「あの世」と「この世」を舞台にした奇抜な世界観で魅了する『神と共に 第一章:罪と罰』

死後の世界を描くファンタジーアクション
豪華キャスト集結による『神と共に』2部作

2024/02/05 公開

人間の罪、許しと和解についての物語

近年、ウェブマンガを原作とした映画やドラマが目立つ韓国。なかでも『神と共に』シリーズは、2作連続で観客動員1000万人を突破するという偉業を成し遂げた記録的なファンタジー超大作。「あの世(=冥界)」と「この世」を行き来し、登場人物たちの1000年前の因縁までもが絡み合いながら、人間の罪、許しと和解についての物語がドラマティックに綴られていく。

高層ビルの火災現場で幼い子どもを救助したあと、自分が死んでしまったと気づいた消防士ジャホン(チャ・テヒョン)。冥界から彼を迎えに来たのは、ヘウォンメク(チュ・ジフン)、ドクチュン(キム・ヒャンギ)という名の使者だった。彼らはジャホンに「生前の罪を問う七つの裁判で無罪になれば現世に生まれ変わることができる」と説明。その後、弁護を担当するカンニム(ハ・ジョンウ)と合流し、49日間にわたる裁判に臨むジャホンだったが、やがて使者たちも知らなかった彼の悲しい過去が明らかになってくる。

壮大なスケールで描かれる超絶バトルも見どころ(『神と共に 第一章:罪と罰』)

韓国映画として初めて2部作同時に撮影したことでも話題を集めた『神と共に』は、CGを駆使したダイナミックな映像をふんだんに使いながら、「人が生きているうちに犯した罪は次の生にどんな影響を与えるのか?」という普遍的な問いの答えを描き出していく。消防士として実直に生きてきたため死者の中でも最も位の高い「貴人」となり、容易に転生できると見られていたジャホンだったが、嘘や怠惰、裏切りといった罪を裁く地獄では、裁判官の役割を果たすユニークな大王たちが彼を待ち受け、貧しい生活の中、母と弟に対して抱えてきたジャホンの葛藤が「罪」として行く手に立ちはだかる。その後、弟スホンまでもが不慮の死を遂げたことで、裁判はますます混迷を極める。

使者のリーダーで弁護士でもあるカンニム役に、人気俳優ハ・ジョンウ(『神と共に 第一章:罪と罰』)

監督は日本のマンガを原作とする『カンナさん大成功です!』(2006年)やスポーツコメディ『国家代表⁉』(2009年)などを手掛けてきたヒットメーカー、キム・ヨンファ。昨年韓国で公開された『ザ・ムーン』ではSFに挑戦するなど、常に新しいジャンルを切り開いてきた監督だ。『神と共に』も、それまで韓国でほとんど作られてこなかった「ファンタジー」かつ「シリーズもの」であると同時に、2本合わせた総製作費が360億ウォンと高額で、「ギャンブル」と呼ばれるほど野心的な企画だったが見事に成功へと導いた。

第二章では、冥界の使者たちの驚きの過去が明かされる

そんな彼のもとに集結した俳優陣も、『1987、ある闘いの真実』(2017年)のハ・ジョンウ、『アシュラ』(2016年)のチュ・ジフン、『猟奇的な彼女』(2001年)のチャ・テヒョンと超豪華。冷静でカリスマ性にあふれたリーダーであるカンニム、どこか人の良さを感じさせながら飄々と仕事に励むヘウォンメク、底知れぬパワーを秘めたドクチュンの絶妙なチームワークが楽しい。錚々たる先輩たちに混じって好演したドクチュン役のキム・ヒャンギは青龍映画賞の助演女優賞にも選ばれている。さらには冥界の最高権力者である閻魔大王役でドラマ「イカゲーム」のイ・ジョンジェも特別出演。貫禄のある姿を見せている。

第二章には、マ・ドンソクも本格的に登場!(『神と共に 第二章:因と縁』)

ジャホンの裁判を中心とする『第一章:罪と罰』に続く『第二章:因と縁』では、ジャホンの弟スホンの裁判を担当することになったカンニムが、彼が無念の死を遂げたと証明するために奔走。一方、ヘウォンメクとドクチュンは、家を守る成主(ソンジュ)神の力によって死期を過ぎても死ぬことができない老人ホ・チュンサムを冥界に導くため、下界へと向かう。2人を迎えた成主神は、1000年前に死んだヘウォンメクらを冥界に連れていった使者が自分だと打ち明け、当時の事情を話し始める。

スホンの無念の死を証明しようとする使者たちの前に、彼らの「前世」が立ちはだかる(『神と共に 第二章:因と縁』)

軍隊内で起きた事故で命を失うスホンを演じているのはドラマ「チェックメイト!〜正義の番人〜」の成功で主演俳優としての活躍が続くキム・ドンウク。「転生などしなくていい!」と強がる彼とカンニムのやりとりが笑いを誘う。そんな彼の部下であるドンヨン役でEXOのD.O.ことト・ギョンス、上官役で『野球少女』(2020年)のイ・ジュニョクも登場する。さらに、再開発の進む地域に残された老人と孫を黙って見ていられなくなり、人間の姿となって面倒を見る心優しい成主神を『犯罪都市』シリーズのマ・ドンソクが好演。パワーとユーモア、人間性を兼ね備えた魅力を存分に発揮している。

キム・ヨンファ監督は、つながった一つの物語として2作のシナリオを描いたとのこと。あるインタビューでは「自分は無神論者だが、癒されたいと思いながらこの映画を作った。観客の皆さんも私と同じように感じてくれたら、とても運がいいことだと思う」と語っている。豪華スターの共演を楽しみながら、この言葉の意味も考えてみてほしい。

文=佐藤結

佐藤結●映画ライター。韓国映画やドキュメンタリーを中心に執筆。「キネマ旬報」「韓流ぴあ」「月刊TVnavi」などの雑誌や劇場用パンフレットに寄稿している。共著に「韓国映画で学ぶ韓国の社会と歴史」(キネマ旬報社)、「作家主義 韓国映画」(A PEOPLE)など、訳書に「私書箱110号の郵便物」(アチーブメント出版)がある。

<放送情報>
神と共に 第一章:罪と罰
放送日時:2024年2月22日(木)7:00~

神と共に 第二章:因と縁
放送日時:2024年2月22日(木)9:30~
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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