「科捜研の女」の沢口靖子が見せるもう一つの顔!会津路を駆ける鉄道ミステリー「西村京太郎サスペンス 鉄道捜査官9」
2026年1月23日、榊マリコは最後の事件に挑んだ。1999年の放送開始から26年、現行連続ドラマ最多シリーズの記録を更新し続けてきた「科捜研の女」が、放送300回の節目でついに完結。沢口靖子が四半世紀以上にわたり演じ続けてきたキャラクターがひとつの区切りを迎えたことは、多くの視聴者にとって大きな節目となる出来事だったはずだ。
だが、沢口靖子のキャリアを振り返ると、榊マリコと並んで長年愛されてきたもう一人のヒロインがいたことに気づかされる。西村京太郎原作のサスペンスシリーズで20年にわたって演じてきた、鉄道捜査官・花村乃里子だ。2000年に第1作がスタートし、2019年には西村京太郎トラベルミステリー70作記念で高橋英樹演じる十津川警部との共演も実現するなど、鉄道ミステリーの顔として親しまれ、2021年の第19作まで続いた人気シリーズである。「西村京太郎サスペンス 鉄道捜査官9」は、その中でも2008年に制作された一作だ。
舞台は猪苗代湖、御薬園、湯野上温泉、塔のへつりなど、会津の景勝地を縫うように走るローカル線・会津鉄道。撮影ではリステル猪苗代や猪苗代湖畔のマリーナ、奥会津の渓谷美で知られるへつりガーデンなどでもロケが行われ、四季を感じさせる会津の風土そのものが物語の舞台装置になっている。警視庁鉄道捜査隊東京駅分駐所の乃里子(沢口靖子)のもとに、一泊二日の会津鉄道の旅から戻った新米捜査官・立花広太郎(金子昇)から土産物が渡される。ところが紙袋の中から、新聞紙に包まれた血染めのナイフが出てくるという不穏な出来事が起こる。立花にはまったく身に覚えがなく、包んでいた新聞紙は三日前の日付の福島の地方紙。そして翌日、会津鉄道・塔のへつり駅付近で東京のイベント会社の女社長の刺殺体が発見され、身に覚えのない立花にまで疑いの目が向けられてしまう。タイトルにある「凶器がトロッコ列車に乗ってきた」という不可解な事実と、猪苗代湖の湖上に隠された時刻表トリックが事件解明の鍵を握る、シリーズらしい本格ミステリーとなっている。
見どころは、沢口が同時期に演じ分けてきた乃里子とマリコ、ふたつのキャラクターの違いだ。ラボにこもり科学的な追究心で真実に迫るマリコに対し、乃里子は現場に自ら足を運び、聞き込みを重ねながら事件に関わった人々の心の機微に目を凝らす刑事。同じ俳優が演じているとは思えないほど、佇まいも歩き方も表情の作り方も異なる。年に一本のペースで大切に積み重ねられてきたこのシリーズは、時刻表トリックのミステリーであると同時に、日本各地のローカル線とその土地の空気を旅するような魅力も併せ持つ。会津の四季の美しさに導かれるように事件を追う乃里子の姿は、いま見ても色褪せない。
本作の面白さは、単なる犯人当てにとどまらない。土産物という何気ない日常の品にひそむ悪意、駅という誰もが行き交う公共の場で起きる殺人、そしてトロッコ列車と地方紙の日付という細部が示す時間差のトリック。西村京太郎作品ならではの緻密な仕掛けを残しつつ、疑われる後輩を気にかけながら事件を追う乃里子の姿には、刑事ドラマでありながらどこか人情ドラマのような温かさも漂うのがいい。旅情あふれるロケーションの中で繰り広げられるサスペンスは、二時間ドラマ黄金期を支えた土曜ワイド劇場らしい贅沢な作りで、当時の空気ごと今の視聴者を引き込んでくれるはずだ。
沢口は2月には映画「木挽町のあだ討ち」で柄本佑と共演し新たな役に挑み、5月からは舞台「東京喜劇 熱海五郎一座」新橋演舞場シリーズにも出演するなど、次々と新しい現場に立ち続けている。その実直な仕事ぶりこそが沢口靖子という俳優の真骨頂だろう。この夏は、会津路を駆けるもう一人の相棒・花村乃里子に会いに出かけてみてはどうだろうか。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
西村京太郎サスペンス 鉄道捜査官9
「凶器がトロッコ列車に乗ってきた!?会津鉄道、車窓に広がる殺人風景!湖の上に隠された時刻表トリック!」
放送日時:2026年7月12日(日)18:00~
チャンネル:テレ朝チャンネル2(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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