高校生のマーティが過去にタイムスリップしてしまう『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

SF映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に
「白紙の未来」は自分次第なのだと力強く背中を押される

2024/04/01 公開

80年代の人が郷愁と愛着をもって振り返る50年代カルチャーが味わい深い

あのSF映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が、2025年に劇団四季のミュージカルになって帰ってくる!「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ミュージカル」は2020年にイギリスで初演を迎え、アメリカ・ブロードウェイでも上演され、いくつもの賞を受賞している。脚本は映画版にも携わったボブ・ゲイルが担当し、音楽もシリーズを通じて映画音楽を担当したアラン・シルヴェストリが担当しているとのこと。あの「The Power of Love」や「Johnny B. Goode」といった楽曲も劇中で使用されるらしく、いちミュージカルファンとして公演が待ちきれない。幼い頃にテレビで放送していたのを何度となく観てきたこの作品。そのため映画館で観たことはない。(USJにあった「バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド」はそういった意味で唯一、知らない人と共にあの世界を満喫できる最高のアトラクションだったのに……2016年に惜しまれつつも運営が終了してしまった。大学生の頃はUSJに行く度に複数回乗ったものだ。あの音楽の中、デロリアンに乗れるだけで大満足だった)

大勢の人と共に観る機会がなかったからこそ、劇場で同じように期待に心を躍らせている同志たちと観るのは初めてのことで、今からもうワクワクしている。1年なんてきっとあっという間に過ぎてしまうに違いないのだからこの機会にぜひ、予習がてら映画を観直してみよう。

自分の両親を結びつけるため過去の世界でマーティは大奮闘(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』1作目の舞台は、1985年のカルフォルニア州ヒルバレー。高校生のマーティ(マイケル・J・フォックス)は親友の科学者ドク(クリストファー・ロイド)がスポーツカーのデロリアンを改造して作ったタイムマシンの実験に立ち会うが、トラブルに巻き込まれ、デロリアンに乗って1955年にタイムトラベルしてしまう。30年前の世界のドクに協力を仰ぎ、なんとか元の時代に戻ろうとするものの、ひょんなことから若き日の母親と出会い、自分自身が生まれてくる未来が危うくなってしまう。どうにかして母親と父親を結びつけようと、マーティは奮闘する。

40年近く前の作品だというのに、今観ても変わらず面白い。特撮を使っているシーンはどうしたって古さを感じてしまうけれど、コメディタッチな演技や話のテンポのよさ、なにより学園を舞台にした青春ものとしての魅力もこの作品の持ち味だ。もはや裏の主人公とも言えるマーティの父ジョージ(クリスピン・グローヴァー)が、ヘタレから少しずつ成長していく様子をやきもきしながら見守った。数えきれないほどの小ネタや小ボケに加え、ありとあらゆる伏線がどんどん回収されていく構成は何度観ても鳥肌もの。1980年代のレトロポップな服装や音楽の魅力はもちろん、80年代の人が郷愁と愛着をもって振り返る50年代カルチャーもまた味わい深い。

未来の息子がトラブルを起こすことを知ったマーティが、デロリアンで未来へ向かう『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』

続く2作目では、マーティはドクと共に未来の世界を目撃する。未来の息子の窮地を助けるべく、2015年の未来へとタイムトラベルしたマーティとドク、そしてマーティの恋人であるジェニファー(クローディア・ウェルズ)。そこで両親の同級生であり、因縁の相手ビフ(トーマス・F・ウィルソン)にタイムトラベルの秘密がばれてしまい、1985年の世界が大きく改変されてしまう。元の世界に戻すべく、再びマーティとドクは1955年の過去へと舞い戻る。

過去の人が想像した未来からしか得られない栄養が確実にあるなあと、こういったSF作品を観るたびにホクホクしてしまう。空を行き交う車に、地面の少し上を浮遊するスケボーならぬホバーボード、勝手に調節される靴に、伸び縮みするジャケット!残念ながら私たちの生きた2015年には実現していなかったものばかりだけれど、だからこそこの時代のまっすぐな未来への希望が眩しい。一方で、改変された未来でビフの経営するカジノホテルは、実際にトランプが経営していたホテルのパロディ。よくよく見ていくとあの印象的な髪型や服装も似通っていて、あの荒廃した世界はトランプが大統領となったアメリカと重なる部分がある。ううん、こんな予言は当たってほしくなかったものだけれど……。

130年の時を旅したドクが若者たちにかける言葉に何度だって胸打たれる

『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』では、ドクが西部開拓時代に飛ばされてしまう

そして2作目の半年後に公開された『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』は、ほとんどそのまま物語が直結し、実質前後編となっている。1985年に戻ろうとしていたドクとマーティだったが、雷の直撃を受け、デロリアンと共にドクが消えてしまう。ドクから届いた手紙によりその居場所を突き止めたマーティは、1955年のドクの協力を経て、1885年の西部開拓時代にいるドクを救うために再びデロリアンに乗り込むのだった。

ネイティブアメリカンと騎兵隊に追いかけられるシーンや、ウエスタンな恰好、決闘シーンやいかにもな悪役、なにより名を問われたマーティが「クリント・イーストウッド」と答えるなど、西部劇の要素がてんこ盛りな3作目。

「西部劇あるある」がてんこ盛りで楽しい『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』

ここまで観続けてくると、気絶するたびに夢かと思い母親に起こされて目を丸くするマーティの姿や、どの世界でもびっくりするぐらい嫌な奴で、そして毎回堆肥や馬糞といったくさ~い何かに突っ込む羽目になるビフといった繰り返される描写がクセになってくる。そして、腰抜けと言われるたびに過剰に反応し、危ない橋を渡ってきたマーティがこの旅を通じてどのように成長したかが見え、なぜだか一緒に育ったような感慨深さを覚えた。ここまで科学的な姿勢を貫いてきたドクが最後に選んだものは何だったのか、ぜひ目撃してほしい。そして1885年から2015年まで130年の時を旅した彼が、最後に若者たちにかける言葉に、私は何度だって胸打たれる。

「It means your future hasn’t been written yet. No one’s has. So make it a good one, both of you」つまり未来は白紙ってこと。誰にとっても。だから、2人とも未来をいいものにするのだよ。

私の未来も、あなたの未来も何一つ決まってやしない。すべては自分次第なのだと力強く背中を押されたようだ。まだデロリアンは開発されてないけれど(危険だから壊されちゃったのかも!)、せっかくならば彼らの夢見た未来のような世界を生きていきたい。それはもちろん、私たちの手にかかっている。

文=宇垣美里

宇垣美里●1991年生まれ 兵庫県出身。2019年3月にTBSを退社、4月よりオスカープロモーションに所属。現在はフリーアナウンサー・俳優として、ドラマ、ラジオ、雑誌、CMのほか、執筆活動も行うなど幅広く活躍中。

<放送情報>
バック・トゥ・ザ・フューチャー [PG12]
放送日時:2024年4月7日(日)16:45~、28日(日)10:30~

バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 [PG12]
放送日時:2024年4月7日(日)19:00~、28日(日)12:45~

バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 [PG-12]
放送日時:2024年4月7日(日)21:00~、28日(日)14:45~
チャンネル:ザ・シネマ

※放送スケジュールは変更になる場合があります

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