若手屈指の演技派・河合優実の"ブレイク前夜"の稀有な輝きが凝縮されたNHKの秀逸なホームドラマ"かぞかぞ"、坂井真紀、錦戸亮、林遣都らの自然体の演技も心に残る...
2019年のデビュー以降、女優として唯一無二の輝きを放っている河合優実。キャリア初期から映画を中心に頭角を現し、2024年には魂を削るような熱演を見せた「あんのこと」で第48回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞、次いで第77回カンヌ国際映画祭の監督週間で国際映画批評家連盟賞を受賞した「ナミビアの砂漠」でも国内外で高い評価を獲得し、日本映画界を代表する若手俳優へと飛躍した。
そんな河合が、映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(2024年)でもタッグを組んだ大九明子監督の演出のもと、連続ドラマ初主演に挑んだのが、"かぞかぞ"こと「プレミアムドラマ 家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」(6月20日(土)よりチャンネル銀河にてCS初放送)。
2023年5月にNHK BSプレミアムで放送された本作は、その温かな余韻と新時代的なホームドラマが話題を呼び、2024年7月にはNHK総合のドラマ10枠で地上波放送されると、さらなる反響を巻き起こした。

原作は、SNSで話題となった作家・岸田奈美が自身の家族について綴った、笑って泣ける同名エッセー。河合が演じるのは、自意識をこじらせ、もがきながらも前を向く主人公・七実だ。
様々な事情を抱える家族に対して真っすぐな愛情を持ちながらも、ふとした瞬間に顔を出す思春期特有の複雑な感情や、自らを縛る葛藤――そうした揺らぎを細やかなニュアンスで積み重ねながら、時には本来の陽気さやチャーミングな一面も絶妙な塩梅で覗かせる。さらに、ちょっとやそっとでは倒れないタフさも見る者に勇気を与える。東京出身ながら自然なイントネーションで操る関西弁も相まって、七実という人物をリアリティある存在として成立させた。

岸本家を取り巻くキャスト陣の芝居も秀逸だ。突然の病で車いす生活となった母・ひとみを演じた坂井真紀は、2人の子供の存在と自身の夢を希望へと変えていく強さと脆さを絶妙なバランスで表現。認知症を抱えた、あまりにもマイペースな祖母・芳子に扮した美保純の飄々とした存在感も素晴らしく、ダウン症の弟・草太を演じた吉田葵は、家族のムードメーカーとして作品に穏やかな空気をもたらした。そこに確かなリアリティがあるからこそ岸本家のどこかアンバランスで不器用な日常にも説得力が生まれている。

さらに本作で重要な存在となるのが、亡き父・耕助を演じる錦戸亮だ。第1話の時点ですでに亡くなっている耕助は、回想や家族の"幻視"のような存在として姿を現す。回想シーンでは、誰よりも明るく家族を包み込む"良きパパ"として軽やかな存在感を放つ。

特に印象深いのが、七実の前に耕助が現れる第6話のシーン。かつて耕助の容体が急変する直前に自分が吐いた言葉への後悔を抱える七実に対し、耕助はいつものように自然体で寄り添う。錦戸の柔らかな眼差しは慈愛に満ちていて、七実の心の鎖がほどけていく様子には胸が静かに震える。突如現れてはスッと消える、ある意味ファンタジックな存在でありながら、2人が醸し出す父娘の空気感は驚くほどリアルだ。

また、七実の文才を見出し、作家への道を後押しする編集者・小野寺柊司を演じる林遣都の存在も欠かせない。初対面にもかかわらず七実に「作家になりましょう」と真っすぐに言い切る小野寺は、癖がありながらも憎めない、押しの強いキャラクター。七実の才能に誰よりも期待を寄せる小野寺を、林は純粋さを滲ませながら好演する。河合との、時にクスッと笑えるテンポの良いやり取りにも注目したい。

本作の後、河合の存在は、大ヒットドラマ「不適切にもほどがある!」(2024年)で一気にお茶の間へと浸透し、さらにNHK連続テレビ小説「あんぱん」(2025年)でも高い支持を得る人気女優になった。作品ごとに新たな表情を見せ、独特の憂いと湿度も兼ね備えた稀有な芝居で見る者を惹きつける河合優実。その"飛躍の途中"に刻まれた輝きが、本作には余すことなく凝縮されている。

文=川倉由起子
放送情報【スカパー!】
プレミアムドラマ 家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
放送日時:2026年6月20日(土)0:00~
※毎週(火)~(土)0:00~
チャンネル:チャンネル銀河 歴史ドラマ・サスペンス・日本のうた(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合があります
こちら
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