一流料理人がキューバサンドイッチの美味しさに心を打たれ、フードトラックの移動販売を始める『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』

「食事」とはただ味が良ければいいだけじゃない!
『南極料理人』『シェフ』で人の絆にも心動かされる

2023/11/27 公開

美味しいものを食べている人は多幸感に溢れている

食べ物の美味しい季節がやってきました。さつまいも、かぼちゃ、栗、柿、サンマ、秋鮭に銀杏……秋の食材ってどうしてこんなに魅力的なものばかりなんだろう。急にぐっと冷え込んで気温は秋を飛び越えていってしまったような気もするけれど、まあ慌てないで。この先だってクリスマスにお正月、バレンタインと美味しいものを食べるためのイベントが目白押し。つまり、寒い季節は食べることこそが一番の幸せということだ!美味しいものは幸せを運んできてくれる。美味しいものを食べている時の人の顔って、いつまでも見ていられるくらい多幸感に溢れている。だから急な寒暖差にやられてちょっと参っちゃっている人にこそオススメしたいのが「グルメ映画」。思わず笑みがこぼれるようなグルメがたくさん登場する映画を観ていたら、きっと心がほかほかしてきて、何か美味しいものを食べたいと動き出したくなること間違いなし!なのだから。

隊員たちがごはんを美味しそうに頬張る姿に食欲を刺激される『南極料理人』

寂しかったり、苦しかったり、人は時に追い詰められてもう嫌だとすべてを放り投げてしまいたくなることもあるけれど、そんな極限の状況でも人の心を励まし、癒してくれるのは「食」なのだとしみじみ染みてくるのが『南極料理人』(2009年)だ。

原作は海上保安官として南極観測隊員の料理人を務めた西村淳のエッセイ「面白南極料理人」。南極の中でもほかの観測基地から遠く離れた陸の孤島、ペンギンやアザラシはおろか、ウイルスさえもいない「南極ドームふじ基地」には8人の観測隊員が暮らしている。観測隊員の一人である西村の仕事は毎日、隊員の食事を作ること。約一年半、遠く離れた日本に家族を残し、隊員たちは家族と会えない寂しさやプライバシーの欠片もない共同トイレ、節水のルールに悪戦苦闘しながらも次第に絆を深めていく。西村役は堺雅人、そのほかの観測隊員に生瀬勝久やきたろう、高良健吾に豊原功補といったバラエティ豊かな俳優陣が名を連ね、個性豊かな観測隊員たちのほのぼのとした南極での日常が描かれる。

料理人の西村が、備蓄食材を使って様々な料理を生み出していく(『南極料理人』)

氷点下54度、ちょっと足りなくなったからスーパーへ、なんてことが可能なはずもない極寒の土地で、冷凍野菜や缶詰などの備蓄食料を使って作られる料理のなんと美味しそうなことか。隊員たちが口いっぱいにごはんを頬張る姿があまりに幸せそうで、日々の料理がどれだけ観測隊員たちの心を支えているのかが伝わってくる。特にインパクト大なのが伊勢海老のエビフライ。思わずどこに行ったら食べられるのか調べてしまった……。さらに限られた資源の中、夜食にこっそり食べていた大好きなラーメンが底をついてしまったことを知った時のきたろう演じる隊長のぷるぷると震える絶望の表情といったら!そこからなんとかしてラーメンを食べさせてあげたいと苦心する西村の姿に料理人としての気概を、その後の展開には胸いっぱいになり、美味しそうにごはんを食べている人の姿は、見ているだけで人を温かな気持ちにさせてくれるのだと改めて気づかされた。ええ、我慢できなくなって私もしっかり夜食にラーメンをいただきました。出てくる料理は素朴な家庭料理が多く、「これ、明日の夕飯に作ろうかしら?」なんて献立の参考にもなるのでオススメです。

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を観たあとは、キューバサンドイッチが食べたくなること間違いなし

人との食事は一等美味しい、そんな当たり前に気づかされる

『アイアンマン』シリーズのジョン・ファヴローが監督・脚本・主演を務める『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(2014年)は、美味しそうなキューバサンドイッチとラテンの音楽にもうお酒が進みっぱなし。

ロサンゼルスの一流レストランで料理長を務めるカール(ファヴロー)は、オーナーとの対立やグルメライターとのいざこざをきっかけに店を辞める。新しい仕事を探していたところ、元妻の地元で食べたキューバサンドイッチの味に感動し、一大決心。フードトラックでキューバサンドイッチの移動販売を始めることに。息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)や親友のマーティン(ジョン・レグイザモ)と共にマイアミからロサンゼルスまで、フードトラックでの旅に出る。

