宇宙人の侵略や人類滅亡の危機、古代の世界も描いていたローランド・エメリッヒ(『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』)

地球規模の危機を描かせたらピカイチ!
壮大なスケールが魅力のローランド・エメリッヒの世界観に迫る

2023/11/27 公開

わたしが子どもだった頃、「地球の危機」「人類滅亡のピンチ」といえばローランド・エメリッヒ監督の映画が代表格だった。

宇宙人による侵略を地球全体と一市民、両方の視点から描いた『インデペンデンス・デイ』

最も有名なのが、『インデペンデンス・デイ』(1996年)。人類を滅ぼそうとする異星人との地球規模での戦いを描いた作品だ。ウィル・スミスやジェフ・ゴールドブラムが演じるはみ出し者たちが活躍し、科学力で劣る人類がかろうじて勝利を収める物語。ハリウッド映画でしか観ることができない壮大な規模にワクワクした。その20年後に作られたのが、続編『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』(2016年)。前作の出演者たちの多くが引き続き登場し、物語的にも連続性がある。

再び襲来した宇宙人を迎え撃つ若き戦闘機パイロットたち(『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』)

エメリッヒ監督は「とんでもない規模で起こる厄災」を描くのが、とても巧い。名もなき市民の視点で地球規模の異変を見つめたかと思うと、大陸を覆うほどの巨大な宇宙船のカットを挿入する。ミクロからマクロへ。人類が宇宙人に征服されていく過程を、これほどスピーディーかつダイナミックに描ける監督もなかなかいない。

ジェフ・ゴールドブラムにビル・プルマン!前作のキャストも活躍!(『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』)

『インデペンデンス・デイ』は絶望的なピンチに際して、社会からあぶれた者たちが楽観的に活躍するのが魅力的だった。『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』ではその明るさがやや抑えられ、今の国際社会に通じるような不穏なトーンがベースになっている。それでも、クライマックスにおけるゴールドブラムの活躍などは愉快で、映画だからこそ描ける物語的痛快さが健在だ。

氷河期に古代の世界、ゴジラも!エメリッヒが手掛けたハリウッド大作たち

『デイ・アフター・トゥモロー』は、地球温暖化により突如として訪れた氷河期を描いたパニック映画。2004年公開の映画だが、気温上昇の危機が毎年語られる現在では、より真実味がある設定かもしれない。

デニス・クエイド演じる気象学者が地球の異変に気づき警鐘を鳴らすものの、誰にも相手にされない。やがてその予言が真実になり、地上には巨大なひょうが降り注ぎ、竜巻や高潮が発生する。ロサンゼルスは壊滅し、主人公は息子を助けるためにニューヨークへ向かう。

地球温暖化によって引き起こされた地球規模の大災害を描く『デイ・アフター・トゥモロー』

この映画でも、地球という一つの惑星を見つめる科学的なマクロ視点と、家族や友人を助けたいという人間のミクロな視点が見事に融合し、クライマックスへ怒涛のように向かっていく。次々に都市が氷河で覆われていき、人類社会が機能停止していく過程も見応えがある。コロナ禍を経験したわたしたちにとっては、災禍があっという間に地球を覆うスピード感はもはや絵空事ではないだろう。パニック映画好きのわたしにとっても、本作はエメリッヒ映画で最も頻繁に観返している映画だ。

氷河期によって凍りついたニューヨークから息子を救おうとする気象学者の主人公をデニス・クエイドが演じる(『デイ・アフター・トゥモロー』)

地球規模という点では、『紀元前1万年』(2008年)もその分野に入る。描かれるのは紀元前1万年の地球。ヤガル族という平和な人々が住む集落に、「4本足の悪魔」と呼ばれる異民族が襲来し、村人を無理やり連れ去っていく。ヤガル族の若者たちは仲間を取り返すため、異民族を追う壮大な旅に出る。

紀元前1万年の世界を舞台に、異民族にさらわれた仲間を救おうとする青年の旅を描く『紀元前1万年』

1000年前の時代を描くだけでも大変なのに、エメリッヒ監督は紀元前1万年の世界を軽やかに描いてみせる。見たことのない巨大な植物、恐ろしい動物たち、どこまでも見晴らせる広大な山々。ハリウッド映画でしか描けないスケール感が素晴らしい。紀元前1万年ともなると、現代社会から遠く離れて、もはやSFに見えてくる。映画は主に人間や社会を描くのが得意なメディアだが、エメリッヒ監督は人と同時に地球という惑星も描き続けているのかもしれない。

マンモスやサーベルタイガーなど古代の生物たちが躍動する!(『紀元前1万年』)

最後に『GODZILLA』(1998年)。日本が誇るキャラクターであるゴジラをハリウッドが製作するということで公開当時、非常に注目された。ただ興行収入の大きさと比例して、賛否の数も多かった記憶がある。特によく見られた意見が、「これはゴジラじゃない」というもの。それまでの日本版ゴジラは着ぐるみや特撮ベースで作られていたが、ハリウッドは最新のVFXを駆使してゴジラを再現した。そのため動きが俊敏で、よりモンスター性が強調されている。

モンスター感が強調されたゴジラがニューヨークで大暴れする『GODZILLA』

現在、ハリウッドでは何本ものゴジラ映画が作られており、日本でも『シン・ゴジラ』(2001年)や『ゴジラ-1.0』(2023年)などのリブートが公開され話題になっている。世界へ羽ばたいたゴジラの一つの形として観てみるのも楽しいかもしれない。

文=入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)、『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』(2023年)など。

<放送情報>
デイ・アフター・トゥモロー
放送日時:2023年12月3日(日)9:15~、11日(月)21:00~

GODZILLA(1998年)
放送日時:2023年12月4日(月)23:15~

(吹)デイ・アフター・トゥモロー
放送日時:2023年12月20日(水)11:00~

(吹)GODZILLA(1998年)
放送日時:2023年12月23日(土)12:00~
チャンネル:ムービープラス

紀元前1万年
放送日時:2023年12月1日(金)21:00~、13日(水)15:15~

(吹)紀元前1万年
放送日時:2023年12月17日(日)1:25~
チャンネル:WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽

(吹)インデペンデンス・デイ:リサージェンス
放送日時:2023年12月12日(火)17:40~、18日(月)12:30~
チャンネル:スターチャンネル3

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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