ハリウッドも凌駕するスケール感！
『バーフバリ』＆『ＲＲＲ』で伝説を作ったS・S・ラージャマウリ監督

インド映画が熱い。

1990年代に大ヒットした『ムトゥ　踊るマハラジャ』(1995年)以来、再び注目を集めている。きっかけとなったのは、S・S・ラージャマウリ監督の『バーフバリ』シリーズ。2017年に日本で劇場公開されると口コミで広まり、多くの熱狂的ファンを集め、映画館にリピーターを続出させた。

特徴は豪華絢爛な衣装と美術、インド映画独特のユニークな音楽とダンス、そしてハリウッド映画を上回る壮大なスケール。一度観たら、その世界観に度肝を抜かれ、笑いが起こり、そしてもう一度観たくなる。日本各地の映画館では、一緒に観客が盛り上がる「マサラ上映」が開催され、さながらライブ会場のように花吹雪が舞った。

一人の青年が王となる様を豪華絢爛な映像と大迫力のアクションで描く『バーフバリ』2部作

先鞭をつけた1作目が『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)。古代インドのマヒシュマティ王国。一人の女性が赤ん坊を守るため兵士から逃げて、川で溺れる。赤ん坊だけは奇跡的に助かり、近くの村で育てられる。25年後、たくましい青年となった彼は旅に出る。その過程で自分の生誕の謎に触れ、やがて「バーフバリ」という王の名前を知ることになる。

『バーフバリ』は神話を基にした貴種流離譚で、主人公が冒険の末に王座に就くまでの物語だ。これまで小説やロールプレイングゲームなど様々な形で描かれてきた物語ではあるが、本作ほど豪華絢爛な世界観で観る者を圧倒する作品もない。群衆シーンではとにかく人の数が多く、アクションシーンでは今まで観たことのない無茶な演出が施されている。

続編にあたるのが、『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)。1作目以上にスケールが大きく、シーンの数々が想像の遥か上を行く。どうやったらこんなことを思いつき、実現できるのか。思わず笑ってしまうしかない。前作に続き、主人公やヒロインのダンス、そして歌がとても魅力的だ。インドのダンスは欧米とは異なる独自な進化を遂げていて、その身体表現を見ているだけでうっとりしてしまう。

物語は、前作で国王候補となった主人公がついに国王に就任するまでを描く。しかし一筋縄ではいかない。マヒシュマティ王国には王位継承を狙う者がいて、主人公は数々の困難を乗り越えなければならない。

とはいえ、前作を観ていなくても続編から楽しむことができる。冒険があり、恋があり、恩讐があり、戦いがあり、といった世界観はロールプレイングゲームに慣れ親しんだ世代はすぐなじめるだろう。映画を観終わった頃には、マヒシュマティの国民のように「バーフバリ！バーフバリ！」と大声で歓呼したくなること間違いなし。

イギリス植民地時代のインドを舞台にした2人の男の友情が熱い！『ＲＲＲ』

ラージャマウリ監督が、次に世界へ放ったのが『ＲＲＲ』(2022年)。この映画も世界的に大ヒットを記録し、日本でもまた多くのリピーターを生み出した。

舞台は1920年代のイギリス植民地時代のインド。2人の現代的な男が主人公だ。一人は、イギリス軍に連れ去られた少女を救い出すために立ち上がった田舎の青年ビーム(NTR Jr.)。もう一人はイギリス政府の警察官をしている男ラーマ(ラーム・チャラン)。2人はイギリス占領下のインドで立場が真っ向から対立し、敵対する関係性にある。この2人が立場の違いを乗り越え、親友となり、やがてイギリス帝国主義へと立ち向かうまでが描かれる。

『バーフバリ』では古代インドの圧倒的スケール感を見せてくれたラージャマウリ監督だったが、今回は現代と地続きの1920年代を題材にして大丈夫だろうか。そんな心配は一瞬で吹き飛ばされる。とてつもないアクションシーンは今回も健在で、物語のシャープさはより磨きがかかっている。

ビームとラーマの出会いのシーンは圧巻だ。橋の上と下の空間を駆使したアクションはこれまで観たどんなハリウッド映画をも凌駕し、全力で拍手喝采したくなる。イギリス軍へ立ち向かう主人公たちの戦いにも様々なアクション的伏線が張られていて、「ここで回収するのか！」と驚かされる。ただスケールが大きいだけでない、ラージャマウリ監督の繊細な演出に驚かされるばかりだ。

そしてなによりも記憶に残るのは、主人公の2人が一緒に踊る劇中の楽曲「ナートゥ・ナートゥ」。第95回米アカデミー賞でインド映画史上初となる歌曲賞を受賞したこのナンバーでは、インドの俳優たちが圧倒的な踊りを披露している。映画を観終わってすぐにまたあの踊りを観たくなるのは、絶対に私だけじゃないはずだ。

文＝入江悠

入江悠●1979年生まれ。映画監督。監督作に「SRサイタマノラッパー」シリーズ、『日々ロック』(2014年)、『ジョーカー・ゲーム』(2015年)、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』(2017年)、『AI崩壊』(2020年)、『聖地X』(2021年)、『映画ネメシス　黄金螺旋の謎』(2023年)など。

＜放送情報＞
マッキー
放送日時：2023年9月27日(水)23:00～

マガディーラ 勇者転生＜完全版＞
放送日時：2023年9月28日(木)22:45～

バーフバリ 伝説誕生＜完全版＞
放送日時：2023年9月29日(金)23:00～

ＲＲＲ
放送日時：2023年9月30日(土)20:00～

バーフバリ 王の凱旋＜完全版＞
放送日時：2023年9月30日(土)23:15～
チャンネル：WOWOWシネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります