沢吉保(橋爪淳)の後押しを得て、将軍家指南役に成り上がろうという野望を抱いていたのだ。馬渕道場の制圧を目論んだ右京之介だったが、幕府上層部からとがめられ、謹慎させられてしまう。その上、剣術修行に出ていた腕利きの黒崎又兵衛(加納竜)が帰って来ると、門弟たちはさらに横暴を極めていく...。華原に加えて、MEGUMIと神田沙也加が重要な役どころで登場。華やかな女性ゲストが加わって、幕府転覆計画に立ち向かう黄門様一行の活躍を鮮やかに描いた必見の一本になっている。
ちょっとした豆知識だが、本作ではおなじみの主題歌「あゝ人生に涙あり」を助さん&格さんの原田龍二と合田雅吏の2人が担当している。じつは助さん&格さんが主題歌を歌うのは、第28部のあおい輝彦&伊吹吾郎コンビ以来だった。原田と合田が降板する第41部まで2人の歌唱が続いたが、34部以降では新録版が使われたため、この音源は33部だけの希少バージョンとなっている。ちなみに前作では橋幸夫、西郷輝彦、舟木一夫という昭和の御三家(3人とも29~30部の準レギュラー)が3人で歌っていた。

里見浩太朗演じる黄門様のイメージがすっかり浸透した「水戸黄門・第33部」は、三波豊和の登場もあって、様々な見どころがある。里見の出演以降は29部と30部のレギュラー陣は一新されたが、由美かおるのみ続投。さらに準レギュラーとして徳川綱吉役の堤大二郎と柳沢吉保役の橋爪功も続投している。そんなマニアックな視点で見てみるのも一興だろう。
里見は2025年NHK大河ドラマ「べらぼう」にも須原屋市兵衛役で出演し、88歳になった今も健在ぶりを見せてくれている。長いキャリアの中でも、彼が黄門役を契機に役の幅をさらに広げ、役者としてより魅力を増したことは疑いない。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
水戸黄門・第33部「将軍を狙った男 -駿府-」 第1回
放送日時:2025年7月7日(月)14:00~
放送チャンネル:TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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