阿部寛のひと癖ある弁護士役が新鮮!「最後の弁護人」で見せた不器用で憎めない魅力
モデル出身の端正なルックスと、画面に出てきた瞬間に印象を残す存在感で、長く第一線で活躍してきた俳優・阿部寛。近年は「VIVANT」の野崎守役や、日曜劇場「キャスター」での主演など、物語を大きく動かす重要な役柄も多い。シリアスな作品の中で、説得力のある人物を演じる俳優というイメージを持っている人も多いはずだ。
現在の阿部寛の印象を踏まえると、2003年に放送された主演ドラマ「最後の弁護人」での姿は、また違った魅力を見せてくれる。本作で阿部が演じるのは、弁護士・有働和明。弁護士と聞くと、整った事務所で、理路整然と話し、依頼人をスマートに助ける人物を想像するかもしれない。しかし有働は、そのイメージとはかなり違う。事務所は1Kのアパート。お金にも余裕がなく、態度もぶっきらぼう。初めて会った人に安心感を与えるタイプではなく、むしろ「この人に任せて大丈夫なのか」と思わせるような人物だ。
ただ、有働は事件と向き合うと印象が変わる。依頼人の話をただ聞くだけではなく、言葉の裏にある本音や、見落とされている事実を探っていく。優しい言葉で励ますわけではない。正義感を大声で語るわけでもない。それでも、目の前の人を簡単には見捨てない。きれいな言葉ではなく、しつこいくらいに事実を追いかけることで、依頼人を救おうとする。そこに、有働という弁護士の魅力がある。
有働は、2000年代前半の阿部寛が見せていた魅力とも重なる。「TRICK」の上田次郎、「ドラゴン桜」の桜木建二、「結婚できない男」の桑野信介。どの役も、能力はあるのに人づき合いは少し苦手で、言葉も態度も素直ではない。自信満々だったり、口が悪かったり、周りを振り回したりする。それなのに、なぜか憎めない。阿部は、こうした"面倒だけど気になる人"を演じるのがとても上手い俳優だ。
有働もまさにそのタイプである。真面目なのかふざけているのか、最初は少しわかりにくい。相手に冷たく見えることもあるし、言い方も決して丁寧ではない。けれど、事件のことになると、誰よりも粘り強い。依頼人のために動いているのに、それをわかりやすく見せようとはしない。その不器用さが、阿部の演技によって魅力になっている。大柄な体で無愛想に立っているだけでも、どこか可笑しい。けれど、真相に近づいていく場面では、一気に頼もしく見える。そのギャップがいい。
近年の阿部は、重厚で頼れる人物を演じる印象が強い。その現在地から「最後の弁護人」の有働を見ると、阿部がもともと持っていた軽妙さもよく伝わってくる。ここでの阿部は、ただかっこいいだけでも、頼もしいだけでもない。少しひねくれていて、簡単には心を開かず、周囲を振り回すこともある。それでも、いざという時には信じたくなる。そんな扱いづらさと頼もしさが同居した人物を、阿部は無理なく演じている。
須藤理彩演じる石田良子との関係も、有働の魅力を見せるうえで大きい。良子はもともと、有働の事務所開設資金の返済を求めて彼のもとを訪れる銀行員。そこで出会う有働は、彼女が思い描いていた弁護士とはまるで違う。立派な事務所もない。丁寧な応対もない。最初は戸惑い、振り回されるばかりだが、事件に向き合う姿を見るうちに、有働がただ変わった人ではないことがわかってくる。視聴者も良子と同じように、最初は戸惑いながら、少しずつ有働のことが気になっていく。
今井翼演じる赤倉俊哉、浅野ゆう子演じる神崎美智子ら、周囲の人物とのやり取りも楽しい。有働は一人で何でもこなす完璧な弁護士ではない。周りとぶつかり、呆れられ、ときには助けられながら事件に向き合っていく。だからこそ、人間味がある。弱さやだらしなさも見える人物が、それでも誰かのために動く。その姿が、きれいに整ったヒーローとは違う魅力になっている。
「最後の弁護人」の有働には、阿部が長く愛されてきた理由がよく表れている。かっこよさだけで押し切るのではなく、少し荒っぽく、不器用で、扱いづらい人物までも魅力的に見せてしまう。近年の重厚な役柄で阿部を知る人にとって、有働は少し意外で、どこか新鮮にも映るはずだ。事件の真相を追う法廷ドラマとしての面白さはもちろん、ひと癖ある弁護士を通して、阿部のユーモアや人間味に触れられる。「最後の弁護人」は、現在の阿部を知る今だからこそ、その魅力をもう一度確かめたくなる作品だ。
文=川崎龍也
放送情報【スカパー!】
「最後の弁護人」
放送日時:2026年6月28日(日) 11:30~
チャンネル:ファミリー劇場(スカパー!)
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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