『ダイ・ハード』など大ヒット作品を発表し続けたジョン・マクティアナン監督

『ダイ・ハード』や『プレデター』を監督!
稀代のヒットメイカー、ジョン・マクティアナンを語る

2022/10/31 公開

ヒットメイカーというのはどのジャンルにもいる。だけど、何発も連続でヒット作を出せるクリエイターはそれほど多くない。今回ご紹介するジョン・マクティアナン監督は、そんな稀有な一人だ。アメリカの映画監督で1951年生まれ、現在71才。私が子どもだった頃、マクティアナン監督はまさにヒットメイカーだった。当時はそうとは知らずに観ていたけれど、いま考えるとすごい。

娯楽アクションの定番!『ダイ・ハード』でブルース・ウィリスをスターに

最も有名な代表作はやっぱり『ダイ・ハード』(1988年)だろう。子どもの頃は毎年のようにテレビ放映もされていたし、いま観ても抜群におもしろい。私の世代にとっては、「これぞハリウッド映画!」という非の打ちどころのない娯楽映画だ。もはやハリウッド・スターの殿堂入りしてしまった感のあるブルース・ウィリスも、この『ダイ・ハード』で一気にブレイクした。

ウィリスが演じるのは、ニューヨーク市警の刑事。もしかしたら世界で一番有名な名前の刑事かもしれない。そう、ジョン・マクレーン刑事だ。彼は別居中の妻ホリーと会うため、ロサンゼルスへやって来る。だが、再会した途端にタイミング悪く、そのビルを残虐なテロリスト集団が占拠してしまう。たまたまテロリストに見つからなかったマクレーンは一人、ビルを奪還するため、妻を無事に解放させるため、孤軍奮闘の戦いを挑む。

肉体派というわけではないけれど、しぶとく生き残ってテロリストと戦うジョン・マクレーン刑事(『ダイ・ハード』)

それまであまり映画俳優として認識されていなかったウィリスは、ここでとてもユニークな奮闘ぶりを見せる。それまでの刑事映画で定番だったニヒルな刑事でも、ワイルドな刑事でもなく、どこにでもいそうなオッサン感。つらいことに直面するとブツブツとぼやき、すぐ弱音も吐く。決してスーパーヒーローじゃない。ただ、しぶとくて絶対に負けない。

同時代にはシルヴェスター・スタローンやアーノルド・シュワルツェネッガーというアクションスターがいるけれど、ウィリスは決して筋肉を誇示するわけでもアクションが上手いわけでもない。それでいて決して見劣りせず、むしろ親しみやすいオッサンスターという地位を確立してしまった。

テロリストグループのリーダーを演じていたのは、「ハリー・ポッター」シリーズのスネイプ先生役でおなじみのアラン・リックマン(『ダイ・ハード』)

観る者を全く飽きさせない!卓越した「見せ方」の上手さ

マクティアナン監督が、肉体派スターのシュワルツェネッガーを主演に擁したのが、『プレデター』(1987年)だ。これも『ダイ・ハード』同様、歴史に残るアクション映画で、私の子ども時代によくテレビで放映されていた。

エリート特殊部隊がジャングルでのミッション中、正体不明の地球外知的生命体「プレデター」に襲われる。物語自体はとてもシンプルだけど、何度観ても飽きずに最後まで観終わってしまう。

なんといっても見どころは、人型なのに気持ち悪いプレデターの造形、そしてプレデターが駆使する高度なテクノロジー兵器。敵を捕捉する時に体温を検知する主観映像は、もはや「プレデターの主観」といってよいほど有名だろう。

主演のシュワルツェネッガーは本作に先んじて、『ターミネーター』(1984年)、『コマンドー』(1985年)などで人気を確立していたが、本作では「これでもか」というくらいに台詞が少ない。敵との会話はないし、仲間もどんどん殺されていくので、台詞が少ないのは当たり前とはいえ、ひたすら行動で何が起きているかをおもしろく見せ切っていく。これは完全に監督の手腕だろう。

マクティアナンは『ダイ・ハード』やほかの作品でもそうだが、空間における人間の位置やサスペンス状況を切り取るのが非常に上手く、観客が絶対に混乱しないように設計している。これは彼がヒットメイカーである理由の一つだろう。丁寧だけど、くどくない。見落とされがちだけど実はすごい技術だ。

宇宙からやって来た凶暴なハンターと米国特殊部隊との死闘を描く『プレデター』

このほかにも、私が子どもの時に映画館で観てとても記憶に残っている『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年)やショーン・コネリー主演作『レッド・オクトーバーを追え!』(1990年)、スティーヴ・マックィーンの『華麗なる賭け』(1968年)をリメイクした『トーマス・クラウン・アフェアー』(1999年)など、話題作をマクティアナンは連発していく。アクション演出の巧さ以外にも、映画監督としての個性を指摘するならば、『トーマス・クラウン・アフェアー』に代表されるようなウィットに富んだ会話も挙げられる。少しシニカルで、でも、やさしくて人をホッとさせる。そんな言葉たちがマクティアナンの映画に上品さを与えている。

若き大富豪という表の顔を持つ天才的美術品泥棒と、彼を追う保険会社の捜査員との攻防や大人のロマンスが展開される『トーマス・クラウン・アフェアー』

少し前にFBIに虚偽の証言をして逮捕されたらしいが、個人的にはもっとマクティアナンの映画が観たい。ぜひ、大いなるカムバックをして新作を撮ってほしい。いつだってマクティアナンの映画は、私を童心に帰らせてくれるのだから。

文=入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)など。

<放送情報>
プレデター
放送日時:2022年11月21日(月)15:45~

トーマス・クラウン・アフェアー
放送日時:2022年11月25日(金)6:00~
チャンネル:WOWOWプラス

ダイ・ハード
放送日時:2022年11月5日(土)16:00~、20日(日)8:00~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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