HIV感染者の少年とその友達が、治療法を探し求めて旅に出る『マイ・フレンド・フォーエバー』

ああ、友達に会いたい!
最高の友情を見せてくれる旅立ちムービー

2023/02/27 公開

あの旅の記憶はきっと永遠に心の支えになるのだろう

3月は別れと旅立ちの季節。進学や就職でそれまでの世界を離れ、新しい場所へと向かう中で疎遠になる友もいるだろう。クラスで会わない人や違う地域で暮らす人と関係を続けるには、それなりのパワーが必要だ。半身のように思っていた相手でさえ、人生のタイミングによっては遠い存在になってしまうことがある。でも毎日一緒にいる人が友達になるわけじゃない。その日の出来事すべてを共有することばかりが、友情の形じゃない。たとえ遠く離れていても、どうか幸せでいてくれますようにと祈る存在が、ずっと味方だと信じられる存在こそが、友。距離なんて、何でもない。そう、たとえ二度と会うことがなくたって。

『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995年)は邦題の通り、そんな永遠に続くであろう友情を描いている。孤独な少年エリック(ブラッド・レンフロ)の隣家に、幼い頃の輸血が原因でHIVに感染した少年デクスター(ジョセフ・マッゼロ)が引っ越してきた。当初は彼を警戒していたエリックだったが、次第に打ち解け、まるで兄弟のように毎日一緒に遊ぶようになる。

デクスターの病気を治そうとお菓子を大量に食べたり、野草を煎じて飲んでみたりと、2人の少年の暴力的なまでの無邪気さにハラハラしっぱなし。けれどその日々のなんと楽しそうなことか。愚かしい社会の偏見の中で、互いを信じ支え合う2人の友情だけが美しく輝いている。ずっと友達のいなかったデクスターはエリックに出会って、不憫な病気の少年ではなく、ただのいたずらばかりする悪ガキになることができた。

やがてニューオリンズでHIVの特効薬が発見されたとの新聞記事を目にした2人は、手作りのボートに乗って川を下り、治療法を探す旅に出る。無謀なほどの行動力は子どもならでは。少年たちのひと夏の冒険・青春映画の金字塔である『スタンド・バイ・ミー』(1986年)が好きな人なら、きっと刺さるはず。

複雑な家庭環境の中で暮らす少年たちが、ある噂を聞き冒険へと繰り出す『スタンド・バイ・ミー』

旅の途中、死の恐怖に怯えるデクスターにエリックのかけたセリフが温かくて、優しくて。彼もまたエリックとの出会いの中で成長したことがわかる。2人はきっとこれからどこへ行く時もそばにいる。どこにだって、エリックが連れて行ってくれる。エリックの心の支えはきっと、デクスターとのあの旅の記憶。だから彼らの友情は、永遠。大人になって観ると、対照的な2人の母親の様子にも胸打たれた。鑑賞後、コンバースのスニーカーを目にするたびに涙腺がゆるむ呪いにかかってしまうので要注意。

新しい一歩の背中を押してくれる友達という存在

相手を大切に思うからこそ、新しい道へ踏み出す勇気を促すのもまた、友達の役目。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)を観る度に、私は大切な人たちにとってこんな友達でありたいな、と背筋が伸びる。

天才的な頭脳を持ちながらも心を閉ざし続ける青年と、ある精神科医が出会う『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』

数学教授のランボー(ステラン・スカルスガルド)が出した難問に答えたのは、大学で清掃員として働く孤児の青年ウィル(マット・デイモン)。しかし彼は過去のトラウマから心を閉ざしており、非行を繰り返していた。ランボーは彼を更生させ、その才能を発揮させるべく、心理学者のショーン(ロビン・ウィリアムス)にウィルのカウンセリングを依頼する。周囲からの想いが徐々にウィルの心を解きほぐしていく様子に胸打たれ、人との出会いが人生をがらりと変えることがあるように、人を救うのは結局人でしかないのだなとしみじみ染みた。

特に心に残ったのがウィルの親友であるチャッキー(ベン・アフレック)だ。ウィル役のマット・デイモンと共に脚本も担当したベン・アフレック演じるチャッキーは、ウィルと同じくケンカに明け暮れるスラム出身者。でも自分と彼の能力の違いをちゃんと理解している。彼のことをとても大切に思っているからこそ、「20年後もお前がこの職場にいたら殺す」ときっぱりと伝える。同じ地獄にとどまれと恵まれた人間の足を引っ張るのではなく、ここではないどこかに行けるのだから才能から逃げるな、と背中を押す姿勢は親友の鑑そのものだ。なんて優しくて強いんだろう。

