家族のために日々を捧げる青年ギルバートが、自身の人生を見つめ直す姿を描く『ギルバート・グレイプ』

あなたのレオナルド・ディカプリオはどこから?
『ギルバート・グレイプ』『マイ・ルーム』で才能に圧倒される

2023/05/29 公開

演技であることを観客が忘れてしまうほどの自然な存在感

あなたのレオ様、レオナルド・ディカプリオはどこから?私は順当に『タイタニック』(1997年)から。とはいえ、日本公開は1997年、私はまだ4歳だったので、レオ様および『タイタニック』デビューは金曜ロードショー。何度観ても新しい発見があり、誰に感情移入するかで全然違うポイントで胸を掴まれる傑作だ。

高校生になると近所のレンタルビデオ店に足しげく通うようになり、『ロミオ&ジュリエット』(1996年)、『仮面の男』(1998年)、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(2002年)……多くの作品の中でレオ様の圧倒的なカリスマ性を浴び、私にとって「この人が出演しているならとりあえず観てみよう」と思えるような俳優の一人となった。

おそらく多くの方にとって、レオナルド・ディカプリオの端正な顔立ちやその人らしいアイドル性を目の当たりにしたのは青年期以降の作品、特に『タイタニック』からのイメージが強いことだろう。近年では『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)や『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)など個性の強いキャラクターを演じることが多く、そういったアクの強いイメージを持っている人もいるかもしれない。そんな方にこそぜひ、『タイタニック』以前のレオ様を見てもらいたい。彼はどれほどの才能の持ち主か、圧倒されてほしいのだ。

知的障害を持つアーニーは日々、ギルバートを振り回す(『ギルバート・グレイプ』)

一つ目に紹介するのは『ギルバート・グレイプ』。出演したのは1993年、ディカプリオが19歳の頃。この作品で彼はアカデミー賞助演男優賞にノミネートされるほどの演技を見せる。

アイオワ州の何もない田舎町から、生まれてこのかた24年、一度も出たことのない青年のギルバート(ジョニー・デップ)。彼は食料品店で働きながら、知的障害を持ち片時も目を離すことのできない弟アーニー(ディカプリオ)と、夫の死から立ち直れず7年もの間家から出ないでいる過食症で肥満の母、2人の姉妹たち家族の生活を支えている。大黒柱として家族を守るために精一杯で、自分の思いなど二の次にして生きてきたギルバートは、ある日、トレーラーハウスで祖母と旅をしながら暮らすベッキー(ジュリエット・ルイス)という少女と出会う。車の故障でしばらく町にとどまることになったベッキーとの触れ合いの中で、ギルバートは蓋をしてきた自分の気持ちを見つめ直すことになる。

ディカプリオは弱冠19歳でアカデミー賞助演男優賞にノミネート(『ギルバート・グレイプ』)

知的障害を持つ弟アーニーをディカプリオは演じているのだが、これがもう只者じゃない。底抜けの無邪気さは天使のようでもあり、悪魔のようでもあり、それでもあり余る愛おしさにもうノックアウト。演技であることを観客が忘れてしまうほどの自然な存在感には凄みすらあり、彼が天才と呼ばれる所以がわかることだろう。

1990年代のアメリカの日常風景に載せて、家族か夢かというような普遍的で生々しいテーマを取り上げながら、どこか牧歌的でイノセントな空気感に包まれている。一人で背負うには重すぎる環境に葛藤しながらも、まっすぐに家族を想うギルバートをジョニー・デップが好演。『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)などで見せるエキセントリックな演技とは違い、無表情で内省的な青年を繊細に演じていて、これもまた人によっては知られざる一面と言えるかもしれない。よく考えたらジョニー・デップとレオナルド・ディカプリオの共演ってかなり豪華。

様々な人間関係の中に生まれるどうしようもない切なさと田舎の閉塞感、それでも揺るがぬ愛を丁寧に描いていて、折に触れ何度も観返したくなる。大事なのは何をするか。ねえ、あなたは何をしたいの?そう語りかけてくるような作品だ。

尖りに尖りまくった刃のような美しさ

壊れてしまった家族の絆を取り戻していく『マイ・ルーム』

もう少し成長したディカプリオを見たいなら、1996年の『マイ・ルーム』がおすすめ。反抗期の尖りに尖りまくったレオ様の刃のような美しさをご覧あれ。

シングルマザーのリー(メリル・ストリープ)は実家から遠く離れた土地で2人の息子を育てながら美容師を目指して学校に通っているが、長男のハンク(ディカプリオ)は反抗的で問題ばかり起こしている。ある日、実家に住み続け寝たきりの父と叔母の面倒を見ていた姉ベッシー(ダイアン・キートン)から連絡が来る。彼女は白血病に罹っていた。骨髄移植の検査を受けるため、リーは息子たちと共に、20年ぶりに実家へ戻ることになる。

ディカプリオが演じるのは、鬱屈した毎日を送る長男ハンク(『マイ・ルーム』)

ディカプリオの瑞々しいリアルな演技が光るこの作品。初めて会った叔母のベッシーに少しずつ心を開いていく様子や、海辺を車で爆走してキラキラと混じり気のない笑顔を見せるシーンなど、あまりに魅力的でずっと見ていたくなった。母親のリー役はメリル・ストリープ、ベッシーの主治医役はロバート・デ・ニーロと豪華共演陣も見どころの一つ。一見、自分の人生を犠牲にしてきたようなベッシーの「これほど深く愛せる人がいて、幸運だった」という台詞がずっと響いている。

白血病を患うベッシーのためハンクたちは骨髄移植の検査を受けることに(『マイ・ルーム』)

今の映画ほどの映像美やアクションシーンがあるわけでもなく、明確なハッピーエンドを見せてくるわけでもない。でもだからこそ、何度観ても味わい深く、毎度違うメッセージを受け取ることができる。レオナルド・ディカプリオはじめ、素晴らしい俳優陣の若かりし頃の演技力をぜひ味わってみては。

文=宇垣美里

宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

<放送情報>
マイ・ルーム
放送日時:2023年6月9日(金)10:30~、27日(火)23:15~

ギルバート・グレイプ
放送日時:2023年6月21日(水)23:00~、27日(火)21:00~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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