ドラマやCMでも活躍する圧倒的な存在感!
石原さとみの多彩なアプローチが見られる映画3本
2024/04/29 公開
石原さとみという名前を聞いた時に、ドラマやCMで美しい輝きを放つ彼女を思い浮かべる人は少なくないはずだ。いや、たしかにテレビを点ければ、おいしそうに牛丼を頬張る石原に毎日のように会えるし、連続ドラマの代表作も多い。
「きみはペット」(2003年放送)、「Ns'あおい」(2006年放送)、「ヴォイス~命なき者の声」(2009年放送)、「リッチマン、プアウーマン」(2012年放送)、「失恋ショコラティエ」(2014年放送)、「アンナチュラル」(2018年放送)、「恋はDeepに」(2021年放送)などなど、その時代を彩る人気ドラマのヒロインを好演。多彩なキャラクターで幅広い視聴者を魅了し続けてきた。
それだけに、彼女の主戦場はテレビと思われがちだが、映画の話題作にも数多く出演していることを忘れてはいけない。初めて出演した2003年の『わたしのグランパ』でその年の新人賞を総ナメにすると、2005年の『北の零年』では吉永小百合が演じたヒロインの娘、多恵を観客の涙を誘う瑞々しい芝居で体現した。
また、『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年)ではホラー映画に初挑戦し、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』二部作(2015年)で人気キャラの調査兵団隊長・ハンジを、アニメ版で同役を担当した朴璐美にアドバイスをもらいながらクールに演じていたのも記憶に新しい。
こうして振り返っただけでも、石原が様々なジャンルの作品、異なるアプローチを強いられる役柄に果敢に挑戦していることがよくわかるが、これから挙げる3作品では特に、ほかではなかなか見ることのできない彼女のパフォーマンスや表情に魅了される。
太宰ワールドの住人や忠臣蔵の重要人物を好演!
『人間失格』(2010年)は、言わずと知れた文豪・太宰治が最後に遺した同名の代表作を、『赤目四十八瀧心中未遂』(2003年)の荒戸源次郎監督が、太宰の生誕100年を記念して生田斗真の主演で映画化した文芸大作。酒と女に溺れ、放蕩の限りを尽くす津軽の資産家の息子・葉蔵(生田)の破滅までの旅を描いた本作だが、寺島しのぶ、小池栄子、坂井真紀、室井滋、三田佳子、大楠道代らと共に、葉蔵と関係を持つ女性の一人で、やがて結婚する良子を演じた石原の初々しさと儚さが際立っている。
なかでも、酔っ払った葉蔵から「大人の男をなめるなよ。キスするぞ!」と言われて、タバコ屋の看板娘だった良子が無邪気な笑顔で「してよ」と唇を突き出すくだりは素朴でかわいらしい。男性はその反応に驚いて転倒する葉蔵と同じようにドギマギしてしまうだろうが、それだけに、あることをきっかけに葉蔵との間に溝ができた際の、それまで変化が乏しかった表情が一変する彼女は見ていられない。絶妙なコントラストでほかの女性たちとは異なる葉蔵との関係性を示し、太宰ワールドの住人に完璧になりきっていた。
続く『決算!忠臣蔵』(2019年)でも、ちょっと変わった石原を見ることができる。本作は歴史学者・山本博文による著書「『忠臣蔵』の決算書」に着想を得て、『殿、利息でござる!』(2016年)の中村義洋監督が手掛けた時代劇コメディ。あの「忠臣蔵」をもとに、限られた予算をやり繰りしながらの討ち入りを強いられる赤穂浪士たちの苦悩を、笑いあり、涙ありで描いたもので、切腹した赤穂藩主・浅野内匠頭(阿部サダヲ)の妻である瑤泉院に石原が扮している。石原は瑤泉院としてナレーションも担当し、彼女の語りで当時の金銭価値を現代の価格に換算して解説するなど、一気に作品世界へと導いてくれる。
と思ったら、筆頭家老の大石内蔵助(堤真一)は、仇討ちに最低限必要な9500万円の捻出も難しい状況なのに毎日のように女遊びをして散財しまくるから、瑤泉院も黙っちゃいない。「よからぬところへはすべて自分の金で」と言い訳をする内蔵助に「当たり前じゃ!」と鋭いツッコミを入れ、「つくづく呆れた男や」と吐き捨てるが、その一連の石原はこれまでになく貫禄があるし、関西弁のセリフも切れ味バツグン!「ほんま、人の金をなんやと思ってんねん」と思わず本音をこぼす時の表情もキリっとしていてカッコいい。出演シーンこそ少ないが、作品全体を包み込むようなその存在感にも石原の風格が表れている気がする。
『シン・ゴジラ』でゴジラと戦う難役に挑戦!
『シン・ゴジラ』(2016年)で石原が演じた米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンは、そんな彼女のシャープな顔立ちとキャリアに裏打ちされた揺るぎない精神がなければ血肉化できなかっただろう。
なにしろカヨコは、あのゴジラに立ち向かうキャラクター。しかも、完璧主義の庵野秀明総監督のもと、長谷川博己が扮した内閣官房副長官の矢口と一緒に最前線で指揮を執る彼女を、観客が納得する形でリアルに演じなければいけないというハードルの高いミッション。念願のゴジラ映画への出演が決まって大喜びしたという石原も、現実を理解した時には相当の覚悟を要したようだが、その期待に不屈の根性で応えてしまうところが彼女のまたスゴいところだ。ゴジラと対峙した際のその表情、その言動にはまったく嘘がない。「空想特撮エンタテインメント」にリアリティを与える重要な役割をまんまと果たしていた。
そんな石原さとみの最新作は、彼女が一緒に仕事をすることを熱望していた𠮷田恵輔監督(『ヒメアノ〜ル』『空白』)との初タッグとなる『ミッシング』(5月17日公開)。「自分を変えたい」という思いで、一人娘が失踪して苦悩する母親役に挑んだ彼女のむき出しの芝居と生々しい感情は、映画公開前から大きな話題に。スクリーンに映る初めて見る石原の迫真に衝撃を覚え、心を震わせることになる。
文=イソガイマサト
イソガイマサト●映画ライター。独自の輝きを放つ新進女優、ユニークな感性と世界観、映像表現を持つ未知の才能の発見に至福の喜びを感じている。「DVD & 動画配信でーた」「J Movie Magazine」「スカパー! TVガイド」「ぴあアプリ」「MOVIE WALKER PRESS」や劇場パンフレットなどで執筆。映画やカルチャー以外の趣味は酒(特に日本酒)と食、旅と温泉めぐり。
<放送情報>
シン・ゴジラ
放送日時:2024年5月2日(木)20:00~、11日(土)21:00~
チャンネル:チャンネルNECO
決算!忠臣蔵
放送日時:2024年5月4日(土・祝)13:45~、29日(水)18:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
人間失格
放送日時:2024年5月12日(日)10:10~、26日(日)21:00~
チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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