ラストの彼の表情は必見。全部持っていかれた。家族や環境には恵まれなかったかもしれないけれど、ウィル、あなたはこんなにも友達に恵まれていた。数年後、パブかなんかでウィルの活躍を耳にしたチャッキーが我がことのように喜ぶところまで想像して、なんだかとても幸せな気持ちになった。

卒業を明日に控えた2人の女子高生が騒動を繰り広げる青春コメディ『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

そして新時代のハイスクールコメディにして、最高の友情を見せつけてくれるのが『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019年)だ。親友と呼べる相手がいたのなら、それだけでもう学生生活はパーフェクト。

親友同士のエイミー(ケイトリン・デヴァー)とモリー(ビーニー・フェルドスタイン)はいわゆるガリ勉。高校生活を勉学に費やし、輝かしい進路を勝ち取った。ところが、遊んでばかりいるように見えた同級生たちの進路もまたハイレベルであると知り驚愕。2人は高校生活を取り戻すべく卒業パーティーではじけることを決意する。

とにかくこの2人の関係が最高すぎる。しょーもない下ネタばかりの会話に、出会い頭に炸裂する下手くそなロボットダンス、ドレスアップした互いの姿をハイテンションに褒め合うノリがあまりにかわいくピースフルでもう……たまらん。特に好きなのは、エイミーがモリーを「私の親友をそんな風に言うなんて許さない!」とビンタするシーンだ。理由は彼女が己を卑下したから。彼女たちの友情の形に強く影響を受けた私はこの映画後、友達が自虐するたびに「私の友達にそんなこと言わないで!」とキレることにしているし、会う度にアメリカンな感じで褒める。みんな自虐を口にしなくなったし、今日の推しポイントをわざわざ教えてくれるようになった。いい傾向だ。

ふくよかなモリーの見た目やレズビアンであるエイミーの性的志向が揶揄されることなどなく、2人以外のキャラクターもちゃんとした人間として描かれている。モテ男はいいやつだし、金持ちも不思議ちゃんも目立ちたがりだけど決して傲慢ではなく、もっと前に話せたら友達になれていたかもしれないと感じさせる。それぞれの卒業式の笑顔に、どうかみんな幸せになってほしいと心から願った。ここから続く道は分かれていても、しばらく会うことがなくったって、何者でもない、青いばかりのあの時代を共にした友達は唯一無二だから。

拭えぬ血のつながりがあるわけでもなく、三大欲求の一つに支配されているわけでもなく、ただ互いの意思によって向き合い続けることでしか成立し得ない「友達」という存在を、私は何よりも尊く感じている。人生の拠り所だ。わかり合えるはずもない他者なのに、それでも一緒にいたいのだ。ああ、友達に会いたくなってきた。

文=宇垣美里

宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサーとして、テレビ、ラジオ、雑誌、CM出演のほか、女優業や執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

<放送情報>
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
放送日時:2023年3月4日(土)16:30~、8日(水)18:30~

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー [PG12]
放送日時:2023年3月14日(火)16:45~

マイ・フレンド・フォーエバー [PG12相当]
放送日時:2023年3月15日(水)17:00~、27日(月)8:00~

スタンド・バイ・ミー [PG12]
放送日時:2023年3月17日(金)19:15~

(吹)スタンド・バイ・ミー [PG12]
放送日時:2023年3月10日(金)12:30~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります

▼同じカテゴリのコラムをもっと読む

ああ、友達に会いたい!最高の友情を見せてくれる旅立ちムービー

ああ、友達に会いたい!最高の友情を見せてくれる旅立ちムービー

##ERROR_MSG##

##ERROR_MSG##

##ERROR_MSG##

マイリストから削除してもよいですか?

ログインをしてお気に入り番組を登録しよう!
Myスカパー!にログインをすると、マイリストにお気に入り番組リストを作成することができます!
新規会員登録
マイリストに番組を登録できません
##ERROR_MSG##

現在マイリストに登録中です。

現在マイリストから削除中です。