カールの料理への情熱にもドキドキさせられる(『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』)

白眉はやはりこだわりの詰まった美しい調理シーン。一つ一つの工程が丁寧に描写されていて、見ているだけで「整う」気がする。具沢山のキューバサンドイッチは、ジューっと鉄板で焼ける音やとろとろに溢れ出すチーズのなまめかしさ、カリっとしたバンズの音も相まって、胃が勝手にぐるぐると動き出し、後半はもう我慢できないくらい。お、美味しそうすぎる!次の日にはキューバサンドイッチのお店を探して食べに行きました。美味しかったけれど、あのフードトラックの形態がまた雰囲気がよくてさらに魅力的だったんだよなあ。どこかでフードトラック、走ってないかしら?

当初は微妙な距離感があった息子との関係や停滞していた人生が、フードトラックをきっかけに動き出し、やがてシェフの仕事の醍醐味に改めて気づき始める様子にもぐっとくる。ロバート・ダウニー・Jrやスカーレット・ヨハンソンと、思わずアベンジャーズを彷彿とさせる豪華な共演陣も魅力の一つ。なによりカールのサバサバとした気持ちいい人となりは見ていてどんどん惹かれていった。自分にできることをコツコツ集中して続けることのできる人のカッコよさに溢れていて、前向きな気持ちにさせてくれる作品だ。

「レストラン」の始まりを描く『デリシュ!』

私たちが何気なく日々活用しているレストラン、その始まりの物語たる、世界で初めてレストランを作った男の実話を基に描かれた映画が『デリシュ!』(2022年)。

1789年、公爵のもとで料理人として働いていたマンスロン(グレゴリー・ガドゥボワ)は自慢の創作料理「デリシュ」にジャガイモを使用したことで貴族たちの反感を買い、解雇される。息子を連れて実家に帰り、旅籠を営んでいたところ、ルイーズ(イザベル・カレ)という女性が弟子入りして料理を習いたいと訪ねてきた。彼女の熱意に負けてまた料理への情熱を取り戻したマンスロンは、やがて息子とルイーズの協力のもと、一般市民も料理を楽しめる場所を作ろうと決意する。

フランス革命のなか、「食」で革命を起こした男の奮闘が胸アツ!(『デリシュ!』)

ジャガイモとトリュフは豚に食わせておけばよい、と発言する貴族に、これだから革命されるんだよ、と思わずつぶやいてしまうほど反感マックス。打って変わって階級に関係なく、それぞれのテーブルにつき、コース料理を堪能する人々の姿に平等の意味を改めて感じ、胸が熱くなった。食事とは単に味が良ければいい、というものでもないのだ。皆で楽しめる食事は一等美味しい。そんな当たり前の事実に気づかされ、次の休みは友達と鍋でも囲もうかしら、なんてことを思った。

とにかくどの作品も美味しい料理に溢れているものだから、私の理性は仕事を放棄し食欲のままにもぐもぐ食べながら鑑賞してしまった。グルメ映画の唯一危険なポイントはそこ。皆さん、体調と体重と相談しながら、(時に目をつぶりながら)、グルメ映画を楽しんでください。まあ冬は体温維持のためにカロリー消費するし、生命維持のため!いいのいいの!

文=宇垣美里

宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

<放送情報>
デリシュ!
放送日時:2023年12月7日(木)8:30~、20日(水)18:45~

ディナーラッシュ
放送日時:2023年12月10日(日)23:00~、19日(火)19:00~

シェフ 三ツ星フードトラック始めました
放送日時:2023年12月12日(火)5:30~、18日(月)18:45~

そらのレストラン
放送日時:2023年12月21日(木)18:30~、26日(火)1:25~

南極料理人
放送日時:2023年12月22日(金)18:30~、27(水)1:00~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

▼同じカテゴリのコラムをもっと読む

「食事」とはただ味が良ければいいだけじゃない! 『南極料理人』『シェフ』で人の絆にも心動かされる

「食事」とはただ味が良ければいいだけじゃない! 『南極料理人』『シェフ』で人の絆にも心動かされる

##ERROR_MSG##

##ERROR_MSG##

##ERROR_MSG##

マイリストから削除してもよいですか?

ログインをしてお気に入り番組を登録しよう!
Myスカパー!にログインをすると、マイリストにお気に入り番組リストを作成することができます!
新規会員登録
マイリストに番組を登録できません
##ERROR_MSG##

現在マイリストに登録中です。

現在マイリストから削除中です。