クリストファー・リーヴが主演を務め、シリーズ化された『スーパーマン(1978年)』

ヒーロー映画の伝説はここから始まった!
元祖『スーパーマン』4部作の魅力を再確認

2023/03/27 公開

今やエンタメジャンルの中核として、次々にヒット作を生み出しているヒーロー映画。1978年に公開されたクリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』は、その原点というべき作品だ。『スター・ウォーズ』(1977年)、『未知との遭遇』(1977年)に続くSF大作として登場した『スーパーマン』は世界各地で大ヒットを記録。シリーズ化され、単体ヒーロー映画としては今なお最多タイとなる計4作品が製作された。多くのファンに愛され続けているリーヴ版「スーパーマン」の魅力を振り返ってみよう。

オスカー俳優や名監督も集めて、大人も楽しめるヒーロー映画として誕生した『スーパーマン(1978年)』

大人も楽しめる「ヒーロー映画」を目指して作られた『スーパーマン』

「スーパーマン」は「バットマン」と共にDCコミックスを代表するヒーローだ。初めてコミックに登場したのは1938年。その後新聞でも連載され、クリプトン星から来た超人パワーを持つ青年は全米の人気者になった。映像化の歴史も古く、1941年には劇場用短編アニメーションとしてシリーズ化。連続活劇や劇場用長編、TVドラマと実写化でも人気を集め、スーパーヒーローの代名詞として浸透した。ただし、これらの映像化作品はどれも子どもがターゲット。「スーパーマン」に限らず、コミック・ヒーローは大人もきちんと楽しめるエンターテインメントとしては認知されていなかった。

それを変えたのが、ヨーロッパの大物プロデューサー、アレクサンダーとイリヤのサルキンド父子である。アラン・ドロン主演の西洋チャンバラ『アラン・ドロンのゾロ』(1974年)の存在を知ったサルキンドは、「スーパーマン」も世代を超えて楽しめる題材になると確信。DCから権利を買うと『ゴッドファーザー』(1972年)の原作者で脚本も手掛けたマリオ・プーゾに原案・脚本を依頼し、マーロン・ブランドとジーン・ハックマンの2人のオスカー俳優の出演を取り付けた。監督にはオカルト映画の傑作『オーメン』(1976年)のリチャード・ドナーを起用し、超大作として映画化した。

マーロン・ブランドがスーパーマンの父親ジョー=エル役で登場(『スーパーマン(1978年)』)

こうして『スーパーマン』は、アクション&スペクタクルを満載した本格エンターテインメントとして完成。犯罪や事故から日常的なトラブルまで、平和のために活躍するヒーローを、多彩な視覚効果を駆使して描き上げた。特筆すべきは、時に軽やかに、時に超高速で飛ぶ姿。赤いケープをなびかせ大空を翔る説得力あるビジュアルが、観る者にスーパーマンの存在を実感させた。

赤いケープをなびかせ大空を翔るスーパーマン(『スーパーマン(1978年)』)

スーパーマンを演じたリーヴのコミックから抜け出たようなハマりぶりや、時代を反映したロイス・レイン(マーゴット・キダー)の女性観、ハックマンが演じたレックス・ルーサーの愉快な悪党ぶりなどキャラクターも魅力的。幻想的なクリプトン星、スーパーマンことクラーク・ケントが豊かな心を育んだ中西部、カオスのような大都市メトロポリスと物語の舞台も文句なし。

スーパーマンの宿敵である天才科学者レックス・ルーサーをジーン・ハックマンが演じた(『スーパーマン(1978年)』)

ヒーロー活動だけでなく、スーパーマンとロイスのロマンスも見応えがあり、世代を超えて愛される作品に仕上がった。この一本でコミック・ヒーロー=子ども向けという図式を覆し、後のティム・バートン監督作『バットマン』(1989年)やサム・ライミ監督作『スパイダーマン』(2002年)へと続く道筋を作った功績は計り知れない。

デイリー・プラネットの同僚、ロイス・レインとのロマンスも(『スーパーマン』)

シリーズを重ねるごとに作品のテイストが多様に変化

ヒーロー映画のスタイルを確立させた『スーパーマン』の3年後、『スーパーマンII 冒険編』(1980年)が公開された。前作でファントム・ゾーンに幽閉されたクリプトンの犯罪者ゾッド将軍(テレンス・スタンプ)、ノン(ジャック・オハローラン)、アーサ(サラ・ダグラス)が地球に飛来。自分たちに判決を下したジョー=エル(ブランド)の息子、カル=エルことスーパーマンに戦いを挑む話だ。

