内気な自分から変わりたいと願う女子高生と、レモン色の髪の少年の恋の行方を描く『ハニーレモンソーダ』

大ヒット少女コミックが待望の実写映画化!
さわやかで甘酸っぱい胸キュンラブストーリー『ハニーレモンソーダ』

2022/12/05 公開

原作は累計部数1000万部突破の少女コミック

シュワシュワシュワ~と炭酸が弾ける音が聞こえそうなほど、さわやかで甘酸っぱい青春ラブストーリー。『ハニーレモンソーダ』(2021年)は、雑誌「セブンティーン」の2020年9月号で、「読者が選ぶ好きな少女マンガ&実写化してほしいマンガランキング」1位となった超人気コミックの魅力を、まっすぐにスクリーンに映し出した作品だ。監督は『ピーチガール』(2017年)や『honey』(2018年)など、高校生の青春ラブストーリーに定評のある神徳幸治。脚本は『PとJK』(2017年)、『私がモテてどうすんだ』(2020年)など、少女コミックの映画化作品を手掛けてきた吉川菜美が担当した。

原作者の村田真優が2015年から「りぼん」で連載を開始した「ハニーレモンソーダ」は、いまも連載が続いており、現在21巻まで刊行。累計発行部数1000万部を突破するなど、中高生の女子を中心に、絶大な人気を誇っている。

中学時代、「石」と呼ばれていた過去があり、内気な自分から変わりたいと願う少女・石森羽花(吉川愛)。受験前、偶然出会ったレモン色の髪の男の子・三浦界(ラウール)に憧れた彼女は、いままでの自分を変えるため、彼が「行く」と言っていた自由な校風の高校に入学する。高校で再会し、同じクラスになった界は、1年生なのに誰よりも目立つ存在で、女子の間でも大人気。しかし、そんな界はなぜか自分を「石森係」と呼び、羽花の世話を焼いてくれるように。新しいことがいっぱいの高校生活を送りながら、羽花はいつしか界を好きになっていることに気づく…。

自由奔放な性格でいつも塩対応なのに、本当はすごく優しい界役には、Snow Manの最年少メンバーであるラウールが、何事にも自信が持てなかったけれど、界に出会ったことで少しずつ積極的になっていく羽花役に、幼少期からキャリアを積み、数多くのドラマや映画で活躍する吉川愛が抜擢。常に冷静でどんな時も羽花を守ってくれる大人びた界を、撮影当時はリアル高校生だったラウールが演じ、原作では引っ込み思案で地味な羽花を吉川が演じる。この新鮮な組み合わせによって、原作コミックをただ映像化しただけにとどまらない、1本の映画作品としてのオリジナリティが生まれることになった。

映画の序盤、羽花と界が中3の時に初めて出会ったシーンで、2人は印象的な言葉を交わす。「私に居場所なんかない」と嘆く羽花に、界は「オレと同じだな」と返し、「変わりたい」と言う羽花に、界は「オレも」とつぶやくのだ。ここは原作にはないオリジナルであり、映画版のストーリーが、理想の王子様がヒロインを救う話ではなく、同じように傷も弱さも抱えた少年少女が、お互いに成長し合っていく物語であることがはっきりと提示される。

長い連載を通して、高校3年間の出来事を一つ一つ、じっくりと描いていく原作コミックに対し、111分の映画版では、物語の期間を高校入学の春からクリスマスの時期までの9か月間ほどに限定。文化祭や体育祭といった学校行事や、羽花と過保護な両親との関係などのエピソードは思いきって省きつつも、原作コミックにおける重要なシーン、セリフの数々を全編にちりばめ、原作のエッセンスをギュッと詰め込んでいる。

そのうえで、春夏の前半パートでは、花のつぼみがほころんでいくように、羽花が明るく変わっていく姿を描き、秋から冬へと季節が変わる後半パートでは、界が一人胸に秘める孤独と闇にスポットを当てるなど、前半と後半で視点を変えたところが本作の大きな特徴だ。

そして、羽花と界を取り巻く仲間たちはみんな心優しい友だちばかり。特に、多くの少女マンガでは主人公のライバルで憎まれ役にあたる、学校でも評判の美少女・芹奈が、羽花目線で見ても好きにならずにはいられない魅力的な女の子として描かれているのもポイントだ。また、界の中学からの友だちでクールな男の子・友哉役に濱田龍臣、明るい元気キャラの悟役に坂東龍汰、悟の幼なじみのあゆみ役に岡本夏美、界の元カノの芹奈役に堀田真由と、脇を固める主要キャラクターたちには人気の若手俳優陣が集結。原作のイメージにもぴったりで、『ハニレモ』の世界観を盛り上げてくれる。

高校生たちのあふれ出る思いが、キラキラとまぶしく輝く

本作で界がいつも飲んでいる定番ドリンクといえば、タイトル由来のレモンソーダ。映画版において、それと同じくらい重要なオリジナルの小道具として登場するのが自転車だ。原作では徒歩通学の羽花だが、映画では自転車通学しているという設定に変わっている。もちろんそこにはちゃんとした意図がある。

内気だった羽花が颯爽と自転車で走る姿を通して、前向きになった彼女の変化を見せるだけではない。羽花も、界も、相手のことを思う気持ちがあふれ出した別々のシーンで、ヘトヘトになりながら自転車を必死に漕いで、好きな人に会いに行く。一刻も早く会いたい。会って、いまの自分の気持ちを伝えたい!そんな高校生の熱いピュアな想いを表現するのに、疾走感あふれる自転車ほどふさわしい乗り物はないだろう。2人にとって、たとえ全速力でも、足で走るスピードなんかじゃ全然間に合わないのである。

「もういいじゃん、石で。石でも、おまえは『宝石』なんだよ」というセリフをはじめ、界が羽花をときめかせるシーンは当然しっかり押さえている本編。しかし、まだまだ満足できない原作ファンのためにと、映画には入れきれなかった原作の胸キュンシーンを集めたエンドロールは必見だ。恋人として交際中の羽花と界の微笑ましいイチャイチャの数々が、原作にとことん忠実に再現されていて、幸せな気分にさせてくれる。

横浜や湘南など、神奈川県を中心にした、海の気配が感じられるさわやかなロケーション。女の子たちのキュートなファッションやヘアメイク。カフェでの勉強会、夏祭り、海水浴、クリスマスパーティーといった各種イベント…。誰もが憧れる、甘く弾けるおしゃれな青春の要素がいっぱいの作品だけれど、真のテーマとして描かれているのは、恋愛における理想の関係性だ。どちらかが一方的に支えたり、依存してしまったりする関係では、きっと長くは続かない。「守り、守られる関係」のすばらしさをナチュラルに体現する高校生カップルの姿が、キラキラとまぶしい輝きを放っている。

文=石塚圭子

石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、さまざまな世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。

<放送情報>
ハニーレモンソーダ
放送日時:2022年12月31日(土)8:00~
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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