ケレン味を効かせた、痛快アクション作として楽しめる第2作『スーパーマンII 冒険編』

本作は2部作の後編という位置の作品だが、監督はドナーからリチャード・レスターにバトンタッチ。サスペンスからアクション、コメディまでひねりを効かせた作風で知られる奇才レスターらしく、前作以上にケレン味のある痛快アクション作に仕上げている。スーパーマンとゾッド軍団が激突する超人バトルはもちろん、ルーサーが再登場しスーパーマンを倒すためゾッドたちに取り入る展開も面白い。ロイスに正体を明かしたのを機に超人パワーを失い、クラークが荒くれ野郎にボコボコにされてしまうなど、レスターらしい変化球が冴えた一本だ。

ゾッド将軍との超人バトルも見どころ(『スーパーマンII 冒険編』)

『スーパーマンII 冒険編』に続いてレスターが監督を務めたのが『スーパーマンIII 電子の要塞』(1983年)である。シリーズ4本の中でも特に異色の本作は、街角のドタバタ劇で幕を開けるコメディタッチの作品だ。

どんな仕事も長続きしないガス(リチャード・プライアー)は、たまたま勤めた会社でプログラミングの能力を発揮。その手腕を社長のウェブスター(ロバート・ヴォーン)に見込まれ、悪事に加担することに。会社のライバルに打撃を与えたガスは、続いてクリプトナイトを解析して作った化合物で、スーパーマンの暗黒面を覚醒させる。悪いスーパーマンと化したカル=エルは破壊活動を行ったり、昼間からバーで泥酔したりでヒーローとしての威厳を失っていく。

天才的なプログラマーであるガスにスーパーマンが翻弄される第3作『スーパーマンIII 電子の要塞』

本作でスーパーマンは受け身に回るシーンも多く、その分ガスが存在感を発揮した。ちなみに、ガス役のリチャード・プライアーは当時人気の高かったコメディアン出身の俳優だ。ハッキングで私腹を肥やしたり、経済活動を危機に陥れたりするなど、時代を先取りした展開も興味深い。ロイスも登場しているが、ロマンスはクラークと幼なじみのラナ・ラング(アネット・オトゥール)を中心に展開。スーパーマンの善と悪の心が具象化して戦う、ユニークなバトルも迫力があった。

新たなヒロインとして幼なじみのラナ・ラングが登場(『スーパーマンIII 電子の要塞』)

第3作から4年の空白を経て登場したのが、『スーパーマンIV 最強の敵』(1987年)だ。ソ連の体制が揺らぎ東西冷戦の終わりが見え始めた時期に製作された作品で、スーパーマンは国連総会の場で核兵器の根絶を訴える。ストレートにテーマを打ち出す一方で、スーパーマンの遺伝子を持つニュークリアマン(マーク・ピロー)というB級テイスト漂うヴィランが登場。地球を飛び出しスーパーマンとバトルを繰り広げる。

スーパーマンが核兵器の根絶を訴えるなど平和へのメッセージを投げかける『スーパーマンIV 最強の敵』

このあたりの味わいは、プロデューサーが大物サルキンドから、低予算アクションの雄メナヘム・ゴーラン、ヨーラン・グローバスのコンビに代わった影響もあるのだろう。ただし、ハックマンのルーサーは健在で、キダーのロイスらレギュラーメンバーもしっかり続投。デイリー・プラネットの新オーナーの娘レイシー(マリエル・ヘミングウェイ)がクラークに恋をして、ロイスと繰り広げるゆるい三角関係も楽しめた。

スーパーマンの遺伝子から作られたB級テイスト漂うヴィラン、ニュークリアマンが登場(『スーパーマンIV 最強の敵』)

正統派ヒーロー映画として誕生した第1作、超人バトルを中心にした第2作、コメディを前面に出した第3作、そして平和へのメッセージを込めた第4作。同じヒーロー映画でも作品ごとにテイストが違っているのがリーヴ版「スーパーマン」の魅力である。4部作をまとめて観ると、改めて本シリーズの多様性や、ヒーロー映画というジャンルの懐の広さを実感できるだろう。

文=神武団四郎

神武団四郎●映画ライター。「映画秘宝」「MOVIE WALKER PRESS」「シネマトゥデイ」などへの寄稿、パンフレットの執筆、編集など。編書に「別冊映画秘宝 絶対必見!SF映画200」(洋泉社)など。監修書に「テック・ノワール ジェームズ・キャメロン コンセプトデザイン画集」(玄光社)、「メイキング・オブ・007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(玄光社)など。ゴジラよりコング派。

<放送情報>
スーパーマン(1978年)
放送日時:2023年4月7日(金)13:30~、17日(月)21:00~

スーパーマンII 冒険編
放送日時:2023年4月14日(金)13:30~、19日(水)7:15~

スーパーマンIII 電子の要塞
放送日時:2023年4月21日(金)13:30~、26日(水)6:00~

スーパーマンIV 最強の敵
放送日時:2023年4月28日(金)13:30~
チャンネル:ムービープラス

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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